大阪・和泉市繁殖犬(ブルセラ)について

大阪・和泉市繁殖犬(ブルセラ)について

読者の方から緊急のメールが入りました。行政が介入し、無事に犬達は生きられると思い込んだ人は私だけではないでしょう。どうにか生き延びられる犬を1頭でも多く、民間・行政が協力して救えないものでしょうか?(LIVING WITH DOGS)


大阪府の和泉市で起こった、ある問題についてご意見を伺いたくメールさせていただきました。

《経緯》
現在、大阪府・和泉市で個人経営の犬繁殖場が崩壊し、犬257頭が放置されています。
犬達が放置された原因は、昨年10月頃に妊娠犬に流産が続き、繁殖場スタッフが注意して獣医に相談したところ、繁殖場内でブルセラ病という人獣共通感染病が発症していることが判明したことが発端となり、繁殖業の存続が困難に陥ったからです。
繁殖場はすでに5年前から水道設備・浄化槽設備が使えなくなっており、上下水道も整備されていない高台の民家で260頭近い犬を飼養しておりました。
水道・電気が滞納で刺し止めになっておりますので、水については長年繁殖業オーナーが知り合いのところで水をもらい、汲んで来ることを続けていたと聞いています。
冬場などで従業員が全く来ない日は、たまに水を汲まない事もあったようです。2/20現在、水道は使用できません。タンクにつめて車で現場まで運ぶという方法が取られています。よって、現場の衛生管理は最悪の状態です。
12月に繁殖場でアルバイトしていたスタッフ女性が見かねて、複数の愛護団体に救いを求めましたが、人獣共通感染症ということもあり、応える団体はありませんでした。
フードも底を尽き、放置しておけば餓死してしまう状態を見かねて、唯一和歌山の民間愛護団体がその要請に応え、フード・バリケン・新聞紙などを現場に運び込み支援を行い始めました。
その直後、大阪府によってこの和泉市のブルセラ病による繁殖業者崩壊の事実が、外部に公表されました。

大阪府は犬の治療を行うにあたり、全頭救出の方向で治療を行うので犬の所有権を大阪府に譲渡するように提案し、民間団体から犬の所有権廃棄届けの提出を受けました。(※ただし、実際には犬の所有権譲渡について元・繁殖業者から、民間団体に譲渡するという書類が交わされておりません。よって、現在はこの所有権について行政も「管理している」形であり、宙に浮いた状態になっております。)

大阪府は環境省に依頼し、財)日本動物愛護協会の支援を受け、
(社)日本動物福祉協会
(社)日本愛玩動物協会
(社)大阪府獣医師会
(社)大阪市獣医師会
に対し協力を要請依頼し、上記4団体と、大阪府庁によって「大阪府ブルセラ病感染犬等救援本部」を立ち上げました。
大阪府庁が1/18の検査発表で、257頭中、118頭の犬が現在陽性と判定され、1/26から全頭について薬の投薬が開始されました。
大阪府が現場に立ち入ったのは1/2ですが、それから1/26の投薬開始が始まり、現在(2/20)にいたるまで現地の犬の世話(餌・水やり、糞尿始末等)は、最初にレスキューに応じた民間団体の支援者からのボランティア(ブルセラ病が人獣共通感染症である事を知った上で、自分の意思で救いたいと申し出たボランティア)によって行われています。

