【犬と暮らす家(20)】くーの家〜まわる家の全貌

【犬と暮らす家(20)】くーの家〜まわる家の全貌


およその工事が終了し、完成に近づいた所であらためて「まわる家」の全貌をご案内いたします。

土地の大きさは31坪。ほぼ正方形ですが、接道している面と反対側のいわゆる奥は、少し斜めの境界線になっている事から、余裕のある部分にエコキュートのタンクや軟水機などコンクリートが打たれて設置されました。エアコンの室外機もこの周辺に置かれます。

元々敷地は今のレベルだったようで、ここを造成する時に通した道を先に削って通された大通りに繋げるため、高台がごっそりと削られたようです。よって土地のレベルは接道面からおよそ2mの高さに土地のベースラインがあり、その高さにあわせるように削られた部分にプレキャストコンクリートのガレージが埋め込まれていました。地盤調査からも、造成されて30年以上経過している事からも、盛り土ではない土地である事がわかります。

まず外見はなんだか倉庫のような雰囲気の黒い家です。前面道路から見上げる形で建っている事から、中庭の存在や家の形がよくわからないというのもひとつの狙い通りでした。シンプルかつ木造に最適な軽量で耐久性も高い外壁素材という意味でも、ガルバリウム鋼板は好みでした。

庭を囲むウッドスクリーンも条例により50%の透過率という条件を守っていて、外門のレッドシダーとウッドスクリーンはキシラデコールの自然な茶色に防腐も兼ねて塗り上げられます。擁壁は以前の仕上げ部分は削り取られている状態ですが、このあとグレーのモルタルをスタイロゴテを使って塗りあげ、ざらっとした仕上げにされる予定です。

外門を入り、ゆるやかな階段を登ると、ガレージの上の外庭スペースに出ます。そこを90度右にまがると、正面が内玄関。右手には中庭をのぞみながらのエントランスです。ちょうど頭の上は2Fワークスペースになっており、雨の日はここでいろいろ濡れずに作業ができたりするでしょう。

外階段から中庭を経て玄関に至るまでのアプローチには、コンクリート平板が並べられています。ローコストですがなかなかよい感じで、右手の中庭と左手の外庭がひとつの庭として繋がりが持たされています。

しかし今はどちらの庭も土がむき出しです。雨が降ると水はけの悪い関東ローム層の粘度質がどろどろ状態になります。ここをくーのために自分たちで足に優しい芝生化する計画ですが、予算がなく外溝の庭スペース部分は自分たちでやらざるを得ません。住んでからゆっくりと土壌改良をしていくつもりです。

玄関扉は味のあるアマゾンチェリー製です。ここは防火地区ではない事から、既製の金属製ではなく作ってもらいました。当初は引き戸を切望していたのですが、高高住宅(高気密高断熱)としては機密性や精度で問題になりやすいと言われ、考えた挙げ句に普通の開き戸になりました。

温めたり冷やしたりした室内の空気を全館空調により上下循環させ、断熱材やペアガラスで状態を保持するという仕組みですが、それは基本的にオール電化だからこそなせる事です。二酸化炭素などを生まず、空気を汚さず逃がさないといのが基本になるというわけです。ガスや石油ストーブ、薪ストーブは空気をどうしても汚してしまうので、一切使いません。非常時にはキャンプ用のカセットガスやガソリンストーブは、中庭の縁側で使えばよいでしょう。

玄関を入ると正面には蓄熱暖房機が置かれ、収納の釣り戸棚や広い棚が現れます。これらもすべて無塗装でワックス仕上げを自分でが行います。左は引き度を開けるとパウダールームがありますが、右には玄関からずっと突き当たりまで、まだブルーシートで養生されていますが黒いタイル敷きの土間空間が続いています。

この土間はダイナミックな空間になります。上を見上げると天井まで見通せる高さがあり、あばら骨のような独特な垂木使いが表しになっていて迫力があります。途中半分覆い被さっているロフトの床裏との千鳥格子の垂木使いは、とても個性的に感じられます。

