フォスターファミリー体験記 – Beni(3)

フォスターファミリー体験記 – Beni(3)

Beniが返されてきたときの問題点を整理すると、
1)閉じ込められることへの不安
2)散歩中の攻撃性
3)車酔い

1)に関しては、トイレトレーニングを集中的にすることで、閉じ込める必要をなくそうとしました。がんばった甲斐あって、トイレが完全にできるようになったので、閉じ込められた不安から来る失禁も解決しました。
2)については、Beniが自制できなくなる相手(人間や犬)との距離を見極め、そうなる前に方向転換したり、通りの反対側に渡るという方法を取りました。つまり彼女が理性を失ってコントロールできなくなる精神状態になるべくさせないことで、問題を避けるようにしたのです。とはいえ、いきなり角を曲がったところに人や犬が現れたり、うちの3匹プラスBeniを連れての散歩はいろいろ手こずることもありました。そして私の不注意から間違って噛まれることも何度かありました。でもBeniは私を噛もうとして噛むのではないことを充分承知しているので、彼女のことを怖いと思ったことはただの一度もありませんでした。
3)については、とにかく短い距離で楽しいところに頻繁に連れ出すことに専念しましたが、この問題に関しては、その後もしばらく治ることはありませんでした。最終的には、助手席にBeniを乗せ、「伏せ」をさせ続けることで彼女をある程度落ち着かせる訓練が一番役に立ちました。
これらの問題すべてに関して言えることは、Anxiety(不安)がその根本にあることです。他の犬や人間への攻撃性も、未知のものに対する不安が原因です。ましてやオフリードでは初対面の犬とでもほとんど共存できるのに、リードにつながれている場合のみ、過度の反応をしてしまうのは、逃げ場がないからアタックするしかないという「Flight or Fight(逃げるか戦うか)」の二者選択を強いられてしまうからでしょう。
いずれにしても彼女の自信を高めるために、トレーニングを行うことにしました。最初のうちはPetsmartのトレーニングクラスに連れていったのですが、車に10分乗るだけでヨダレと嘔吐。クラス中は、他の人間がいるだけで教室の隅でガタガタ震えてしまうため、トレーニングになりませんでした。

そこで自宅で私が基本的なコマンド(Sit, Down, Stay, Wait, Leave it, Come, Watch me, Shakeなど)を教えました。Beniは頭のいい仔です。気分が落ち着いているときには、学習能力は高く、トリートにもよく反応するので、簡単にいろいろ教えることができました。結局Prozacの効果がどの程度あったのかは不明ですが、不安になる要素を除くことと日々のトレーニングで自信を高めることで、返されてきた当初のような問題だらけの犬ではなくなりました。とは言っても、相変わらず人間と未知のものへの恐怖は以前と変わらず、恐怖が攻撃性となって現れることがしばしばありました。その例として次のエピソードを紹介しましょう。

Beniが返されてきて2ヶ月近く経った1月27日夜、娘の咲が立ち寄りすぐに帰りました。来た時にもひどく怯えて吠えていたBeniでしたが、彼女が帰ったあと居間の暗闇に向かって後ずさりしながら神経質に吠えまくりました。主人と私は訳が分からず居間の電気をつけてみると、咲が忘れていったコートがそこにありました。Beniはこの「異物」に向かって吠え立てていたのです。この家に属していない匂いに反応していました。すぐにこのコートを廊下の奥にある洗面所に入れると、今度は洗面所のドアに向かって吠えまくりました。とうとう外の車の中にコートを入れ、やっとBeniが落ち着きを少し取り戻しました。それにしても、どうしてこれほどまでになじみのないものに恐怖を抱いてしまうのか。それからも、何度かBeniのこのような異常な反応を見かけることがありましたが、そのうちだんだんに程度が軽くなってきたのは、馴染みのないものでも彼女に何の危害を与えることはないことを経験から習得してくれたことと、Prozacの相乗効果かもしれません。我が家で1ヶ月2ヶ月と暮らすうちに、Beniはうちの犬や猫の仲間に入り安心して暮らせることが分かったようです。どこへ行っても、また2-3日私が留守にする間に友達の家やOFOSAに預けられても、うちへ帰るのをとても喜ぶようになりました。私達のほうもBeniの問題に慣れてきたことと、問題行動を予防する方法も習得したので、Beniがうちにいることが当初ほどストレスにならなくなってきました。

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