この間、行政の人間は毎日平均3人(多い日は5-6人)が現場に来ていますが、1/26に投薬が行われるまで、水運びなどを行う以外は現場に来て30分-1時間程で帰る日が続き、現場にはボランティアさんたちだけが残って犬の世話(犬舎の清掃・餌・給水等の世話)をされていました。
現場でも流水は一切使えず、衛生面が心配される中でボランティアの分まで行政から防護服・マスクなどの用意されたのは、ボランティアが参加することになってだいぶ経過した1/25過ぎからです。
それまでは行政は上下完全防備で、ボランティアは各個人が用意した衣類で支援物資のマスク等で参加されていました。
また、現場で参加する人間において最も懸念される感染についての対策なども、行政からの指導は、しばらく取り決めがありませんでした。この間、ボランティアは感染の危機に晒されていたことになります。
行政は今までに、ブルセラ病に最も感染しやすいと思われる、糞尿処理に関して作業したことはありません。行っているのは、排菌を止めるための投薬と、雑用(水汲み・水運び)のみです。ブルセラ感染の危機において、前線に立たされているのはボランティアの人間だといえます。
現場のボランティアは、民間愛護団体が募ったボランティアで主に形成されています。今までは8-10人という人数で、元スタッフの女性が作業分担や参加日のシフトを管理されてきました。
1ヶ月以上経過し、2月半ばになってから行政がボランティアに関して管理することを現場で発表し、2/20(火)から参加日シフトも管理され、9-17時で現場の管理が行われるという形になるはずでした。(※2/20夜現在、行政がボランティアに対して連絡をし、2/21より府庁職員が犬の世話を行うため中止と通告してきました。)
大阪府庁の救援対策本部HPでは、物資なども府庁や救援本部が積極的に行われているように書かれていますが、実際は1月半ばまで、他の病気やケガをした犬の治療の為の物資要求についてもスムーズに用意してもらうことは難しく、職員に依頼しても「会議で決定するまで保留」の状態が続き、弱っている犬やケンカで命を落とす犬が相次いだ為、現地ボランティアが各自のブログで物資の呼びかけを行うこととなり、全国の愛犬家の間でこの事件が一気に広まりました。

2/7に第二回目大阪府ブルセラ病感染犬等救援会議にて、『陽性』と判定された犬について、殺処分が決定されました。

*大阪府ブルセラ病感染犬等救援対策本部HP

また、犬の死亡内容です。大阪府と救援本部によって現場管理が行われた2/20までに、犬が既に10頭死んでおります。

1/22 エアデール・テリア:犬同士のケンカにより噛まれて死亡
1/23 ダックス:乳腺炎?衰弱死
      ラブラドール:壊れたゲージを脱走し、犬同士による噛み殺し
2/15 フレンチ・ブルドッグ子犬(陰性):ブルセラ投薬の副作用?
2/16 ダックス (陽性):発作を起こし死亡 ブルセラ投薬の副作用?
2/17 シーズー (陰性):重度の皮膚病 皮膚病が脳に感染していた
     ダックス (陽性):ブルセラ投薬の副作用?
2/19 柴犬  (陽性):死因不明
2/20 シーズー(陽性)※:ブルセラ投薬の副作用? 重度の黄疸で衰弱していた。
     ダックス(陽性)※ :衰弱、ブルセラ投薬の副作用? かなり衰弱していた。

※2/20に死亡した2頭については、前日2/19にAAとまたたび獣医師団の山口獣医師、救援本部の獣医師によって入院の必要が認められ、府内の獣医師会所属の動物病院に運ばれ入院することが認められていた。しかし、実際には現場で治療相当として当日に現場に連れ戻されており、翌日2/20ボランティアが現場についた時点で死亡していた。あきらかに獣医師の判断ミス、大阪府庁の虐待行為ともとれる。
なお、6頭中3頭現場に戻され、残る1頭のコッカースパニエルは獣医師会に所属してない府内の動物病院で入院となり、再度入院しているがかなり病状が悪化している。

*2/21 A・コッカー 2/19に入院が必用と行政側も許可し、その後なぜか現場に連れ戻され病状悪化。再度山口獣医師の診断によって、他の病院に入院していた残り1頭。

現在11頭が亡くなっています。

今までも衰弱した犬・他の病気の犬についても、府庁の動物愛護畜産課獣医師・府の獣医師会は、「排菌があるために治療が行えない。現場から出せない」という理由で、治療は行なっていません。現場においても、2/17に犬が立て続けに死亡したことでボランティアが要請したため、やっと点滴をしてもらえたり注射をしてもらえたとのことです。
それ以前は、本当に全く病気のための治療は何も行われていません。
ブルセラの投薬は、排菌を止めるためのもので、犬の為の治療薬とは異なります。1/26に投薬が開始され、6週間投薬をする予定です。
陰性・陽性も引き続き投薬が行われていますが、陽性に関しての投薬は、処分が決定した今の段階では副作用で犬が死亡することも多く、続けることによって犬の寿命を大きく左右するのです。現場から出すことはないと断言した行政なのであれば、副作用で弱っていく犬に関しては、投薬を止めてもいいのではないかと声が上がっているそうですが、行政はあくまで排菌を止めるために投薬を続けています。副作用のキツイ薬と説明があったとおり、陰性の犬も段々と衰弱してきて死亡する個体が増えています。この投薬もいつまで続くかはっきりとした説明はないようです。

