あるドッグランでの咬傷事故顛末記

あるドッグランでの咬傷事故顛末記

ここに記載するドッグランでの咬傷事故は、宮城県のあるドッグランでの出来事です。このような事故を未然に防ぐ為に、ドッグラン経営のありかた、ドッグラン利用者の利用方法、共にもう一度、施設のあり方、利用者のマナー等を考えていただければと思います。そして、ほんとに素晴らしいと言えるようなドッグランが増えていくことを願います。


登場する人物と犬  

被害者側 

・飼い主 Aさん
・咬まれた犬 P(ミニチュアダックス) 

加害者側 
     
     
     

・咬傷事故を起こした犬の飼い主 Bさん
・咬んだ犬 H(ラブラドール)
・咬傷事故を起こした犬をドッグランに連れてきた人 Cさん
・咬傷事故を起こした犬を広場に連れて入った経営者 Dさん 


ドッグラン概要

個人経営ドッグラン
利用料金: 一頭会員¥500、ビジター¥700
注意書き: (パンフレットの入園ルールから)
係員の許可なく入場をする事を禁止いたします。 係員指導により下記の手順でにてノーリードにできます。

1.柵ごしのお見合い
2.リードをつけて入場
3.中大型犬は広場内に入場済みの愛犬と一時的にリードをつけて見合いさせます。
4.初回来園の愛犬のみリードをつけて広場内を一周願います。
5.愛犬同士の安全確認後に係員よりノーリードOKサインが出されます。

係員の判断によりノーリードできないケースもありますことご了承願います。パーク内における事故などのトラブルは誠に勝手ながら当社では責任を負いかねますことご了承下さい。

注意書きはちゃんと手順を踏んでおり、おそらく、様々なドッグランを見本に作られたものでしょう。念を入れておりますから、その通りに運営されていれば全く問題が起きるはずがないと言うことです。

事故はこのように起こった

Aさんからの報告
私の犬は(ミニチュアダックスフンド)、広場で12、3頭の他の犬とそれまでは何のトラブルもなく遊んでいました。皆さんノーリードで遊ばせていました。ゴールデンから柴犬、シーズーなど様々いました。
そこへ、ドッグランの経営者が、ラブラドールをリードをした状態で広場へ連れてきたのです。その時、経営者からは、何の注意もうながされませんでした。
経営者がラブラドールをリードをつけて、奥のほうまできたときに私の犬が、ラブラドールの後ろのほうから近寄っていってしまい、吠えるのではなく「ホフッ」と言った時に、カブッと噛まれてしまったのです。うちの犬は、ラブラドールに触れてもいなく、50cmは離れていますが、ラブラドールの動きが速く一瞬のことでした。
噛まれた直後、傷を見ましたら、背骨の腰のあたりちょっと右側に犬歯が刺さった穴がぱっくり開いていました。急いで病院へ行き、全身麻酔をして頂いて縫合手術をしていただきました。見た目は、穴だけのようでしたが、身体の中で2cm×3cmの大きさで傷が広がっていたといわれました。
表面は3針ほど縫合していますが、中のほうでも何針かは縫合されました。その後3日間は病院へ行き化膿止めの注射をされ、1週間薬を服用していました。
 

ここまでの問題点

1.飼い主側のCさんが広場に連れて入らず、このドッグランの経営者Dさんが連れて入っていること。
2.Dさんは広場の中にいる方々へ新入者が入ることをコーションしていない。
3.経営者Dさん自らがルールを違反していること。
 


ドッグラン概要

個人経営ドッグラン
利用料金: 一頭会員¥500、ビジター¥700
注意書き: (パンフレットの入園ルールから)
係員の許可なく入場をする事を禁止いたします。 係員指導により下記の手順でにてノーリードにできます。

1.柵ごしのお見合い
2.リードをつけて入場
3.中大型犬は広場内に入場済みの愛犬と一時的にリードをつけて見合いさせます。
4.初回来園の愛犬のみリードをつけて広場内を一周願います。
5.愛犬同士の安全確認後に係員よりノーリードOKサインが出されます。

係員の判断によりノーリードできないケースもありますことご了承願います。パーク内における事故などのトラブルは誠に勝手ながら当社では責任を負いかねますことご了承下さい。



ドッグラン概要

個人経営ドッグラン
利用料金: 一頭会員¥500、ビジター¥700
注意書き: (パンフレットの入園ルールから)
係員の許可なく入場をする事を禁止いたします。 係員指導により下記の手順でにてノーリードにできます。

