鹿やサルによる食害対策にオオカミの復活?

鹿やサルによる食害対策にオオカミの復活?

日本全国で鹿の増加、野生サルの増加が報告されています。北海道でエゾシカをそこかしこで見られるようになったり、観光地のお土産屋のお菓子を狙うサルの群れなどの被害はTVニュースでよく知らされるようになりました。
地球の温暖化や、動物の生態系の変化でバランスが崩れているんですね。
かつては、オオカミが鹿を捕食し、鹿の増えすぎを抑制していたのですが、日本では日本オオカミは絶滅したと言われています。

日本にオオカミを復活させようという興味深い話題がありました。
犬と同じ先祖を持つオオカミ、ぜひ、復活させてほしいですね。(2006/7/15)(LIVING WITH DOGS)


シカ、サル対策 「オオカミ復活」はどうか

ニホンジカや野生ザルの食害が近年、県内各地で深刻な問題になっている。尾瀬周辺では、数年前からシカを捕殺している。また、福島市飯坂町の3日尻開拓組合は犬を使ったサルの「追い出し作戦」を7月から始め、果樹などの被害防止を目指す。今後の成果を注目したい。

これら野生動物の増えた原因は、温暖化などによる植生の変化に加えて、天敵であるニホンオオカミの絶滅が大きいという。オオカミは古くから本県を含めて国内に広く生息した。シカなどを捕食して増え過ぎを抑え、結果的に森林を守ってきた。さらに、食べ残しはイヌワシなどの餌にもなった。しかし、乱獲や海外からの伝染病などによって激減。明治38(1905)年以降、姿が確認されず、既に絶滅したと考えられている。

オオカミを日本に復活させ、生態系再生や自然保護を図る計画が進められている。丸山直樹東京農工大教授ら研究者によって研究団体「日本オオカミ協会」が平成5年に結成され、国などに実現を働き掛けている。シンポジウム開催や「日本の森にオオカミの群れを放て」(吉家世洋著、星雲社刊)などを通じて啓発にも力を注いできた。

計画によれば、ハイイロオオカミの群れを中国モンゴル自治区などから移入して森に放す。ニホンオオカミはハイイロオオカミの亜種。ブラックバスなどの外来種とは異なり、日本の生態系に悪影響を及ぼす心配がない。丸山教授は「人間が絶滅させた種の復活は責務。コウノトリの放鳥と似たような手法」と話す。また犬に比べて狩りが上手で、サルやイノシシをも捕らえる。抑制効果が期待できるという。

米国では、既に11年前からイエローストーン国立公園などで復活事業が進められている。カナダから移した群れが増え、森を荒らしていた大型シカであるエルクが減って、植生が回復傾向にあるそうだ。

同協会は当面の導入候補地として尾瀬を含む日光国立公園を挙げている。理由は、シカの数が多く貴重な植物の食害が深刻、公園内での狩猟が禁止されている上、自然が既に詳しく調べられている―など。

オオカミが人や家畜に危害を及ぼす恐れはないのか?丸山教授は「健康なオオカミが人を襲うことはない。逆に接触を避けるため人的被害は皆無に近い」と語る。放牧された羊、馬や放し飼いの犬を襲った事例はあるものの、日本では外国のような広範囲の放牧は行われておらず「ほとんど心配ない」としている。

恐怖心は、「赤ずきん」「3匹の子豚」など、欧州の童話の中で“悪役”とされてきた影響が大きいようだ。日本では、敵視されることは少なく、むしろ「神の使い」としてあがめられてきた。

今すぐの導入を主張するつもりはないが、長期的な検討課題にしてはどうか。影響予測のための調査やオオカミによる被害が出た際の対応・補償など、解決すべき問題は多く、時間をかけた議論が必要だ。何よりも国民の理解が大切になろう。米国での導入の際は、啓発などにより70%近い住民の賛成があったという。日本人は100年以上もオオカミを知らない。まずは生態や情報に目と耳を向けていきたい。(2006/6/28)(福島民報論説より)

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