現場のボランティアによると、投薬の量が曖昧との意見が持ち上がっていますが、投薬の基準は体重によるもので、目分量で行われています。レスキュー開始から現場に居るボランティアは、行政が犬の個体別体重を測るところを一度も見ていません。ですが、投薬量の基準は体重。たとえば5キロであれば子犬であろうが成犬であろうが同じ量の薬です。2種類の薬がエサのダンゴに混ぜられ投与されてます。

開業医であれば、グラム単位まで測定して個体にあわせた投薬が行われるでしょう。それが全くないということです。行政の見解は、「きちんと個体管理を行っている」というものです。

府庁の動物愛護畜産課に電話確認したところ、「本来は救援本部の有識者や獣医師多くの意見の大半が「全頭処分が妥当」と判断したのだが、今後数回の血液検査によってブルセラ菌0%の陰性犬のみ救済対象となる。陽性犬については処分する。」と聞きました。ですが、現場で陰性・陽性の犬の管理について疑問が上がっています。

ボランティアが行政の人間に確認しても、行政サイドでは最初の検査結果を信じており変更をする予定はないという見解を示されました。もし陰性が陽性と判断されていたら命が人間のミスによって消される可能性があります。もうじき2回目の陽性を判断する検査が行われるはずです。
上記のような行政の、陽性のみならず陰性犬をも救おうとしない対応に対し、不満を募らせた支援者らの抗議も要望も取り上げられない中、協力を申し出る団体がありました。
日本・海外において多くのブルセラ病犬の避妊・去勢手術治療を手がけた神奈川の
山口獣医科病院・山口獣医師が所属する「またたび獣医師団」と、大阪の愛護団体、アークエンジェルズです。


また、他の協力団体にも多く声をかけ協力をお願いしましたが、当初の民間団体は撤退し、大阪のAA(アークエンジェルズ)のみが応えた形となりました。

またたび獣医師団は、手術・治療に対する無償協力の申し出をされ、アークエンジェルズは物資支援・資金・ボランティア等の申し出を、府庁に行いましたが、「治療・協力など一切間に合っている」と断られました。
2/19に大阪現場を訪れ、大阪の愛護団体アークエンジェルズと協力して、現場の犬の治療や環境改善を訴え、難航する話し合いの末、救援本部の参与立会いのもと重症の犬6頭の入院治療を認められました。

しかし、救援本部参与が許可したにも関わらず、6頭中3頭をその日のうちに現場に連れ戻しており、翌日には3頭のうち2頭の死亡が確認されています。
重度の黄疸が出ており、生死の境にいた犬を今まで現場で放置。その後入院が決定したのにも関わらず、「特に問題ないため、現場に戻して治療してよい」との判断を下したのは獣医師会員の獣医師です。そして連れ戻したのは行政の獣医師資格を持つ職員です。
死亡したのは、ブルセラ病のためではありません。よって、直接の起因は現場に連れ戻した行政・大阪府庁にあるものです。

1/23に行われた第一回目救援本部対策会議の議事録で、「今回の結果はこれからの日本のブルセラ感染犬の処置となる』と記録されています。
今回環境省は、大阪府に日本初となる大量のブルセラ繁殖犬の対応を一任しました。大阪府の見解によって、初のブルセラ病犬の処置指針ができると明言されているのですが、今の大阪府・救援本部が犬にとっている対応に、多くの疑問の声があります。
この繁殖場で事件発覚直前までに、販売された子犬もブルセラ病陽性の可能性があるのですが、この犬達については「個人所有のものであるし、追跡調査は困難。」という理由で、追跡も行われません。
また、現場に行って犬の治療を担当している府庁の動物愛護畜産課職員も、「本来は人間に感染する可能性は極めて低く、稀なために、殺処分する必要もないと開業医だったら言うのですが」と当初発言しております。

2/20に大阪府庁は、ボランティアの現場立入り中止を表明しました。
「2/21からボランティアの現場立入りを中止。犬の世話は全て府庁職員で行う」と突然ボランティアに連絡してきたのです。
今まで一切、エサ・水遣り・糞尿の始末をしたことのない職員達が、世話をするのです。ボランティアも犬の頭数の多さから、慣れていても大変な作業であり、引継ぎなしでとても行えると思えないといいます。

