小林信美の英国情報 (11)愛犬と行くヨークシャーの旅(1)

愛犬と行くヨークシャーの旅(1)

ここ数日のうちにすっかり秋の気配の濃くなった英国であるが、 遅ればせながら今回から全4回に渡って筆者の夏休み休暇を利用した英国北部ヨークシャーへの旅について報告してみたい。ここロンドンでは地方自治体等により犬の散歩禁止令などがしかれる公園が出現し始め,愛犬家がペットと行動できる範囲が徐々に狭くなっているように思われる。以前まで気軽に愛犬と出入りできた郵便局にも犬禁止の標識が掲げられ、愛犬家にとって住みにくい環境になりつつあることは確かなようだ。この原因のひとつとしてロンドンの人口が過去10年ほどの間に爆発的に増加し,人口密度が極端に高くなったことがあげられると個人的にみているが、それ意外の要因は何なのだろう?この素朴な疑問が筆者と愛犬マチルダを一路、静かなヨークシャーへと駆り立てることになったのだ。そういうわけで、この旅では実験的に自家用車ではなく汽車とレンタカーを利用し、ペット歓迎といわれる施設を訪れ、動物愛護で知られる英国がどれだけ愛犬に優しい環境を提供しているのかを取材してみることにした。

さて、愛犬との旅となるとまず、宿泊施設の確保が非常に難しくなることを念頭において行動しなければならない。前回この欄で報告した通りこの国にはペット可のアパートが少ないという事からも想像がつくと思うが、ペット可の宿泊施設は非常に限られている。そういうわけで、行きたいエリアはある程度限定できるものの、旅の計画は愛犬同伴で宿泊できるB&Bの予約がどこで確保できるかによって決まってくるといってもうそではない。
そこで筆者はインターネットで「dog/pet friendly」または「dogs/ pets welcome」であるという英国版民宿ともいえるB&B(ベッドアンドブレックファスト)をさがすことにした。ここでひとこと忠告しておきたいのだが「フレンドリー」や「ウェルカム」などというと愛犬を「熱烈歓迎」してくれる施設だと勘違いしてしまいがちだが、これは単純に「犬可」または「ペット可」と理解した方が無難であるということだ。これまでの経験からいうと犬をほんとうに歓迎してくれる喫茶店,パブ、ホテル等はあることはあるのだが、宣伝広告等を見ただけでは容易に識別できない場合が多い。時折「犬とお行儀のよい飼い主は歓迎」などというさらにご丁寧な解説をつけているところもあり、ペット歓迎でないところと区別できることもあるが、実はこれもそれほどあてにならないというのは今回の旅で身にしみて感じたことである。

こちら英国でもペット可の宿探しはそれほど簡単なことではない。今回、筆者はインターネット上のサイトを利用したが、情報が一カ所に統一されていないので複数のサイトに必要事項を何度も繰り返し入力しなければならず、非常に不便だという印象を受けた。さらにサイトのデザインも不親切きわまりなく、特にそれぞれのB&Bの場所が地図で示されていないので、北ヨークシャー全体に散在する星の数ほどもあろうと思われる小さな村々がどこに位置するか郵便番号をたよりにいちいち地図で参照しなければならず、宿探しには半日近くを費やすことになってしまった。それから「これは」と思うB&Bをリストアップ、電話で空きを確認、そしてやっと予約完了である。ネット上またはeメールで予約ができるところもあったが、電話予約の方が断然手っ取り早い。  ここで特記しておきたいのは、今回のヨーク宿泊の予定が週末に重なりB&Bの予約が非常に困難だったことだ。実は後でわかったことなのだが、丁度この時期にヨークで特別の催しものが行われていたのが原因らしかった。このようなことを事前に把握しておかなかったのは非常に浅はかだったと実は現地についてから後悔することになるのだが後の祭りである。

