1万回のごはんと3千マイルの散歩

1万回のごはんと3千マイルの散歩

Max、あなたがいなくなってもうすぐ2週間が過ぎようとしています。
15年以上も一緒に暮らしたあなたとの思い出があまりにも多すぎて、何を見てもあなたを思い出してしまう毎日です。あなたは今頃虹の橋の向こうの国で、大の仲良しだったRoxyやLilyと再び出会い、元気に走り回っていることでしょう。だけどママはまだこの寂しさに馴染めません。だから今日は少しだけあなたの思い出話をさせてください。

あなたがうちの仔になったのは本当に何百万分の一かの偶然でした。

15年前のあの春の日、新聞の広告を頼って訪ねたForest Groveの家で、あなたは他の11匹の兄弟達と新聞紙を敷き詰めたおしっこくさい床の上で戯れていました。丸々と太ったパピーたち、その中からビリーがあなたを選んだのです。そう、あなたはビリーの8歳の誕生プレゼントだったのね。

白と焦げ茶の小さな脇腹に丸いぶちがあるからって、あなたは最初Spotという名前になりそうだったのよ。でも後でビリーがやっぱりMaxにするよって。よかったね。Max – あなたに一番似合った名前ね。

帰りの車の中でお母さんや兄弟たちと離れ離れになったあなたは不安そうに私の腕に抱かれていたっけ。赤ちゃん用のプレイペンを用意して、それがあなたの寝床でした。あの頃あなたはガレージで寝ていましたね。トイレトレーニングもどうしたのかさえ覚えていないの。でもガレージの床に敷いた新聞紙を毎朝片付けていたような記憶があります。

最初の数ヶ月はあなたは一人っ子だったね。でも昼間ビリーたちが学校に行っている間一人ぼっちじゃ寂しいだろうと、また新聞広告で見つけたRoxyを家族に迎えました。あれは9月の晴れた日でした。あなた達が仲良くなれるか心配だったので、Roxyを少しの間預からせてもらったら、Max、あなたったら夢中でRoxyにじゃれついていたっけ。それからというもの、あなたとRoxyは大の仲良し。時には骨の取り合いで取っ組み合いのけんかもしたけど、いつも二人でちゃんと決着をつけてくれたので、Daddyと“子供達より手間がかからないね”と笑ってましたっけ。

あなたは若い頃はとにかく運動神経が発達していて敏捷でした。長い四肢とバランスの取れた身体つきは、とってもカッコよかったよ。もちろん歳を取ってからのあなただって、皆がびっくりするほどスマートだったけどね。リスを追いかけて木に登りそうになったり、ビーチでは3メートルもある水溜りをスローモーションのように一飛びしたり、グランマのうちの4フィートのフェンスだってピョンと簡単に飛び越えていました。夏には裏庭のデッキの上からボールを投げると草むらを嗅ぎまわって、暗闇の中でもちゃんと探して来たね。

でもあなたは時にはママやDaddyが理解に苦しむようなこともいろいろやってくれたのよ。ある時期デッキの下に潜り込むのが習慣になってしまって、夜になって呼んでも全然出てきてくれない。おやつを見せてみたり、ご飯のボウルを持ってきたり、散歩用のチェーンを鳴らしてみたりと毎晩のようにいろいろ試してみたけれど、だめだった。終いには、“それなら勝手に明日までそこで寝てなさい!”と捨て台詞で家の中に入ってはみたけれど心配で寝つかれず、起きて見に行くといつの間にかあなたはデッキの上に出てきて家の中を覗いてた。

歳を取って耳が聞こえなくなってからは大丈夫になったけれど、若い頃は雷や花火の音が大嫌いだったね。いつも寝床にしていたユティリティールームの乾燥機の廻る音も嫌いで、止まってからもしばらく微かな音がしているだけでも、あなたはそわそわして眠ってくれなかった。そういう時はドアを齧ってしまうので、ママはあなたを落ち着かせて眠らせるために、何度あなたの隣で落ち着くまで撫でていてあげたことか。こっちが眠くてうとうとしてしまったりして、子供達の小さかったことを思い出していました。もう寝たと思って立ち上がるとあなたもまたすっと立ち上がってしまって。本当に世話の焼ける仔でした。今、あなたの寝場所だった乾燥機の隣のテーブルの下は、がらんどうのままです。

あなたがいなくなって、一番寂しかったのは、朝起きたときと会社からの帰り道。毎朝、今日は元気で起きてくるかな?おねしょはしなかったかな?って、起きてあなたに会いにいくのが楽しみでした。あなたは朝の苦手な私に毎朝元気な姿を見せてくれて、それが励みになっていました。亡くなった日の朝も自分の足でちゃんと立ち上がっておしっこにもいけました。偉かったね。そして、毎朝、毎晩、あなたとHollyとNoahの3人分のご飯を用意するのが日課でした。3つのボウルを両手で持って運ぶのはちょっと特別な技が必要だったのよ。今は2つだけ、なんだか寂しいよ、簡単すぎて。

そうそう、昨日あなたとの最後の散歩にいったあのFir Grove ParkにHollyとNoahと一緒に行ってきましたよ。2匹と歩きながらいろんなこと思い出したの。あなたが若い頃は森の中でリードを放してあげていたでしょう。あなたは端から端まで知り尽くした森の中をリスを追いかけて走り去ってしまったので、私は少し意地悪して大きな木の後に隠れて見ていると、あなたは小径を行ったり来たりキョロキョロと私の姿を探し回っていましたね。不安そうな顔をして、まるで迷子になった子供みたいに。そして私を見つけたときのあの喜びよう。全速力で走ってくる姿が目に浮かびます。

Max、あなたはあの風の日のことを覚えてるかしら。公園の森の中をあなたとRoxyを連れて歩いていると風が急に強くなって大きな木の枝がミシミシと鳴り出したの。そこらじゅうの枝がゆらゆらとざわめいて今にも折れてきそうだった。空が真っ暗になって、ママは慌ててあなた達を呼び戻し、3人で大急ぎで森を駆け抜けたのね。あれ以来風の強い日にはFir Grove Parkにはいかないことに決めました。

ところで今日は日帰りでOlympiaのグランマのうちに行ってきたの。庭で遊ぶShellyとHollyとNoahを見て、ママはこう思ったの。“全員が世代交代したんだね”って。Lilyの代わりにShellyがいる。Roxyの代わりにHolly。そしてあなたの代わりに今Noahがいる。あなたとLilyとRoxyが仲良しだったように、今はShellyとHollyとNoahが仲良しでいてくれてる。あなたたち3人はきっと虹の橋のたもとからそれを嬉しそうに見守ってくれているのでしょう。

Max、ママもだんだんあなたを失くした寂しさと悲しみから立ち直れそうな気がしてきたの。この間こんなことを考えました。ママはこの15年間にあなたの食事の用意を10,000回以上してきたんだって。そしてDaddyにそのことを伝えたらね、Daddyもちょうど同じようなことを考えていたんですって。Maxとはニューヨークまで歩いたんだよって。15年間の間に3,000マイル以上の距離を散歩したってこと。それってすごいことだよね。10,000回のご飯の支度も3,000マイルの散歩もね。15年も元気で長生きしてくれたあなただからできたこと。だから、あなたの死を悲しむよりも、褒めてあげなきゃいけないんだってことに気付いたの。

寂しいけど、今は心からありがとう。(2007/12/1)(MaxHollyNoahのママ)

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