ブルセラ病の犬達を1頭でも救いたい

ブルセラ病の犬達を1頭でも救いたい

大阪府に公開質問状を緊急に提出したグループがあります。了解を得、LIVING WITH DOGSに転載いたします。誠意ある返答を待ちましょう。(2007/2/26)(LIVING WITH DOGS)


太田房江大阪府知事殿


大阪府和泉市犬繁殖業者ブルセラ病現場の犬たちについての緊急公開質問状

 前略、

私たち「またたび獣医師団」は国内外の被災動物等の救済のため、個人の有志により立ち上げたボランティア獣医師団です。国境なき医師団の 個人版、獣医師版と思っていただければわかりやすいかと思います。(※私達と国境なき医師団は関係ありません。過去から本日現在に至るまで、私達は一切寄付金を募っておりません。)

費用は参加者持ち寄り、食費交通費は自己負担を基本としております。
ですから現在、参加者以外に寄付を募るということは一切行っておりません。
国外ではタイ、ブータン国への獣医派遣を行っております。(ブータン国派遣は外務省管轄財団法人シルバーボランティア協会、ブータン国、国連の要請によるもので、費用は個人負担と上記メンバーからの寄付、上記団体からの援助金で行われています)
参加者は日本各地でそれぞれ仕事を持っており、何かあれば現場に集まり作業を終え解散するというスタイルです。参加者は獣医、学生、社会人、主婦、動物愛護ボランティア主催者など様々です。

1月15日から大阪府が現地ボランティアと管理している所謂「大阪府和泉市の繁殖業者のブルセラ病現場の犬」については現在もまだ充分な治療と管理がなされていません。

またたび獣医師団では2月5日から大阪府に対して、またたび獣医師団の獣医長山口武雄獣医師を中心とした「またたび獣医師団大阪ブルセラ犬救命チーム」による無償治療、および全犬の無償不妊去勢手術の提供を申し出てきました。(本件に関する費用は不妊手術費用をまたたび獣医師団主宰者佐上悦子が個人負担し、薬剤費用等については山口武雄獣医師が個人負担します)

山口武雄獣医師は今まで国内外で数百頭の犬ブルセラ病陽性犬に対して不妊去勢手術と治療を施し陰性化させたブルセラ病の知識経験豊富な臨床医です。陰性化した犬が再発した報告は一例もありません。

また、山口武雄獣医は国内外で犬多頭飼育崩壊現場のレスキューに医療ボランティアとして参加しています。山口によると「このような不衛生な現場ではブルセラ病以外の病気が蔓延している場合が多い、管理者としては他の疾病の検査と治療も緊急に行うべきである。」と申しております。

2月21日に現場を視察された藤野真紀子衆議院議員も現地で直接大阪府の獣医師に対して山口獣医の治療を受け入れるよう要請しています。

(以下は現場のボランティアが書いているブログからの抜粋です。

※藤野真紀子衆議院議員は山口獣医師をよくご存知でした。 藤野先生の愛犬も山口獣医にお世話になったとおっしゃいました。 そして、府の職員に「山口先生はとても信頼の出来る方です。」と・・・ 「ブルセラの子に関してもとても知識・経験をお持ちです。」と言われました。 その山口獣医を入れなかった行政。 何かと言えば、府の獣医師会が・・・と言う。 目の前で1分1秒を争う危篤の子がいるのに冷たい言葉しか出ない。 藤野先生はその後、嘆願書を直接太田知事に渡すとおっしゃって下さいました。)

以上のようなたび重なる大阪府に対する救命医療ボランティアの申し入れに対し大阪府は「現地での治療は大阪府獣医師会と大阪府の獣医師により充分に行われております。またたび獣医師団の救命医療ボランティアは必要ありません」拒否をし続けています。しかしながら現場の状況はボランティアさんたちのインターネットのブログ等で詳しく日々紹介されており、現場の治療がなされていないことは明白です。

2月21日から大阪府はそれまで実質的に犬の管理をしてきた現場ボランティアを排除し現地内立ち入り禁止にしました。現場ボランティアはこれまで献身的に犬たちの世話をしてきました。犬たちの個体差を最も理解しています。ボランティアを排除することは即ち本件犬たちの管理がさらに不十分になることは明らかです。またボランテァの皆さんは「行政による動物虐待を隠蔽するためだ」と怒りの声をあげ、現地前に集まり、ボランティアの受け入れを訴えています。

