ありがとう、ジンジャー!(心のリハビリ)

ありがとう、ジンジャー! (心のリハビリ)

1999年夏も終わりの日曜日。

私とジンジャーは,横浜の特別養護老人ホーム「さくら苑」のCAPP活動(Companion Animal Partnership Program: 動物との訪問活動)に参加する為、不安と期待の入り交じった気持ちで門をくぐりました。

CAPP活動、AAA活動(Animal Assisted Activity: 訪問活動)マスコミではアニマルセラピーとして扱われていますが、動物と接することにより、リハビリがはかどったり、自閉症の子が心を開いた、ぼけがよくなった等様々な報告がなされており、注目されている活動です。なぜ、ジンジャーと活動をやってみよう! と思ったかについてお話しましょう。

1996年8月23日にジンジャーは我が家の一員となりました。その4ヶ月前に父が成人病で倒れ、生死の境をさ迷いました。一命は取りとめたものの、週3回の人工透析と右足義足という事態を余儀なくされました。バリバリの昭和一桁ビジネスマンにとって、義足はとても屈辱的だったようで、家族にも実の兄弟にも心を閉ざすようになり、歩くリハビリもしないまま、その日暮らしのようになってしまいました。どうすれば父を元気付けられるか? 歩く練習をするようになるか? 心を開いてくれるか? 妹と考えたことが、「犬を飼おう!」でした。

常々犬を飼いたがっていた父は、母の「マンション住まいだから」、「死んだら悲しいから」の言葉に却下されてきました。妹と相談し、我が家の生活条件にあう犬を探すことになりました。

1. 大きくならない(すなわち小型犬)
2. しつけのコマンドを理解し行動できる(父のリハビリのお供が出来るようになる)
3. 吠えない、噛まない (これはしつけでクリアできる)
4. 丈夫である(オーナーが病気がちなのだから,せめて犬は元気である)
この条件をペットショップで相談したところ、条件にあうミニチュア・シュナウザーを紹介してもらいました。その犬がジンジャーです。

来た当初、日本犬を飼いたかった父は、おじいさんのような風貌のジンジャーに見向きもしませんでした。側に寄せる事さえもせず、手や口を舐めさせるなんて問題外! でした。しかし、父とジンジャー二人の時間が増えるに連れ、色々話し掛けている様子が伺えるようになり、男同士の信頼関係のようなものができたようです。

父がジンジャーにマッサージをしてあげたり、一緒のベットで寝ていれば布団を掛けるなど面倒をみたり、驚く事に手や口も舐めさせるまでになりました。ジンジャーも父が部屋の中を動くときは寝ていようが、何処にいようが飛んで来て、後ろで様子を見守りながら移動場所までついて行きます。本能で、父を見守る事を自分の仕事と思っているのかもしれません。あれから4年、リハビリは思うようにはかどっていませんが、しかし「心のリハビリ」はジンジャーによって確実になされていると実感しています。

このような体験があったので、ぜひボランティアで老人施設などを訪問し、生活に張りを必要としている方やリハビリの進捗しない方への励みになれば…と思い、さくら苑のCAPP活動に参加してみました。

CAPP活動はどんな犬でも参加できる訳ではなく、ある程度しつけされた犬でないと参加できません。又、犬にも性格的向き不向きがあるため、ジンジャーに負担がかかるなら活動を見あわせた方が良いと、当時参加していたML(メーリングリスト)の先輩方からご指導を頂いていましたので、カーミングシグナル(耳を掻いたり、あくびをしたり)も見逃さないよう注意しました。確かに、ジンジャーはおとなしくご老人になでられたり、抱きしめられたりしていました。彼の性格は、大変気を使うが束縛が嫌いなので、「動きたいのに動けない、離して欲しいのに抱きしめられっぱなし」は、とてもストレスになったようです。
翌日は大好きな散歩も行かず、ひたすら寝ていた様子からストレスが大きかったと判断し、訪問活動は今後見送る事にしました。

CAPP活動は一回きりになってしまいましたが、ジンジャーにとっては、父の専属のセラピー犬として充分に貢献してくれています。それ以上望んではジンジャーに失礼ですね。これからも父とジンジャーの間に、もっと絆が深まって行くことを願っています。ありがとう! ジンジャー!!!

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(2000/04/16, 横浜市 Y.Yさん Ext_link ミニシュナ☆ジンジャー )

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