ランチといつまでも、いっしょに


ランチといつまでもいっしょに


ハスキー、G.R.と、人気犬種はあっと言う間に増えました。そして純血種に必ず見られる遺伝性疾患は、多くの飼い主さんを苦悩させ、愛犬との暮らしを考えるきっかけになったと言うお話を良く伺います。
ミニチュアダックスはその胴長・短足の為、椎間板ヘルニアを発症する犬も多く、また遺伝的な疾患でもあると言われています。ここ数年で爆発的に増えたミニチュアダックスの飼い主さんから貴重な体験記をいただきました。ランチ君元気に10歳をお祝いしようね。(LIVING WITH DOGS)


うちには、今年10歳になる初老犬のM.ダックスの男の子のランチがいます。10年前は、ダックスはまだブームでもなく、珍しいほうでした。横浜にあるダックスフントのブリーダーさんから来た生後50日足らずの子犬は、ほんとうに小さくて、「ダックスの形をしていない」と子ども達が言いました。生まれて間もないダックスは、顔も胴もまだ長くありません。

その日から始まったランチと私達家族の生活は、本当に楽しいものでした。でも、本当は…楽しいことばかりではありませんでした。生き物を飼う以上、大変な事、辛い事もありますが、その全てを合わせても、楽しいと言えることの方が多く、そんなランチに感謝しています。辛い事の一つに、ダックス特有の病気である椎間板ヘルニアがありました。

発病は6歳になる月でした。その頃はまだダックスは少なくて、主治医もダックスのヘルニアに慣れていなくて対処の仕方に不手際がありました。そこではめったにない様な手術を、十分に経験を持った専門医のいる大学病院等へ紹介する事もなく、自分の所で行ってしまった事に問題があったと今は思います。
手術の結果が良くなかったのです。必ず良くなるとは限らない事はわかっていましたが、経験豊かな獣医さんと、椎間板ヘルニアの手術経験のない獣医さんとでは、手術の危険性も限りなく違ったはずです。

今なら、通常1週間ほどの入院ですみますが、ランチの入院は40日にも及んだのです。いつまで経っても、神経の回復さえみせないランチを、先生もどうしたらいいのか困っていたのかもしれません。心身ともに衰弱して元の面影が消え、小さく軽くなってしまったランチを「あとは、家でリハビリをすれば歩けるようになります。気長に」と渡されたのです。

病院を出ると涙がポロポロと痛々しい背中の手術痕の上に落ちました。ランチは帰れるのを察してか、遠吠えのような声を張り上げて喜んでいましたが、その声は以前よりもずーっと弱々しいものでした。
「必ず、歩けるようにしてあげる…」

それからは、ありとあらゆる方法を試してみました。いくつもの獣医さん、大学病院を訪ねて意見を聞きました。その度にはっきりと「回復の見込みはない」と宣告されたのです。何故、手術をした獣医さんは「リハビリをすれば歩ける」なんて言ったのでしょうか。

専門医に話しを聞く度に「ここに連れて来ていれば、こんな事にはならなかったかもしれない」と専門医がいる事も知らなかった自分の無知さを後悔しました。

その後、もう一回頸椎ヘルニアを起こしました。その時は今までの全ての知識を合わせて、何が一番いいのかを考える事ができました。どんな事があっても前足は守ってあげなければならなかったので、たとえ、1%でも危険性のある手術を避け、鍼治療を試みる事にしました。手術をすれば、すぐに良くなったかもしれません。しかし、あえて根気の必要な鍼治療を選びました。

しばらくの間、毎日の通院。だんだんと回数は減りましたが、3年半経った今でも月に2回、片道1時間半をかけて通っています。信頼できる鍼の先生を探すのは大変な事なのです。
手術をせずに、歩けなかった犬達が歩いて帰る姿…ランチの下がった首が頭を上げて来る姿…信じられない様なこの回復を見ると、今度は止めるのが恐くなるのです。止めてしまって元に戻ってしまったらどうしよう。もう一度はじめから通院しなおせばいいと思うにはあまりにも大きな負担なのです。

今、ランチは家の中ではオムツをしていますが、体を引きずってですが自由に移動はできます。
外では車椅子を使い、お散歩でもほとんどの場所に行く事ができます。
みんなが「大変ね」って言ってくださいます。下半身麻痺のランチと一緒の3年半あまりの月日は大変ではなかったといえばうそになりますが、その前の6年よりもずっと距離が近くなった気がします。今はランチは私の生きがいなのかもしれないと思うほどです。どんなに大変だと思った事にもいつしか体が慣れて行くんですね。

体が不自由になって、ランチは他の犬がしないような体の動きをします。彼は彼なりに一生懸命考えて足りない分を補おうとし、目や体で訴えるすべを身に付け、そして、こちらはそのけなげさを受けとめてあげようと努力もするので、信頼関係は益々深くなっていくのでしょう。

我が家には居なくてはならない大切な、大切な家族です。

今はダックスは溢れています。ヘルニアになる子も後をたちません。近ごろの獣医さんは手際も良くなり今は麻痺してしまう子はとても少なくなりました。
しかし、大切な事は、経験豊かないい獣医さんを選ぶ事です。そして、あらゆる方法を十分に話し合って後悔しない処置をする事にあります。その為には、飼主は誤った情報に惑わされず最低限の勉強はしなくてはならないと思います。

また、LIVING-WITH-DOGSでも紹介があるような車椅子もあります。当時はずいぶん探しましたが、車椅子は見つからず、ずーっと自分で作っておりました。
このごろよくできた車椅子をHPなどでみかけるようになりましたので、ぜひランチにも用意してあげたいと思います。車椅子ばかりでなく、オムツや家の中の事、外出のこと…健康な時には考えもつかなかったことばかりです。
(2002/2/25)(東京都、山吹佳子さん通称ブルマさん) Ext_link Welcome to The Launchi’s free world

amazon.co.jpの詳細データへブルマさんとランチ君の愛の記録の本 :
いつまでもいっしょに Launch is my family
著者: 山吹佳子、出版社: 文芸社、ISBN: 4835517164、発行年月: 2001年05月、本体価格: 1,200円

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