オランダから見た日本の動物愛護 (4)住宅事情 : オランダと日本の比較

住宅事情 : オランダと日本の比較 

<日本での住宅の場合>

私が日本に住んでいた時、マンションを購入したことがありました。その際、不動産屋との売買契約で小型犬の飼育は相談の上で可能と記載してありましたが、大型犬のゴールデンを飼育しても良いという許可を口約束でしました。
クレームが来るようになり弁護士に相談しましたが、口約束だけなので証拠もないといわれました。承諾を出した不動産屋の担当者と話をしても、「裁判するなら、勝手にどうぞ、勝ち目がないことわかってますか?」と言われ、結局泣き寝入りするしかありませんでした。
犬のことを考えて、L字型の広いベランダのある4階の端の部屋を購入しました。犬と一緒にエレベーターはもちろん使用せず、階段で散歩に出ていました。愛犬は、とても大人しく吠えることもない犬でした。近所の住民もいるかいないかわからないくらいだと、言ってくださる方もいましたが。8階の住人の子供がアレルギーがあるとかで、「毛が舞っている」と言われるようになり、犬をマンションから出せと苦情が来るようになりました。毎日念入りにブラッシングして毛が散らないように飛ばないように、気を配っていたのですが。
他の住人の中にも犬や猫を飼っている人がいましたが、苦情を言われ保健所に連れて行った方もいたと、あとから知り愕然としました。
「犬を手放せ!手放せないなら出て行け!迷惑!」などと書きなぐった紙をポストに入れられたこともありました。
1年間闘いましたが、私も小さな息子がいたこともあり、精神状態もボロボロになってしまい、結局、そのマンションから出ることにしました。悔しいけど高い勉強代になりました。

<オランダでの賃貸住宅探し>

日本からオランダに来て、「オランダは動物先進国」と数々のことを身を持って体験することになった私ですが、はじめての感動と驚きはやはり、賃貸住宅に関することでした。
愛犬3頭と息子を連れて日本からオランダに移住するにあたって、まず心配だったこと、それは愛犬達と一緒に住めて、子供にも犬にも優しい住宅環境の賃貸物件が見つけられるかどうかでした。

オランダ人の主人も義理の両親も、主人の友人、とすべての人が口をそろえて「全く問題ないよ。」と言いました。みんなが声をそろえて言うのだからと、信じてはいたものの、日本での「犬猫は汚い、臭い」という通常観念がしみこんでいるので、不安を抱いてのオランダという異国の地へ愛犬と共に降り立ったのでした。
義理の両親の家に仮住まいしながら、まずインターネットで物件探しをしはじめ、気がついたことは、物件情報欄に日本では当然の(犬猫可・不可)という文字がなかったことです。

いくつかの物件を気に入り、不動産屋に電話をして、直接物件を見に行きました。不動産屋とは物件の前で待ち合わせをし、サバサバとした背の高い担当の方は私たちより10分遅れてきました。「少し遅くなったけど、ごめんね。」というと、早々に自己紹介を済ませ、案内してくれました。オランダは日本でいうマンション集合住宅以外では、庭付きの家が主流でたくさんあります。

犬達のために庭付きが絶対条件でした。なかなかいい物件だったので、本当に愛犬たちと一緒に住んでも良いのか、しっかり聞いて欲しい。また「住んでも良い」と言う証拠を見せて欲しいと担当の方に言いました。日本で経験したように、言った言わないのトラブルになることが不安だったからです。ですが、それを聞いた担当者の方は、サバサバとした態度で「もちろん、問題ないですよ」とあっさりした回答。
主人も「ほらね、オランダは犬でも猫でもうさぎでもフェレットでも一緒に住むことは問題ないんだよ。それは飼い主、僕達の権利だからね。」と言いました。主人が担当の方に日本の住宅事情を話すと、大きな目をさらにまんまるくして驚いていました。「ココでは犬を飼えない家を見つけるほうが困難だよ。」とオランダ人は笑って言うのです。

数日後にプルメレントという町へ物件を見にいくことになりました。そこは義理の父の友人が賃貸として出している物件でした。そこでもまた、「もちろん、問題ないですよ。」と一言返事。今度は自分の飼っている犬の写真を取り出し、彼のやんちゃぶりとその可愛さを自慢気に話してくれました。部屋を案内しているときの表情とは打って変わって、表情が緩んでいました。実際、どこの不動産屋さんでも、「もちろんだよ。」という返答ばかりで、そんな質問をするのがおかしくなるくらいでした。そして、自分の飼っている犬や猫の話をしてくれるのです。

オランダ人の家はとても綺麗です。犬猫たちを家の中で飼うことを原則としているオランダでは、日本のように畳というものが存在しないので、床はタイルや、カーペット、木材が主流で掃除もしやすいのです。
動物を飼っていても、いつも綺麗にしているので、清潔です。ある程度、清潔にしていないと、近所から通報され、アニマルポリスが駆けつけることになってしまいます。近所の人たちの目によって動物たちは守られているのです。

無事、オランダで希望する賃貸住宅に住んでから、オランダ人の動物に対しての寛容さにもびっくりさせられることになったのです。

日本から、Mダックス2頭とGR1頭を連れて来たのですが、ダックスは猟犬の血が入っているので、風で飛んでいる袋を見ただけでも吠えたてます。毎日のように、ダックスたちと顔を合わせる隣のおじいさんにも、馴れるまでは吠え続けていました。

毎日のことなので、申し訳なくて、おじいさんに「ごめんなさい。」とあやまると、「どうして、あやまるの?犬は吠えるのが仕事だよ。とくに猟犬種のダックスはね。気にしなくていいんだよ。」と二コリと笑って去っていきました。毎回吠えるにもかかわらず、おやつを頂いたりしていました。

「この子たちのおかげで泥棒はこの近所には寄ってこないから、安心だ。」と言ってくださったオランダ人のおじいさんの心の広さに涙が出そうになりました。近所の人たちが、とても動物に対して寛容的で、当時の家の並び5軒中、4軒は犬や猫を家族にしていました。

たまたまラッキーな近所に当たったのかもしれない?いいえ。今の家に3年前に引越してきましたが、こんなにも、毎日、吠えているのに、苦情をされたことがありません。外で会うと、「よく吠える子たちね。」と笑って触りに来てくれるのです。

一日中吠えているわけではなく、ドアベルが鳴ったときや、動くものを見つけたときです。家の中にいるときは吠えませんし、散歩しているときも問題ないのですが。賃貸住宅であろうが、マンションであろうが、ペットと一緒に入居することは、居住者の当然の権利であるということが浸透していることに驚きと感動を覚えたのです。
日本にもいつか、必ず「人と動物との共生」ができる日が来ることを信じ、目指して!きっと出来る!(2012/9/18)(Animal Rights For Japan)

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