殺さない保健所の実現へ
殺さない保健所の実現へ
厚生労働省は捕獲した野犬や迷子犬は出来る限り殺処分せずに新たな飼い主を探すことを、保健所を運営する全国の自治体に文書で指導しました。
地方自治体の中でも岐阜県は捕獲され収容された犬達の救済を勧めています。まだ全頭救済とは言えませんが、でも40年かけて6割の救済を実現させています。他の自治体では9割が殺処分されている状況下で、やれば出来るんですね。
他の自治体もちゃんと見本があると言うことですから、でもこれから40年ではなく5年以内にまず6割を実現して欲しいですね。
岐阜県はあと数年で殺処分する犬達はいなくなるでしょう。
ちょっとあかりが見えてきたような、嬉しいニュースでした。(2007/5/26)(LIVING WITH DOGS)
岐阜は愛犬都市日本一 捨てられ、迷子…“救済”6割
保健所に連れて行かれた犬は殺される−。そんな“常識”を覆そうと岐阜市保健所が長年続けてきた地道な取り組みが成果を挙げている。運び込まれた捨て犬や迷い犬が、新しい飼い主に引き取られた割合を示す「譲渡率」が高く、6割を超えた2005年度は保健所を運営する全国105の自治体でトップ。順位は確定していないが、06年度も高率を保ち、全国平均では9割以上が「殺処分」される中、驚異的な水準を誇っている。
「不幸な犬が1匹もいなくなることを究極の目標にやってきた。こんなうれしいことはない」。今月18日。岐阜市保健所環境保健室のS獣医師(47)が目を細めた。
同保健所がほぼ月1回のペースで開いている「愛犬さがしの会」。犬を引き取りたい人と、保健所に収容された犬とのお見合いの場だが、この日の会では“引き取ってもらう”犬が1匹もいなかったのだ。1967年にこの会を開始して以来、初めての出来事だった。
ここに出される犬は、飼育放棄などで保健所に運び込まれた犬や、元の飼い主が名乗り出るのを待つために保健所で留め置く期間(公示期間)が過ぎた迷い犬など。つまり、こうした会に出す犬がいないに越したことはないわけだ。
岐阜市の取り組みは、この会を40年にわたって計400回以上開いてきたことだけではない。多くの自治体が3日としている迷い犬の公示期間も1週間と長く設定。できるだけ殺処分を避け、元の飼い主のもとに戻れる可能性を高めようとしている。期間が過ぎても飼い主が現れなかった犬でも「新しい人に引き取ってもらおうと『継続飼育』を決めたら、もらい手を見つけるまで頑張る」と佐藤さんは話す。
しかし、市の畜犬管理センターの犬舎は6匹分。犬が犬舎からあふれれば殺処分を検討せざるを得ない。このため保健所では、飼育を放棄して子犬を持ち込もうという人には、愛犬さがしの会の当日にあらためて持ち込むよう依頼。可能な限り、犬舎があふれるのを避ける努力を続けている。
併せて保健所に運び込まれる犬の数を抑えようと、子犬を運び込む飼い主に母犬の避妊手術を粘り強く勧めたり、愛犬さがしの会の参加者に「犬のしつけ教室」受講を義務付けたりするなど、地道な啓発活動を展開。運び込まれる犬の数を、2000年度の587匹から05年度は241匹にまで減らすことができた。
こうした努力が実り、譲渡率は00年度の54.7%が、05年度には61.8%に。06年度も搬入数208匹、譲渡率61.5%と高率を維持している。
動物愛護団体「ライフボート」(事務局・千葉県柏市)は、岐阜市の取り組みを「行政としてでき得る限りのことをして、他の自治体とけた違いの実績を上げている」高く評価する。
しかし“動物を殺さない市”という評判が広がることに、Sさんは「本当は『運び込まれた動物は100パーセント殺される』と思ってくれていた方がいい」と複雑な思いを隠さない。「保健所に運び込んでも助かる、と思われては飼育放棄が減らない」からだ。
厚生労働省は今月1日付で、保健所が行う犬の「処分」について、できるだけ殺さず、新たな飼い主を見つけることを考えるよう全国の自治体に通知した。岐阜市の取り組みが全国の先鞭(せんべん)に−と期待は高まるが「目標は保健所で殺される命をゼロにすること。活動に終わりはない」と佐藤さん。日本が“動物を殺さない国”になる日を待ち望んでいる。
【犬の殺処分】 全国の保健所で殺処分された犬は2005年度で約14万匹。殺処分を減らすためには、生まれてくる犬を減らすことも重要な要素となる。岐阜大応用生物科学部の北川均教授は「犬は避妊や去勢によって生殖器の病気がなくなる上、ホルモン依存性のがんにかかるリスクも低下する。雄では去勢で性格が穏和になる場合もある」と避妊・去勢手術の有用性を指摘している。
▽犬の譲渡率上位10自治体(2005年度)
(1)岐阜市61.8%
(2)静岡市44.4%
(3)横須賀市44.1%
(4)神奈川県38.8%
(5)長野県36.8%
(6)石川県35.7%
(7)愛知県34.2%
(8)函館市33.2%
(9)千葉市32.7%
(10)名古屋市32.4%
(全国平均)6.9%
【注】神奈川県は横浜、川崎、横須賀市、長野県は長野市、石川県は金沢市、愛知県は名古屋市、豊橋市、豊田市、岡崎市を除く
(2007/5/26)(中日新聞記事より)