フォスターファミリー体験記 – Maribelle

Maribelle

Maribelle(マリベル)はニューファンとフラットコーテッドRのミックスの女の仔で、9-10ヶ月ぐらいの月齢、体重は45ポンドです。身体は黒いダブルコート、パピーらしくしなやかに弾んでとても愛嬌のあるかわいい仔です。

私がフォスターのボランティアをしているOFOSAからの連絡で、ポートランドから250マイル離れたワシントン州パスコ市にあるシェルターが早急にヘルプを求めていることを知りました。
地方のシェルターは、飼い主たちの避妊に対する認識不足のせいで望まれずに生まれる犬が多く、放棄する飼い主が多いのですが、昨今の不景気のせいでシェルターは常に満杯で収容スペース不足の状態です。
このシェルターでは来週、25匹処分しなければならないとのこと、OFOSAとしてはフォスターファミリーが見つかればその頭数だけ生き残れるので、名乗り出て欲しいという連絡でした。
OFOSAに登録しているフォスターファミリー達はすでに別の犬や猫を一時預かりしていたり、ちょうど夏休みとあって旅行中の人も多いのですが、7月14日(火)に結局往復10時間かけてパスコのシェルターから14匹の犬を引き取ってきました。そしてこのMaribelleが私の担当となりました。
その夜9時頃、OFOSAの事務所に私はMaribelleを引き取りに行きました。この大きなパピーは人にも犬にもフレンドリーで、いつも嬉しそうに尻尾をブンブン振り回しています。
ひとつ困ったことに、うちへ来たその晩からヒートが始まってしまいました。月齢から行くとおそらく初めてのヒートです。自分で舐めて始末することも知らず、量はさほど多くないのですがポタポタと床にたれてしまいます。ですからほとんど庭か洗濯室で過ごさせました。そして居間に出すときはタオルで拭いてあげるとしばらくは大丈夫。幸いトイレトレーニングはできているようで一度も粗相はありません。

Maribelleはパスコ市のシェルターに一ヵ月半いましたので、前の飼い主はおそらく8ヶ月齢位まで飼っていたと思われます。しかし何の躾けもしていなかったようで、人に飛びつく、カウンターに前足をかける、今朝は新聞を読んでいた主人の目の前で食卓の上のコーヒーを飲んでしまう始末です。叱って、洗濯室へタイムアウトです。月齢の割には落ち着いてみえますが、興奮したり怯えたりするとすぐに飛びついて来ます。

もちろんコマンドも何一つ知りません。でも初めの2日で「お座り」と「伏せ」ができるようになりました。一番大変なのが食事の用意です。何しろ「待て」や「おあずけ」が分からないのですから、私が4匹のボウルにドッグフードを入れるやいなや片っ端から食べようと押してきます。身体が大きいので腕で押しのけながら毎回格闘しなければなりません(笑)。

Maribelle(マリベル)という名前は日本人の私にはRとLが混ざっていて発音しづらいのでうちでは「マリちゃん」または「まりこ」と呼ぶことにしました。

マリちゃんの我が家での暮らしもだいぶ慣れてきました。身体は大きいけれど手のかからないパピーです。齧ったものも私の安物の老眼鏡とボールペンのみ。飛びつきも当初に比べると驚くほど少なくなりました。