パウダールームの床はローコストな長尺塩ビシート、いわゆるクッションフロアーで汚れてもいい仕上げになっています。ここには洗濯機や洗面台、トイレ、風呂、そしてくーの専用トイレが造り付けされます。

洗面台は深くて広い理科実験室用のものが使われ、それこそ小型犬ならここでシャンプーも可能です。水はねも構造上少ない事から、実用的かつ結構格好も気に入っています。また壁には可能な限り作りつけの棚を作ってもらっています。

くーの専用トイレは手作りでまるごとFRPで包まれ、シャワー付の水栓で汚れたら水で流せるようになっています。トイレの上は大容量の収納になっており、風呂あがりに使うタオルや下着を置いたり、ペットシーツや衛生用品を置くスペースが確保されています。

玄関ホールに戻ります。土間を中心に左手には縁側のように腰掛けるのに丁度よい高さのスペースがあります。ここは寝室として使われる予定で、縁側スペースの下は靴置き場となっています。ここは同時に天井付近の空気がここから排出される排気口ともなっています。

この寝室は玄関脇でもある事から、一応引き戸で完全に閉じる事ができるようになっていますが、基本的には常時開放のままでプライバシーが確保されている中庭を見ながら寝起きする、という贅沢な空間にもなります。

その寝室の並びにおよそ3畳のウォークインクローゼットがあります。足を踏み入れるとぐるっと囲まれるように腰の高さと頭の高さに棚がつくられ、洋服や布団、小物が大量に収納できるようになっています。

シンボルの階段1。1F土間から中間の踊り場。壁は構造体現しとなっています。寝室から土間を挟んで中庭が一望できる窓は、吹き抜けの効果で1Fから2Fにかけて全面にひろがっています。中庭にこの窓から直接出る事も可能です。季節がよくなれば開け放ち、中庭で周りの目を気にせずに、犬たちを庭で開放しつつちょっとしたお茶会なんかもできそうです。

寝室を通りすぎ、吹き抜けの土間空間を突き当たりまで行くと、ここで「まわる家」のニックネームの由縁となった回廊階段がいよいよはじまります。土間と階段のつながり部分には、階段を作ってくださった大工、玉川さんが檜製のすのこが置かれ、階段の高さと土間のレベルを繋いでいます。

階段の壁も寝室も、全て構造体むき出しの壁が特徴となります。これも「まわる家」のイメージの一つで外断熱工法により通常はボードで隠してしまう壁の内部構造体を棚として使えるように工夫されています。棚板に見えるのは普通縦に使う間柱を横に使い、柱も露出させて壁面は構造用合板のノボパンをそのまま見せて、山小屋のような雰囲気も出しています。外側の黒い金属外壁とはまったくイメージが違う部分です。

階段を上りはじめるとすぐに右手には中庭に向いた150cm角のFIX窓。踏み板の高さで窓枠となっている事から、くーが中庭をよく眺める事ができます。このゆるやかな階段は踏み面が45cm、蹴上げが15cmとなっていて、くーが1段1段座る事ができるサイズになっています。

中間の踊り場の低い位置にはくー専用の窓、通称「くーの窓」。ここから前面道路や外門がよく見下ろせます。くーはここで外を眺めていられます。外の道からもよく見える位置でお気に入りの場所になってくれるといいなと願うばかりでした。

また回廊階段の下はおよそ2畳半ほどのウォークインクローゼットとなっていて、中庭側に施錠可能な扉が付けられます。床は基礎そのものなので、外気温・湿度と同じため、キャンプ用品や園芸用品、一部バイクや自転車が収納するつもりです。

踊り場から90度まがると右手にもう一つくー用のFIX窓。ここは中庭や土間横の全面サッシを眺める事ができます。中庭からこの窓にいるくーをみると、高さがあるのでおなかを見上げるような角度になります。