今までボランティア任せであった犬の世話をまともに行えるか、投薬の副作用で衰弱している犬が増えつつあり、非常に心配されています。
過去の対応からみて、陰性・陽性の犬全てが、病気が進行・放置される危険性があります。

陰性の犬は救出であるはずですが、安心できない状態です。 たとえ陰性の犬が病気を乗り越えたとしても、陽性になるまで放置される恐れがあるとしたら。助かった犬が257頭中数頭になったとしたら。

「ブルセラ病の日本初の行政指針は、陽性が出た犬は即殺処分すべき。陰性も淘汰する」という前例が、今後当然のように広まる危険があります。そして、連鎖となって予測される問題。

ブルセラ病に対する知識が浅く、犬に対する責任意識の薄い飼い主から、飼い犬が処分・放棄されることがあるのではないか。
たとえブルセラと判断されなくとも、似た症状を示す犬がいたらそれだけで保健所に持込む飼い主も多いのではないか。
他の獣医師の方にブルセラの処分が妥当か伺いましたが、「公衆衛生の立場から言ったら、可能性が0%ではない場合、人間の安全を優先するであろうから、陽性の犬の殺処分は妥当だが、普通に家庭で飼われている犬ならば、気づいていないだけで感染している犬も全国に数%いると言われており、今までに感染例は少ない。動物愛護の立場から見たら、処分する必要はない」とお聞きしました。
犬のブルセラ菌について、下記の説明をご覧ください。

厚生労働省の発表による感染症報告数は、平成11年より平成17年までの過去7年間、国内でのブルセラ病による人間の発症報告件数は、合計3件となっています。平成14年=1件、平成17年=2件、それ以外の5年間は届出なく、ブルセラの診断報告はゼロ。
ブルセラ発症者数は、ブルセラ属として4種の細菌・牛感染が主のBrucella melitensis、・羊・ヤギ感染が主のBrucella melitensis・豚感染が主のBrucella suis・犬感染が主のBrucella canisが存在し、種によって主に感染する動物が異なります。厚生労働省の発症報告件数は、ブルセラ属性としての統計であり、種分類はされておりません。4種類全ての細菌を「ブルセラ病」として統計でカウントしています。

上記4種類の細菌の中で、一番人間の感染症状が重症化する細菌は牛のBrucella melitensisです。

犬のBrucella canisは人獣共通感染症の中でも、感染力が最も弱いといわれています。

また、バイオテロ・生物兵器として懸念されている趣がありますが、犬のブルセラ菌は生物兵器の対象ではありません。アメリカが過去に保持したブルセラ菌は豚が主感染のBrucella suisであり、アメリカで定められている感染症の取扱規約では、犬のブルセラ菌であるBrucella canisを除いて取扱いの注意が定められています。(感染レベルによって取扱いできる施設が限定されるため) 

;厚生労働省に確認済事項

また、アメリカで保持された豚が主感染のBrucella suisについても、1954年に生物兵器とされましたが1969年に保持が中止されています。

よって、犬のブルセラ菌は感染力・人から人への感染もないため、生物兵器となり得ないということができます。              

ここで動物愛護の観点から全国の皆様に、お尋ねしたいのです。

無料で治療・手術を申し出たブルセラ病の専門獣医師と、支援する国際的に活躍する獣医師団が名乗りで、物資・治療費・場所を提供するという保護団体がいるのですが、団体の諸事情はさておき、犬の処置だけを考えた場合、

それでもブルセラ陽性の処分は必要でしょうか?

また現場から出せないという理由で治療を行うことを拒否され、死につつある陰性犬の対応は、本当に妥当なものでしょうか?

今後、多くのブルセラ感染している家庭犬が安易に処分されないためにも、また、日本初の指針が全国の動物に関わる関係者の様々な意見によって、もっと深く慎重に公平に論議されるべきだと思いますが、いかがでしょうか。
犬にも人間にも納得のできる初の事例を作っていくのが、強いては皆様の家族にも優しい社会だと思うのです。 そのためにも是非、多くの皆様のご意見をお聞かせください。

ご意見はフォーラムにお寄せ下さい。(2007/2/21)(読者Aより)

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