微笑みの国の路上犬 (18)洪水 – 被災犬と年越し

微笑みの国の路上犬 (18)洪水 – 被災犬と年越し

東日本大震災後、新らしい年がやってきました。そして大水害後のタイにも新年を迎えたたくさんの人たちと犬達がいます。バンコックのN・Oさんは愛犬たちと無事に新年を迎えられました。日本もタイもたくさんの被災犬を有しながら、日本は放射線という見えない恐怖の中、遅々として進まない保護活動です。タイは水の引いた後、地域によっては、まだ廃墟の住宅地ですが、人は戻れず、保護された犬達はというと、飼い主が引き取りにあらわれるのをひたすら待っています。迎えに来てくれた飼い主さんと再会して歓喜している犬達。日本の放射線警戒地域に残されている犬達も、みんな飼い主さんが来てくれることをずっと待っているんだろうなあと思うととても切ないです。(2012/01/26)(LIVING WITH DOGS)



皆様は、2012年正月をどんな場所でどうお過ごしでしたか。多くのLWDのファンの方々は、愛するご家族、ワンコたちとステキな新年の朝を迎えられたことと思います。2011年、在タイ国10年目の私自身は、思いがけず洪水で大変な思いをしましたが、無事にワンコとともに新年を迎えることができ感謝しています。自分自身が被災者側の経験をしたことで、いつものように『 正月休みだ〜。海にでも出かけてリラックスだわ〜』 という気分にもならず、この休暇は、洪水被災地からレスキューされたワンコたちのためにボランティアをしました。



レスキュー活動家のタリニーさんは、ヨーロッパ国籍の獣医師が運営するレスキュークリニックのために、バンコクはラチャダーにある旧家の土地家屋を無償提供しています。年末は他の団体が持ちこんだ犬たちで満員御礼。 『人手が足りないのに60匹もいるから手伝ってください。』との連絡。タイ人ヘルパーは田舎に帰り、世話人がいなくなるので、こんなときこそボランティアの手助けが必要です。

ボランティアはタイ人だけでなく海外から自費で渡航して、短い休暇をすべてタイの洪水被害の犬のためのボランティアをしている若い女性などのほかにもスイスなどから駆けつけたボランティア獣医もいました。

チェルシーさんはWEBで情報を見て、心を痛めてアメリカから飛んできたというのですが、観光もせず、朝から夜まで臭いところで、ずっと犬の世話をしており感動しました。ご自身はアメリカではラブラドールなど2匹の犬と暮らしているとのこと。ほかの団体からもタイ人のボランティアが入れ替わりにきて、食事の世話、ケージの清掃、お風呂を手伝っていました。2日目に行くと、英語の流暢な日本人の上品なご婦人が参加されていました。洪水で活躍したひざ下までの長靴はここでも重宝しました。獣医師マルゴさんには、汚れを気にせず処理する、チェルシーと私の犬さばきに満足いただけたようです。『彼女たちは最高よ。』お世辞でもお褒めいただき疲れも飛びます。

オランダが母国の獣医師マルゴ(Ms.Margot Homburg)さんは10年以上の在タイでタイ語も上手です。

TREAT
http://www.treatbangkok.org/
http://www.treatbangkok.org/press-release/


彼女はレスキューの関係者には有名なプーケットの Soi Dog Foundation の基礎を立ち上げた方です。野良犬たちの去勢・避妊手術をする活動を続け、2003年にバンコクからプーケットに移動し、現在は後に参加したJohnとGillに活動が引き継がれています。マルゴさんは2006年にまたバンコクに戻り、今日までSCADなどと連携しアニマルレスキュー活動を続けています。

Soi Dog Foundation Phuket
http://www.soidog.org/en/about-soi-dog/soi-dog-foundations-history/
http://www.soidog.org/en/soi-dogs-the-movie/




さて、1月3日には、タリニーの仲間たちと、2m以上の水位で水没したムアンエークという住宅地の犬たちにエサをあげにいきました。ここは洪水の水位が深く(写真:壁にある線の跡が水位)、被害の大きかったエリアですが、旧国際空港(ドンムアン)の少し北。私が2002年NGO時代に住んでいたソンプラパ通りからも近い場所です。もちろんソンプラパ一帯も被害は深刻でした。



ムアンエーク自体はバンコク都でなくパトゥンタニー県になるのですが、洪水後のゴミ処理遅延の問題などが有名で、その通り今でも放置されたままの状態でした。バンコク都心では、洪水後は災害を忘れたかのようですが、実際に被害地域に足を踏み入れますと、水が引いても、通常に生活できる状態に戻るまでまだまだ時間がかかりそうです。家が水没し、飼い主も生き抜くのに必死なのでしょうか…置き去りにされた犬たちの哀れなこと。

前回、紹介したナコンパトム県にある、カセサート大学のカンペンセーンキャンパスの獣医学部が運営する洪水被災の動物たちの避難所は、クリスマス前に撤収する前提でクローズしたという新聞記事を目にしました。最終的に、犬430匹、猫40匹、うさぎ33匹、鹿94匹−総勢600匹もの動物たちが飼い主の迎えを待っていました。悲しいことに、飼い主が引き取りを拒否した場合にやっと里親探しがはじまります。うれしいニュースとしては、200人もの方が、捨てられた犬たちの里親になることを希望しているとのこと。

ナコンパトム県で被災した動物保護活動家のMANEEさん(女性)は300匹もの犬を保護していましたが、すべてカセサート大学に避難させました。彼女は2012年に入ったら犬を引き取りたい、と話しているそうです。大学側は、避難所の閉所を飼い主たちに急いで連絡しましたが、多くの動物が残ったままだそうです。ある35歳の女性は、15,000円相当のトラック代を払い、急いで犬を迎えにきました。洪水で家が浸水したとき、何も持出すことができなかったが、6匹の愛犬だけは連れ出したそうです。家族と親戚の家に避難したが、十分な広さがなく、10月から3ヶ月もの間、犬だけカセサート大学に預けるしかなかったそうです。彼女は『どんなに長い期間、あなた(飼い主)と離れていても、犬たちはまだあなたの迎えを待っています。見て、この子達が私にまた会えてこんなに喜ぶ顔を。』

一人でも多くの飼い主の一日も早い生活の復旧と、飼い犬や猫たちとの心のつながりが切れないことを、切に祈らずにおれません。

そして、2012年は世界中で争いや自然災害がなく、尊い命が護られ、自然環境が維持できますように。

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