捨て犬の運命
捨て犬の運命
メディアの影響は大きいのは当然なのですが、メディアが正しい報道を行っているかは結果からしか測れません。特にTV局の番組づくりの姿勢などは社会にどれだけ影響があるかを考えて作っているのか疑問にさえ思うことがあります。ニュースとして報道されたから生きられた犬、それは「崖っぷち犬」です。
そんな報道の中で、毎日新聞の記事はいつも真実に近い報道をしていると思うのですが、今回の「崖っぷち犬」での評論を見つけました。全国の捕獲保護された犬の生存率は平均で6%。熊本の保健所の犬は生存率が64%だそうです。(2007/2/5)(LIVING WITH DOGS)
熊本評論:捨て犬の運命は /熊本
山の急斜面で動けなくなっているところを助けられたから「崖(がけ)っぷち犬」。誰が言い出したのか知らないが、何ともうまいネーミングである。
救出劇がテレビ中継されて注目を集めた「崖っぷち犬」は先月28日、飼い主が決まり引き取られた。「リンリン」と名付けられたという。気の滅入るニュースが多い中、何かほっとする話題である。
ところが、そんな気分がぶち壊しになるような話を耳にした。「崖っぷち犬」のような例は一握りで、自治体に捕獲・保護された犬のほとんどは殺処分の運命をたどるというのだ。環境省に尋ねると、本当だった。引き取り手が現れないためである。05年度の全国の生存率はわずか6%という。
捕獲・保護される犬はどれくらいいるのだろうか。インターネットで調べると、02年度の数字で20万匹余りとあった。3年の差を承知で単純計算すると、18万8000匹が殺処分されていることになる。「崖っぷち犬」救出劇の陰に、こんな現実があったとは。
捕獲・保護されるのは飼い主の都合で捨てられた犬が大部分だ。飼い主とはぐれたり、逃げ出した迷い犬もいるが、飼育放棄された犬がほとんど。引っ越しの時に捨てたり、「飼えなくなった」と保健所に持ってくるケースもある。飼い主のエゴが殺処分につながっているのだ。
それにしても生存率6%はひどい。何とかならないものかと調べてみると、生存率が何と63%(05年度)の自治体があった。熊本市である。
同市の特徴は、犬を保護したら市のホームページで告知し、動物愛護団体の協力を得て新たな飼い主を探す会を積極的に開いていること1週間ほど観察し、大丈夫と判断したら粘り強く引き取り手を探すという。
「保護して世話すると、飼い主を何とか見つけてやりたいと思うのは人情でしょ」と市動物愛護センター。生存率が高い要因はホームページによる告知で開設した02年から上昇してきたという。
犬の捕獲・保護件数は減少傾向にあるが、それでも多くの犬が殺処分されている。どうしたら減らせるか。第一義的には飼い主のモラル向上にあるが、熊本市が教えるように、行政にも検討すべき点があるはずだ。<熊本支局長・柴田種明>
(2007/2/5)(毎日新聞記事より)