大阪府は所有権を主張し陽性犬の安楽死処分を発表しています。しかし大阪府とボランティアの間には本件犬の所有権の所在に関して主張の違いがあります。つまり所有権の所在が明白ではありません。また現在、大阪府が本件犬たちの管理権を主張しています。所有権の所在が公に明白になるまでは決して陽性犬の殺処分は行なうべきではありません。大阪府は善意の管理者の義務として陽性犬を含む全犬のブルセラ病以外の疾病も含む健康管理と治療を行うべきです。また大阪府は善意の管理者の義務としてやむ終えず死亡した犬を腐敗させず適切な場所で保管するべきです。

以上の事を鑑みて以下の件を、貴殿に緊急公開質問いたします。

1.勝川主任研究員は、『2週間の治療で菌は排泄されなくなり、他の犬への感染はな
くなると考えられる』と言われていますが、もうすでに投薬から2週間以上も過ぎています。今大事なのは環境からの感染であると思われますが、衛生管理は十分行われているのでしょうか?

2.バイオセーフティーレベル3の施設で無ければ扱えないような細菌であるという事で他施設への移動を厳しく制限されておられますが、大阪府が管理しはじめ、すでに数週間。現在の施設はそのレベル3の施設と程遠い状態のままで改善がほとんどなく管理されているのは何故でしょうか?

3.森山委員は、『(人に感染したとき)症状が無ければ陽性であっても治療対象とならない』と言われており、ブルセラ(Brucella canis)は人に感染しても人の免疫に対して非常に弱い事が知られています。さらに、国の法律ではブルセラ感染症犬の殺処分を強制しておりません。それにもかかわらず殺処分しなければならない根拠は何でしょうか?

4.人への感染がどれだけ可能性が低く、病原性が低くてもゼロではない限り一般家庭に譲渡すべきではないというお考えだと思いますが、カンピロバクターやサルモネラも人畜共通感染症として知られています。ブルセラ以上に日本人の健康に影響を及ぼしています。こういった細菌も免疫力の低下した人には重篤な症状を呈すると思います。この様にブルセラ以外の病気も含め、人に感染する全ての感染症を根絶するのが大阪府の方針なのでしょうか?

5.一般臨床獣医師が家庭犬のブルセラ症を診断した際、届け出る必要はありません。通常の病気と同様治療します。大阪府の考えとしては、これら一般家庭の感染犬が治療しない場合や治療しても排菌の可能性がゼロではない場合には、安楽死を飼主に勧めるよう獣医師に対し指導するのでしょうか?また、指導しないのであればその理由は何でしょうか?
6.資金力、人、施設のある団体に管理等を任せ、大阪府として指導・監視をして行くことは出来ないのでしょうか?また出来ないならその理由はなんでしょうか?

7.笹井助教授は、『アメリカでは陽性犬は殺処分するのが主流である』といった発言を、ジョージア州の過去の例を参考にされていますが、ジョージア州のホームページ内のFact Sheet outline(based on Public Health format)のCanine Brucellosis(Brucella canis)のPDFファイル2ページ目のPrevention Measures/Control(予防対策/制御)という項目ではEradication from Licensed Facilities(許可施設からの根絶)と題して細かく説明されています。確かにその中で、『感染犬の隔離、検査、安楽死は商業的繁殖施設での病気の拡散の排除や予防の為には重要な処置である』と書かれていますが、商業的繁殖施設・・・つまりブリーディングを続け、犬を人に売り、収入を得ている施設と限定しています。このファイルのどこを見てもペットの犬も感染したら殺処分とは書いてありません。発言の基となるソースを提示していただけないでしょうか?

8.現在あの施設にいる犬達は今後繁殖に使われる事はありませんし、繁殖業者に繁殖犬と共に飼われる事もありません。私達はあの犬達を伴侶犬として捉えていますが大阪府の見解を提示してください。

9.笹井助教授は、『家畜のブルセラ症は移動制限の対象になっているので移動は慎重に行うべきである』と言われていますが、現在日本で犬は家畜とは考えられていません。確かに家畜伝染病予防法の中の届出伝染病には犬のレプトスピラ症が含まれており、犬を家畜と定義付けるのは間違ってはいない事かもしれませんが、犬のブルセラ症は届出すらする必要がありません。犬のブルセラ症が移動制限の対象になっているのであればその法的根拠を教えてください。

10.野田委員は、『全くの陰性と言えないなら、獣医師へ預けるのは難しい』と言われていますが、どういう意味でしょうか?一般臨床獣医師はブルセラ症の犬の入院治療を拒否するということでしょうか?

