命の大切さを教える障害犬「太郎」

命の大切さを教える障害犬「太郎」

日本は殺処分される犬達がまだまだたくさんいます。家庭犬でも散歩もいけない、つなぎっぱなし状態の犬達がたくさんいます。
原因不明の病気で4肢を切断され、身体は不自由でも健気に元気に生きている犬がいました。命の大切さを伝える為にも、太郎の存在は嬉しいですね。(2007/5/2)(LIVING WITH DOGS)


障害犬「太郎」命の奇跡 

福岡県宗像市のK動物病院 四肢失う難病 尊厳伝え続け

原因不明の病気で4本の脚を失った雑種犬が、福岡県宗像市田久4丁目のK動物病院で飼われている。名前は「太郎」。耳たぶと尾も失い、わずかに残った前脚で上半身を起こし体を引きずって進む姿は、アザラシのよう。だが、日々を元気に生き抜く姿が命の尊さを教えてくれると、太郎を描いた本も出版された。病院スタッフの愛情にはぐくまれ、来院者に愛嬌(あいきょう)を振りまいている。 

●延命か安楽死か
子犬だった太郎は11年前、病院の近くに捨てられていたのを近くの男性が飼い始めた。1歳の時にまず両耳が、次いで脚と尾も壊死(えし)した。ミイラのように干からびていく4本の脚。血行障害の一種とみられたが、原因は分からなかった。
主治医を引き受けたのが、K院長(57)だった。放置すれば感染症で死ぬのは明らか。「延命措置か安楽死か。難しい選択だった」という。飼い主も延命を望み、2度の手術で4本の脚と尾の4分の3を切断。その後、飼い主が年老いて世話が難しくなったため、K院長が引き取った。

●人間なら600歳に
いま、太郎は体長約60センチ、体重約10キロ。人間なら60歳くらい。手術から10年。出血と回復を繰り返すうちに前脚の切断面の肉が盛り上がり、直径5センチほどの球状になった。だが、根元だけ残った後ろ脚で首をかこうとして、空振りを繰り返す姿が痛々しい。
おしっこをするときだけは、体に付かないよう10センチほど残った4本の脚で立ち上がるきれい好き。戸外に放すと喜々としてにおいをかぎ回る。女性スタッフ(32)は「脚がないのに悲愴(ひそう)感が全くない。かえってこっちが元気づけられる」と語る。

自分から擦り寄ることができないため、黒い大きな瞳でじっと見詰めてスキンシップを訴える。K院長は「太郎の瞳に吸い込まれそうになり、こちらが『えっ、何かしてほしいの』ってなるのです」と笑う。

●小学校で講演も
来院者の中には、太郎を見て「かわいそうに」と涙ぐむ人もいる。そんなときK院長は「脚が短いからちょっと不便なだけですよ」と応じる。

太郎はこれまでに8回、K院長と小学校へ命の講演に出向いた。教室に太郎が入った瞬間、毎回、児童の目が輝くのが印象的という。「子どもたちが太郎の姿を見て、生きることの意味を考えてくれれば」と語る。

東京都在住のノンフィクション作家Sさんは、「障害犬タローの毎日」(アスペクト、1500円)を出版した。たまたま脚がない犬の話を聞き「どうやって暮らしているのか」という疑問から取材を始めた。

「太郎は周囲の愛情にはぐくまれて明るく元気に生きていた。理屈じゃなくて、生きているってすごいことだと思った」とSさん。「太郎の姿は、命の奇跡です」

太郎は今日もスタッフや他のペットに囲まれ、病院の裏庭で無邪気に遊ぶ。「太郎は、病院のみんなの大切な家族」と語る小森院長。これからも太郎に寄り添い、ゆっくりと歩んでいく。(2007/05/02)(西日本新聞夕刊記事より

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