PetfinderにMaribelleの写真と紹介を載せてもらいました。
早速、3件の問い合わせのメールが入ってきました。先着順に連絡を入れたところ、我が家から5マイルほどのところに住むJackとMelindaという新婚のカップルが念願の庭付きの家を手に入れたので家族として迎える犬を探していること、そして是非Maribelleに会ってみたい言ってきました。
Maribelleを彼らの家に連れて行ったところJackの妹や両親まで総出でMaribelleを迎えてくれました。両親の2匹テリア犬も一緒です。Maribelleは最初オドオドしてJackにはなかなかなついてくれなかったのですが、2匹の犬達が一緒だとだいぶ落ち着き、みんなにお腹まで撫でさせてくれました。二人は共稼ぎなので週日は留守になりますが、どちらかがお昼休みに必ず帰ってきてMaribelleを庭に出すことを約束してくれました。
家族全員がMaribelleをとても気に入ってくれました。正式なアダプションは次の(日)の午後ということになりました。
引渡しの前にマリちゃんは避妊手術の予定でしたのでちょうどいいタイミングです。
術後の経過がとてもよいので(木)の夕方Jackのうちに2時間ほどマリちゃんを預けて、慣れてもらうことにしました。こうすればマリちゃんとJackは正式にアドプトされる日曜日までに少しでも一緒の時間が持てて、お互いを知るよいチャンスになるのではと思ったのです。JackとMelindaはその前日にマリちゃんを迎えるにあたって必要な品々を買い揃えていました。この日はMelindaは留守だったのでJackが一人で私たちを待っていてくれました。
Jackの家はこれで2回目ですしHollyと一緒ということもあり、マリちゃんはJackの家の中でもリラックスして見えました。「お座り」と「伏せ」と「待て」も披露してJackを驚かせました。これなら大丈夫だろうと私はMaribelleを残してHollyのトレーニングクラスへ行き、一時間半後に戻ってみるとなんとJackの表情がさえません。「なにかあったの?」とたずねると彼はとてもがっかりした様子で次のように話してくれました。
私とHollyが出かけた後、Maribelleは急にJackを敬遠するようになり、Jackがどんなに呼んでも近づいてくれず、散歩に連れていこうとしても家の中を逃げ回ってしまったというのです。Jackは子供の頃から犬との生活が長いので、もちろん無理強いはせずにテレビを見ながら知らん振りを装いましたが効果なし。そこでお隣の中学生にそのうちの犬を連れて遊びに来てもらうという手を考え出しました。これは成功し、Maribelleはやっと安心して出てきてくれたそうです。

この話を聞いて私はMaribelleのこの不可解な行動の原因を考えました。私やHollyや他の犬がいれば、Maribelleはフレンドリーなのに、一人ぼっちでよく知らない人と一緒だと怯えてしまうというのはなぜでしょう。たった10日前に私が初めて会ったときのあの天真爛漫なMaribelleは一体どこへ行ってしまったのでしょう。

そういえば、マリちゃんがうちへきてまだ3日ほどしか経っていないころ、私の留守中に息子が帰ってきたとき、Maribelleは息子に向かって吠えてしまったと主人が言っていました。また散歩の途中で若い男女数人と公園で出くわしたときにもMaribelleはすごい勢いで逃げようとリードを引っ張ったこともありました。Jackも息子もこの数人のグループも皆若い男性ということで共通しています。

でもマリちゃんはうちの主人のような熟年の男性には安心して甘えてくれるのですが。。。前の家で、若い男の人からいじめられたことがあったのかも知れませんね。

そんなわけで、Jackは少なからずがっかりしましたがMaribelleをアダプトする考えに変わりはありませんでした。そして昨日の(日)の午後、MelindaとともにMaribelleを迎えにうちへやってきました。案の定、Maribelleは初めJackとMelindaに吠えてしまったのですが、うちの仔たちが安心して撫でてもらっているのを見てMaribelleも落ち着き、Jackからトリートをもらったり、身体を撫でてもらったりして無事アダプションの手続きも終わりました。

JackとMelindaがMaribelleを連れて行ってからも、怯えたり吠えたりせずにやっているかと心配でしたが、今日Jackからの電話でMaribelleはKonaという名をもらい、とてもいい仔にしていること、Jackにもだんだん慣れてきたこと、プールに連れていったら大喜びだったこと、などを聞いてほっとしています。

そのうちKonaがJackとMelindaとの生活にすっかり慣れたら、また会いにいきたいと思います。それまではJackからの報告を待つ日々が続きそうです。

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