11.『ブルセラ陽性の犬を一生隔離して管理する事は困難』と書かれていますが、隔離しなければならない法的根拠を提示してください。セーフティーレベル3というのは細菌等を扱う実験施設の話であると解釈していますが、感染犬にも適用しなければならない法的根拠も提示してください。

12.『ブルセラ菌の排菌が限りなく抑えられた時期を見極め・・・』と書かれていますが、第1回の会議で、『2週間で排菌されなくなる』と言われています。その時期はいつだとお考えでしょうか?

13.ジョージア州のHP内のBrucellosis FAQs for Dog Ownersの2ページ目に『私の家や犬舎が汚染されたらどうやってブルセラを根絶するのですか?』という質問があり、『ブルセラ菌体は感染犬の体外に出れば強く生存しない。そして、直射日光や乾燥に弱い。ブルセラに汚染された湿った地面は乾燥させ、出来るなら消毒するべきである。消毒は次に挙げる物で効果的です;1%のハイター(次亜塩素酸)、70%のエタノール、ヨウ素/アルコール混合液、・・・』と書いてあります。大阪府は犬舎等の汚染に対して現在までどのような対策を取ってきたでしょうか?

14.一民間人の所有するブルセラ感染犬に対し、今回大阪府が乗り出すにあたった理由は何でしょうか?また、今後同じケースがあれば同様の対策を講じるのでしょうか?

15.現在大型犬にも死亡例が出てきておりますが、これら大型犬に関しても薬の過剰投与による副作用(劇症肝炎)が原因だとの見解でしょうか?また、過剰投与とは通常投薬量の何倍の投薬を死亡犬に対し行っていたのでしょうか?
同時期に複数の犬が同症状で死亡している事から、薬(毒物、劇薬、抗生剤など)、フードの問題(カビなど)、飲水の問題、ブルセラ以外の感染症などが原因として考えられるでしょうが、抗生剤以外の可能性は無いとの確認を行っているのでしょうか?

16.大阪府ブルセラ病感染犬当救援本部は動物愛護の観点から立ち上げられたとうたわれています。動物の愛護及び管理に関する法律ではすべての人が「動物は命あるもの」であることを認識し、みだりに動物を虐待することのないようにするのみでなく、人間と動物が共に生きていける社会を目指し、動物の習性をよく知ったうえで適正に取り扱うよう基本原則で定めています。貴殿の救援活動は上記の基本原則を遵守しているとお考えでしょうか?

17.本件、犬たちの飼い犬登録および狂犬病予防法に基づく予防接種はお済でしょうか?

18.また、大阪府は本件犬たちのワンライフ島田氏より大阪府に対する所有権放棄は動愛法35条に基づくものではないと答えています。本件所有権放棄を受けた大阪府の法的根拠を提示してください。

19.本件、犬たちについては大阪府がワンライフ島田氏より所有権放棄を受けたとされていますが、貴殿はワンライフ島田氏と元の繁殖業者N氏との間で交わされた契約書をご確認されましたか。

以上、十九項目です。
先にも記しましたとおり、本質問状は公開とさせていただきます。まずは私どものウェブサイトにて公開いたします。

ご多忙とは存じますが、二百数十頭の命が関わる問題です。ご返答の期限は、本状送信後2日以内とさせていただきます。万が一、何のリアクションもいただけない場合は、私どもには返答をする必要すらないと貴殿が判断されたものと受け止めさせていただきます。
また、ここで用意した質問に留まらず、貴殿の意見などをお聞かせいただくことも歓迎いたしております。つまり、上記の質問にお答えいただくことが、対話の第一歩と考えてはいますが、それは決して貴殿の自由なご意見を封じるものではありません。念のため、そのことは申し上げておきます。なお、ご返答は書面にてお願いいたします。また出来るだけ迅速に貴殿の意志を公開したいので内容をファックスまたはEmailにてご送付いただければ幸いです。
もし、2日以内にご返答が難しいようでしたらご一報ください。そのときには、相談させていただきます。

それでは、誠意あるご返答を期待しております。また、今回のことを契機に、貴殿と私どもとの間に実りある「対話」がはじまることを切に願っております。繰り返しますが、現時点では、貴殿を糾弾する意図はございません。まずは、貴殿の真意を確かめさせていただきたく存じます。

末文ではありますが、貴殿らが管理を始めてから亡くなった「死ぬべき理由の無かった犬たち」の冥福をお祈りするとともに、一日も早い陽性犬を含む全犬への正しい治療、救命を祈念いたします。

草々

平成19年2月26日


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