狂犬病予防ワクチン
狂犬病予防ワクチン
ある獣医が頭をひねっていた。現在海外に愛犬を連れて行くには、マイクロチップ、狂犬病ワクチン接種後の抗体の確認が必要だ。
海外転勤者家族が愛犬を連れていこうと、予防接種を行い抗体検査を行ったが、結果は抗体なし。時期をずらしてもう一度接種したが、やはり抗体は認められない。この犬は結局日本から一歩も出られず、親戚に預けられた。
何でだろうか?日本の「狂犬病ワクチンの効果」の見直しが必要ではないか?獣医師がつぶやいた。(2007/2/11)(LIVING WITH DOGS)
狂犬病ウイルスを研究する大分大助教授・万年和明さん /大分
◇実験重ね「発生ゼロへ」−−万年和明さん(57)
向き合う相手は、発病すればほぼ100%命が奪われる狂犬病ウイルス。国内では50年以上発生していないが、世界では年間約5万人の犠牲者が出ているとされる。昨年は、海外で犬にかまれた日本人男性2人が帰国後に発症・死亡し、この病が「過去」ではないことを再認識させた。「(発生を)世界で限りなくゼロにしたい」。柔和な目に力がみなぎる。
「ウイルス研究なら、エイズなどに取り組む人が多い」と認める通り、国内の研究者は「片手で数えられるほど」。一方で、狂犬病が近年発生していないのは日本を含め10カ国程度という。フィリピンなど海外での研究を通じて、患者発生が止まらない現状を目にした。「他の感染症もあり、発生が多い国で狂犬病研究が盛んとも言いきれない。自分たちの役割は小さくない」と自負する。
「一途に何かをやりたい」と学生時代から研究者を志した。大学の獣医学科を卒業し、牛などの輸入動物にウイルス感染がないかを調べる7年半の旧農林省の検疫所勤務を経て、研究生活へ。
「いつの間にか、どっぷりつかっていた。目立つ研究ではないけれど、火を絶やしたくない」
現在はワクチン接種後、ウイルスに対する抗体があるかを素早く測定できるキットの開発に取り組む。「完成すれば必要以上に接種しなくて済む。費用も抑えられる」。飼い主に義務付けられながら、実際にペットへのワクチン接種がなかなか守られない国内事情への危機感もある。
測定キット以外にも「海外では質の悪いものが出回っているから」と、良質で安価なワクチンの開発なども目標に掲げる。「自己満足だけでなく、何かに貢献したい。定年が見えてくると、より強く感じる」。残り8年。研究の集大成に向け、思考と実験の日々を送る。(2007/2/11)(毎日新聞記事より)