1.柵ごしのお見合い
2.リードをつけて入場
3.中大型犬は広場内に入場済みの愛犬と一時的にリードをつけて見合いさせます。
4.初回来園の愛犬のみリードをつけて広場内を一周願います。
5.愛犬同士の安全確認後に係員よりノーリードOKサインが出されます。

係員の判断によりノーリードできないケースもありますことご了承願います。パーク内における事故などのトラブルは誠に勝手ながら当社では責任を負いかねますことご了承下さい。


事故後の顛末-1

Aさんからの報告
手術が終った後ドッグランへ行き、手術の請求書をドッグランの経営者に渡しました。ラブを連れてきていたCさんもいらっしゃいました。
経営者は、診断書と領収書がないとお金は出せないといっていたのでてっきり経営者が払うんだと私達は思っていました。Cさんに「お宅の犬が噛んだので保健所に連絡しなくてはいけないので、お名前と住所を教えてください」というと、横から経営者が「ここは私有地だから、保健所には連絡する必要がないから名前など教える必要はない」「この方達はこの犬の飼い主じゃないから言う必要はない」と言われました。話を聞くと連れてきた方の姉妹の犬だったらしく、自分達は飼い主ではないと言うのです。
「だからといって、私の犬が噛まれたことにはかわりがないのでとりあえず、教えてください」と、連れてきた方がそれではといって教えてくれました。

次の日に、診断書と、領収書を持って、ドッグランの経営者Dさんに会いに行 きました。すると、「治療代は、飼い主の方が払います。」
「あんな傷で、全身麻酔なんて信じられない、あの傷では何千円の治療代が妥当だ。」経営者は傷など一切見ていません。
「あんな法外な金額は、払えない、病院に行って確認するから、今日はお金は払わない、適正な金額を飼い主と相談して振り込みますから」「私は、安全管理の為にリードを持っていただけで、その犬が安全だなんて一言も言ってない」「お宅の犬の方が近寄って来て仕掛けたんだから悪いんだろ」「昨日あんな風にほざかれたら、うちの信用に係るんだよ」「危ないと思ったら来ていただかなくて結構です」と言われました。

「飼い主の方が、支払うのでしたら直接交渉します」というと「第3者の公正な立場の私が間にはいって、話を進めるから直接交渉はしないで下さい」といわれました。
その話をした後に、連れてきていた方Cさんに電話をすると「治療代は、経営者がリードを持っていて事故が起きたので、経営者本人が払うと言っています」
「もし、Aさんから電話が来てもなにも言わずに経営者に電話してくれるよう言われた」といっていました。
 

問題点

1.経営者Dさんはここでは咬傷事故を起こした時、リードを引いていた当事者である。Dさんは、BさんCさんには、Dさんが当事者であることを暗に認めている発言をしているにも関わらず、Dさんは第三者という立場を取ろうとした。
2.咬んだ犬Hの立場を考えると、飼い主でない人Cさんに連れられて来たこと、重ねてDさんというもっと馴れていない人に引かれて不特定多数の犬がいる場に入ること、これは犬にとっては恐怖に近い不安な状況であった。
 


事故後の顛末-2

Dさんから書状(郵送による)

愛犬治療費の損害賠償に関すること
 

首題の件 立会人に相談の結果下記条件にて対応致したく存じます。
尚、本件につきましては弁護士と相談にての結論でありますためA様にて
本件承諾なき場合は法的措置を講じられ異議申立てを行ってくださいませ。
つきましては法的措置がなされた場合当方は今後のお話し合いにつきましては弁護士を代理人として対応させていただきますこと申し添えます。

1 確認事項 A様の愛犬が怪我をした状況

平成12年4月29日 午前11時30分頃
場所はNドッグランパーク愛犬広場内
当方B所有犬H(ラブラドール)を立会人が安全確認の為リード付にて誘導時にA様の愛犬(P)が挑発行動を行った為Hが反撃し、それが原因でPにHの牙が刺さり怪我をさせてしまった。

2 飼主責任
他のケースにおける愛犬同士のトラブルについても怪我をした側、怪我をさせた側ともに飼主責任が問われる飼主責任範囲はトラブル状況により異なるよって今回のトラブル状況判断として両飼主に各50%の責任が妥当と考える。
(注)代理人に対する責任は一切問えない(印刷物・案内板にて明記)。

3 治療費額の適性判定
当方にて現在あらゆる方面にて調査中ではあるが少数回答先所見としては約3万円未満と判断される為本金額×50%=15,000円にて合意致したく本金額に合意の場合はお電話又はFax願いますが異議申立て時は必ず書面にてその理由を具体的に明記の上郵送願います。 

