放棄犬について考える

放棄犬について考える
=テーマパーク・パピーミル・ペットショップ破綻による放棄犬について考える=

静岡でのパピーミル破綻による放棄犬は、たくさんの犬を愛する方からの支援もあり、里親探しも徐々に進んでいるようです。この記事は、現在、Mさんが行っている活動を非難する為のものではありませんことをあらかじめおことわりします。Mさんは精一杯出来ることをされています。すべて承知の上でMさんは手を差し伸べているからです。

LIVING WITH DOGSとしては、基本的なことを変えていかないと、いつまでも同じ状況を繰り返すだけと考え、このような問題をただ可哀想だからという面だけで表現できない、繁殖犬レスキューが美談では済まないということを、是非皆様と一緒に考えて行ければと思います。


1.改訂された動物愛護管理法の中でますます増える破綻と放棄

今回の動物愛護管理法の改訂では業者の登録制となります。実施されるのがいつになるかはまだ判りませんが。
これからは、このような生体販売ビジネスは登録制となります。制令で定められる日まで、おそらくあちこちでパピーミル、ペットショップ、イベント業者の破綻が続出するでしょう。
破綻があれば、必ず放棄される犬たちがいる。それも悲惨な状況で発見されるのです。これまでの実績を上回る放棄犬が今後、出てくると思われます。個人の愛犬家や、愛護団体に泣きつく破綻者が多数出てくるでしょう。
そのために、ビジネスで利用された繁殖犬を単に可哀想な犬だから助けたいと思うのではなく、本質を見極めた上で、手を差し伸べることが求められます。

一時の憐憫に押されて助けることが、業者を手助けしてしまいかねず、ましてや動物愛護管理法のより動物にとっての良い法律への前進も妨げるからです。
涙をのんで、ペット業者の繁殖犬を無視し見捨てることも必要な選択肢かも知れません。
「誰かが後始末をしてくれるから破綻してもどうにかなる。」これが業者の逃げ道なのですから。

2.参考[動物愛護管理法改正]

動物愛護管理法の一部を改正する法律は、平成17年6月22日に公布されました(法律第68号)。法律の施行は、公布の日から起算して1年を超えない範囲において政令で定める日となります。

改正の概要は以下のとおりです。
1.基本指針及び動物愛護管理推進計画の策定(第5条、第6条)
 [1]環境大臣は、動物の愛護及び管理に関する施策を総合的に推進するため、基本的な指針を定めること
   となります。
 [2]都道府県は当該指針に即して、動物の愛護及び管理に関する施策を推進するための計画を定めるこ
   ととなります。

2.動物取扱業の適正化(第10条〜第24条)
(1)「登録制」の導入
 [1]現行の届出制を登録制に移行し、悪質な業者について登録及び更新の拒否、登録の取消し及び業務
    停止の命令措置が設けられます。
 [2]登録動物取扱業者について氏名、登録番号等を記した標識の掲示が義務付けられます。

(2)「動物取扱責任者」の選任及び研修の義務付け
  [1]事業所ごとに「動物取扱責任者」の選任が義務付けられます。
  [2]「動物取扱責任者」に、都道府県知事等が行う研修の受講が義務付けられます。

(3)動物取扱業の範囲の見直し
 動物取扱業として、新たに、インターネットによる販売等の施設を持たない業者が追加されます。また、「動
  物との触れ合いの機会の提供」が含まれることが明確化されます。

(4)生活環境の保全上の支障の防止
 動物の管理方法等に関して、鳴き声や臭い等の生活環境の保全上の支障を防止するための基準の遵守
 が義務付けられます。

3.破綻したペットビジネスで放棄犬が個人や団体に委ねられたら

  今後、このような生体繁殖ビジネスで使用された犬の放棄があった場合では、どうしたら良いのでしょう
  か?そこを考えてみましょう。見放された犬たちを見過ごすことの出来ない優しい方はたくさんいます。
  だからこそ、日本の動物愛護管理法がより良い方向に進むよう、そして不幸な犬がもう出ないようにするた
  めにを考えながらレスキューをしたいものです。