それはともかく、結局、今回は北海に面したWhitbyという町にあるthe Arches Guesthouse(*1)でまず一泊し、それからヨークシャー ムーアの南端にあるAppleton-le-Moorsという小さな村のパブの2階に あるthe Moors Inn(*2)でもう一泊して、最後の夜をヨークの街の 中心部からそれほど遠くないthe Priory Hotel(*3)で過ごすことに なった(*4)

宿が決まったら今度は交通機関である。ロンドンーヨーク間を運行している鉄道会社はNational Express East CoastとGreat Central Trains の2社。従来バスや列車などの公共の交通機関はペット可が普通だったのだが、最近では愛犬同伴は有料の場合も多々あるので事前に確認してみたところ、前者は無条件で犬は無料。後者は一人あたり同伴の犬2頭まで可(無料)で小型犬の場合はかごなどに入れることということだった。

さて、今回の旅では列車でヨークまで行き、駅構内で車をピックアップできるHertz(*5)という会社からレンタカーを借りることにし同社のインターネット上のサイトを利用し事前に予約を入れておいた。これまでに犬同伴の旅行のためにレンタカーを借りたことは幾度とあるが、車をピックアップする際、犬連れて行った事は今までに一度もなかったので、今回それを確認すべきかどうか実はかなり気にかかった。ヨーク以外の宿には車なしではいけないから、レンタカーを借りられなければ全く話にならない。しかし、この旅には筆者の父親も同伴することになっており、レンタカーを借りる際、父と犬に別の場所で待っていてもらえばよいだろうと考え、あえて問題を複雑化することは避けることにした。

ここまで事はスムーズに運び準備はほぼ万端に整い,翌朝早々の出発に備え早めに就寝しようと思っていたところ問題に直面することになった。我が家は最寄りの地下鉄の駅から徒歩20分ほどの所にあり、高齢の父同伴ということで出発前夜に自宅から列車の始発駅King’s Crossまでタクシーを予約しようとしたのだが、犬連れということで 予約を受けつけるタクシー会社がなかなか見つからないのである。結局、犬連れでも予約を受け付けるというタクシー会社が見つかったのは深夜過ぎ。それでもこの時点で早番の運転手の中で誰が予約を受け付けるかわからないので運転手が出社する翌朝の7時に予約の電話を入れるようにということで了解。不安な気持ちが残るまま電話の受話器をおいたのだった。列車は翌朝10時発。始発駅は自宅から車で3、 40分ほどの所にあるのだが、通勤ラッシュを考慮に入れ1時間前に出発するとしても翌朝9時までには自宅を出なければならない。コストを押さえるため、日本ではロンドンタクシーとして知られる公式認可されている会社を利用しなかったのが今回、裏目に出ることとなったのである(次回に続く)。

ロンドン、King’s Cross (キングスクロス)駅 写真提供 : http://commons.wikimedia.org/wiki/Image:Kings_Cross_Station_Platforms,_London_-_Sept_2007.jpg

*次回、愛犬と行くヨークシャーの旅は犬同伴でロンドンタクシー(黒キャブ)以外のタクシー会社(ミニキャブ)を利用するにあたっての注意、レンタカーで行くキャッスルハワードとキャプテンクックの町、ウィットビーの話題を中心に紹介の予定。
参考資料:(*1) the Arches Guesthouse:(HYPERLINK “http://www.whitbyguesthouses.co.uk/)” http://www.whitbyguesthouses.co.uk/)
(*2) the Moors Inn: (HYPERLINK “http://www.moorsinn.co.uk/)” http://www.moorsinn.co.uk/)
(*3) the Priory Hotel:(HYPERLINK “http://www.priory-hotelyork.co.uk/http://www.priory-hotelyork.co.uk/)
(*4)北ヨークシャーの地図:(HYPERLINK “http://www.yorkshire.com/cps/rde/xchg/SID-3F57FEF5-75FCB6C1/ytb/hs.xsl/yorkshire-map.htm“)

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