問題点

1. この文ではDさんは当事者になっておらず、ただの代理人にすり替わっている。
 


事故後の顛末-3

ドッグランに犬を連れてきていた方Cさんに電話をし、書状について話をしました。ドッグランの経営者Dさんに、すべてまかせているようで、内容についてもはっきりとCさんが確認していないようでした。

当初は、経営者がリードを引いていたので、自分で治療代を払うようなことを言っていたので、お任せしたということです。
しかし、5月7日(日)に話をしたところ、「自分は、一切責任を負わないので、¥15,000は払ってください。」といわれたそうです。Cさんはそのことについては、納得しているようでした。

Cさんに「なぜ、犬を経営者に預けたのですか?」と聞くと奥様は入園料を払う為に受付へ、ご主人はトイレに行かれるということで経営者のDさん自らが、犬を広場内に連れて行ったということでした。
従って、Cさん夫婦は、私の犬Pが、噛まれた所を全く見てもいないし知らなかったそうです。そう言った経緯があったので、話合いについても経営者に任せてしまったと言うことでした。

弁護士について、Cさん自身お会いになったのか、お聞きしましたが、経営者の知り合いの弁護士らしく、会ってもいないし名前も聞いていないと言っていました。結局、弁護士はドッグランのお客さんの一人でした。

噛んだワンチャンの飼主のBさんから電話がありました。私の犬がかかっている動物病院に今日行き、事情を知ったそうです。
それまでは、あまり深く内容を知らなかったらしく、一昨日(8日)に咬傷事故について、動物管理センターから葉書が来ていて連絡をし、そこで概略を聞き、初めて分かったようです。遅れてしまいましたが、申し訳なかったと謝罪の言葉を頂きました。
そして、昨日届いた手紙について、FAXをして見て頂きました。突然のことなので、かなり戸惑っていましたが、書状を見て内容を確認していただきました。
もし、ドッグランの経営者Dさんが治療代を払わないのであれば、自分の犬なので治療代は自分が責任を持ちますと言っていただきました。事情をすべてお話したので、ドッグランの経営者DさんとCさん、Bさんで結局どうするのか、ドッグランの経営者Dさんには責任を問わない方向で、BさんとCさん側は、納得できるのか一度きっちりと話合いをして頂いてからもう一度私のほうに連絡をいれていただくことになりました。

それで、Bさんにドッグランについて聞いてみるとドッグランの経営者Dさんが、Bさんの家に出張訓練という形でラブラドール犬Hをしつけに行っていたそうです。3週間前からだそうなのですが、週一回のペースで、それも、5月7日(日)にも3回目の訓練に行ってたそうです。
それにもかかわらず、Dさんは咬傷事故の詳細を言わなかったのです。ただ、噛みはしたけど特に命に別状はないから、大丈夫とだけ言っていたそうです。
 

問題点

1. 書状は、咬んだ犬の飼い主Bさんが書いたものではなかったことが判明。Bさんはこのような文書が出ていることも知らなかった。
 



事故後の顛末-4

あれから、ラブラドールの飼い主のBさんと5月15日会いまして話をしました。Bさんから、治療代を全額払いたいという意向もあり、治療代は全額払っていただきました。
動物管理センターから、被害者の方に対する対応をどのような形でとられたかということを、報告書にまとめて提出しなければならなかったので、急いでいたようなのです。私としては、Bさんから、治療代を頂こうとは思っていなかったので、そのように言いましたが、Bさんのほうから自分の犬のことなので、支払いますということで治療代の全額を頂きました。

Bさんの方から、ドッグランの経営者Dさんに電話をして、今回のことについてどのように考えているか聞いたそうですが、ドッグランの経営者Dさんは自分が窓口として対応すると言っていたのに、勝手に私たちとBさんが、話し合いをしたことについてかなりご立腹していたそうです。
あくまでも、私たちの犬(P)についての、飼い主責任を追及しないのはおかしいという姿勢を崩さなかったそうです。私たちに責任があると言いたかったらしいのです。
しかし、Bさんに対しては、「リードを持っていたことについては、道義的責任をとる」と言ったらしく、Bさんから、「それではその道義的責任とは、具体的にどのように責任をとってくれるのですか?」
と聞くと「はっきりいってください、お金でしょ?」と強い口調で言われたそうです。
Bさんも、「払っていただけるんですか?」と聞くと、「全額ですか?」と言われたので、「それじゃ、半額でいいです」と言い、銀行に振り込んでもらうことにしたそうです。

私たちにしてみれば、あの時謝罪してくれて、病院も紹介して下されば、こんなことにはならなかったし、お互いにしこりも残らなかったと思うのです。結局、最後まで経営者Dさんからは謝罪の言葉はいただけませんでした。

一応、弁護士さんにも相談してみましたが、あくまでもBさんとドッグランの経営者Dさんは、私たちからみれば、加害者ですので、誰が支払おうが治療代をもらった時点でこの問題は終了してしまうそうです。

ということでこの咬傷事故は示談という形で解決いたしました。 


さて、この顛末記を読まれた方は、どのように感じられたでしょうか?