階段を登り切るとワークスペース。ここはピロティ形状の空間で、北西側を向いたFIX窓と中庭側を向いた全面窓に挟まれています。床下は構造上冷え込むため、しっかりと断熱材を詰め込んで対処。冬も安心です。

ここがなぜ空中に浮いているかというのは、デザイン的な要素だけではありません。中庭と外庭を分断せずに一体化する事で広くみせたかったのと、土地の一部に埋め込まれているプレキャストコンクリートのガレージに、躯体の重さがかけられなかったためです。しかし現実にはそれ以上にいろいろな付加価値が生まれ、とても面白い場所となってくれました。

三角形でデッドスペース気味だった所につくられたワークスペースは、座卓仕様で作り付けの天板が備えつけられます。そして3箇所座れるスペースを作り、そのうち2箇所はそれぞれパソコン用キーボードドロワーが天板の下に装着されたパソコンスペース、残りの1箇所はミシン常設スペースです。常々ミシンを使ってくーのカラーやリードを作ったりしていたのですが、毎回片づけなければならないのが面倒で仕方なかったという妻からのリクエストからのものでした。

また三角形の天板の最も隅になる奥は、我が家の情報インフラの集中コントロールコーナーになります。備えつけの壁にはプリンタやFAX、スキャナなどが置かれ、書き物や細かい作業は何でもここでできるようにと考えました。

このワークスペースには友人の家具職人にお願いして、座面のリクエストだけでハンドメイドで作ってもらった低座椅子が入ります。すでにクッション部分以外はできあがっていて、オープンハウスまでには運んでもらうう予定です。くーの存在を感じながら作業したり撫でたりする事ができる場所になるでしょう。

ワークスペースを抜けるといよいよ生活の中心となる空間です。リビングダイニングキッチン+ロフトが一望にでき、また1Fからの吹き抜けを介して土間も見下ろす事ができます。

リビングの壁も基本的には1Fと同じように構造むき出しの棚だらけです。HDレコーダーやオーディオ、書類などを収容できる造作のローボードも作り付けられ、夫婦並んでテレビを見る位置にローテーブルを置いて座れるようにしようと思っています。ここでもくーが横に寄り添えるようにする事をイメージしています。

この山小屋みたいな雰囲気の空間には既成のシステムキッチンでは浮いてしまいます。そのため全て造作で、あえて配管のコストダウンや構造的な無理をなくしたシンプルな壁付けキッチンスペースです。しかし配膳台兼食器棚・食料庫にもなる大型のカウンターを作ってもらいました。あえて食器棚を設置しなくても十分な収納能力を持たせてあります。

シンクの並びにある棚には、くー用の冷凍肉を保存するために購入予定の冷凍庫を入れるスペースや、オール電化に対応して新たに購入予定になるスチームオーブンを収納する棚、そして炊飯器やオーブントースターを使う時だけ引き出せるスライド棚をバランスよく組み込んでもらいました。私自身が料理するため、基本的に妻よりも私がレイアウトやポイントをまとめ、建築家の米村さんと検討した結果の特別なキッチンスペースです。

また冷蔵庫の設置スペースはワークスペースとの間にある空間を、互い違いに区切った片方になりました。ちょっと変わったレイアウトですが、トイレはくーが老犬になった時に、下のトイレまでいかなくても2Fで用が足せるスペースを確保したかったのです。

ロフトは取り外しのできる階段がかかります。ロフトに登ると、換気用の滑り出し窓と、明かり取り用のFIX窓が床のラインにあり、高さが140cmしかないのですがとても居心地のよい空間になっていました。スリムなスチール製の手すりは結構スリリングですが、リビングやキッチン、ワークスペースどころか1Fの土間までも見下ろす事ができます。

これが「まわる家」の全貌です。ロフトを除けば約87.2平米、ロフトを入れてやっと約99.7平米の、夫婦と犬が暮らす小さく大きな1LDKが、あと少しでできあがる所まで来ました。

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