 <チェックポイントは>
 ?破綻した業者は動物取扱業の登録がされているか?
   登録済みの繁殖者でも、基本的に動物愛護法を無視して飼育環境などの面で虐待行為ではないかを明
       確にする必要があります。
   飼育環境の映像記録は克明にしておかなければなりません。

 ?法定伝染病である狂犬病予防接種を行い行政への届け出をしているか。
   されていない場合、法的に違反することとなります。行政に訴えれば罰則となります。
   克明に記録をとり、実態を明らかにしなければなりません。
   二度とペットビジネスを行えないように、業者への責任追及も必須です。地域の警察、保健所に通報し、
   業者の糾弾を平行して行う必要があります。
   
 ?レスキュー犬のリトレーニング
   繁殖犬の場合、クレートの中だけの暮らししかしていない犬たちです。社会で暮らせるように、リトレーニ
       ングは必須です。
   犬と暮らす経験者の一時預かりなどの手助けを借りて、時間をかけて、トイレトレーニングや、人に対し  
   ても問題のない犬として、社会化された段階で里親募集をかける必要があります。

 ?安易な里親募集の危険性
   現状では、日本中に里親詐欺が横行しています。その場でさも良い里親になりますと言って犬をもらい
       受け、虐待の上、殺されたりする事件が頻繁に起こっています。
   里親候補の見極めを確実にしましょう。
   その場で渡すのではなく、候補者の自宅に赴き、家庭環境を見て手渡すくらいの用心深さが必要です。
 
 ?初めて犬と暮らす人が、繁殖犬を里子に迎えた場合
   繁殖犬が暮らしたこれまでの環境は、すさまじいものであったことは容易に判断できます。子犬時代から
       可愛がられて育った犬ではないのです。レスキューされた犬たちは、なにがしかのトラウマを持っていま
       す。せっかく里親さんに出会っても、この犬にとって第二の犬生がほんとに幸せになれるかは、どれだけ
       その犬を理解できるかにかかっているからです。里親さんの元で手に余り、また捨てられるような悲劇
   は起こしてはなりません。犬と初めて暮らす人は安易に里親候補にならない方が良いでしょう。

4.繁殖犬の放棄にいたる原因を探ってみましょう。

  ?需要と供給バランス
   犬を飼いたいと思う人と、売りたい子犬の供給バランスに大きな差があります。市場にはいつも子犬があ
       ふれ、パピーミルでの繁殖、ペットショップでの繁殖、そして一番多いのがバックヤードブリーダーの繁殖
      です。そしてブリーダーと言われる比較的信頼できる繁殖です。
       需要分だけの繁殖であれば犬あまりはなくなりますが、あまっているために、余剰犬はパピーミルに引き
       取られ、またもや繁殖犬となる構造です。

  ?生まれる子犬が多すぎる
   繁殖が儲かると思う人がいて、生体を売るペットショップがある。そして言い換えれば安易に購入する場
       があり、安易に購入する人がいる限り生まれる子犬は減らないでしょう。

5.生まれる犬たちを減らす策
  繁殖する犬は、DNA鑑定、遺伝性疾患の検査済みの犬でなければ血統書を発行出来ない、と言うように
  安易に繁殖が出来なくすることが求められます。JKCがこれを実行したら、かなりバックヤードブリーダー
  は減っていくものと思います。安易なペットショップでの繁殖、パピーミルも存続できないでしょう。
  血統書好きの日本人ですから、血統書のない犬は購入しなくなるからです。

6.生体販売の流通の仕組みを変える
  ?ペットショップでの生体展示販売を禁止する
  ?ネットでの生体通販を禁止する

そこまでやらなければ、日本の流通は変わっていかないでしょう。放棄される犬を減らすことも出来ないと思います。さて、皆様は、どのように考えられるでしょうか?
(2005/9/2)(LIVING WITH DOGS)


 

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