●一番の問題は、大型犬・小型犬が同じ広場で遊んでいることでしょう。咬傷事故は小型犬同士でも、大型犬同士でも起こります。しかし、大型小型の犬種が一緒の場合、大きさによって運動量も違います。大型犬は園内を大きく走ります。小型犬がその合間を遊んでいるという状況は、ぶつかったり、蹴飛ばされたりと大変危険な状態です。

●犬は信頼する飼い主と共にいることで安心しているのです。信頼関係のない人と一緒に、初めて行く場所では、その人がどんなに犬の扱いが上手な人であっても、犬に安心感を与えてはあげられません。

●飼い主さんは絶対に自分の犬から目を離してはいけません。いくら囲われた安全な場所でもです。

●犬同士を近づける場合、まずは飼い主さん同士が挨拶し、お互いが安全であるという行為を示しましょう。その後犬同士を近づけましょう。犬同士威嚇するつもりではなくとも、個々の犬の性格によって異なります。誰にでも愛想の良いワン、臆病なワン、シャイなワン、積極的なワン 等々です。
愛想の良いワンは、みんなお友達と、どんなワンにも近づいて行ってしまうことがあります。臆病なワンはただそれだけでびっくりする事もあるのです。咬むつもりではなくとも傷つけてしまうこともあります。

●はじめてドッグランを利用する場合、先に入園していた犬達に、まず一度リードをつけて貰うか、新しいワンが入園しますから自分のワンから目を離さないで下さい。というようなコーションを必ずしなければなりません。

●このような事故の後は、当事者同士がお互いにどれだけ誠意を示せるかと言うことになるのではないでしょうか?AさんBさんの間は、誠意が感じられました。
 

これから、日本のあちこちでドッグランが出来てくるでしょう。このような咬傷事故は起きて欲しくありませんが、絶対ないとは言い切れません。この顛末記はドッグラン経営の為の注意事項として是非参考にしていただきたいものです。
また利用者の方には、ドッグランを利用するには、しつけをし、ある程度社会化された犬でなければなじまないことを理解し、ただ囲いがある場所で走らせることが出来るからと言って安易に利用することは周りの方に迷惑であることを知りましょう。(20 Jun, 2000)(LIVING WITH DOGS)
LIVING-WITH-DOGS
読者の方からコメントをいただきました。”ドッグランについて語る”のページへ

□該当ドッグラン経営者からの当事故に関するコメントが以下の掲示板にありましたので、ご参考としてください。(2000/06/25追記)
http://www.cr-jams.com/dog/
<BBS> デジワン犬倶楽部伝言板
2000/06/04 No.3661

参考文献

■損害賠償義務者(愛玩動物飼養管理士教本)より引用
動物の飼い主は「相当ノ注意」を払ったことの証明がない限り、その責任をまぬがれることができない(民法第718条第一項ただし書き)。その証明は飼い主が負う。「相当の注意」とは、動物の飼養、管理上通常払うべき程度の注意義務を意味し、異常な事態に対処し得べき程度の注意義務を課したものではない(昭和37年2月1日最高裁判決)
 -中略-
しかしながら、動物による事故が増加するに従い、平素、性質が温順で過去に人畜に危害を加えたことのないような動物であっても、何らかの拍子で傷害を与える危険性を秘めた危険物であるという観念が次第に一般化し、今日では、そのような万全の手段をとることが、動物の飼い主に要請される「相当ノ」注意義務であると考えられるようになってきている。

■ペットの法律全書(有斐閣)より引用
ペットが他人に加えた損害に対して損害賠償の責任を負わなければならないものを、単に、ペットの所有者である飼い主にとどめず、ペットの占有者すべてに広げている。
(判例として)
預けられたドーベルマンが車から逃げて子供に重症を負わせた事故では、飼い主も含め、その場で事実上支配している者が責任を負うとあります。預かりものだという弁解は役に立たないわけです。

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