保護犬の顛末と考察
保護犬の顛末と考察
1.保護犬を発見
今年2007年の3月28日 近所の公園の前のバス停に「2頭のミニチュア・シュナウザーらしき犬が放れている」と連絡をもらい、現場に行ってみると そこにいたのは確かにシュナウザーでしたが、一般的に見る手入れ(トリミング)をされたシュナウザーとははるかにかけ離れたぼさぼさで悪臭が漂う汚れた犬達でした。
その時すでに現場には、私に連絡をしてくれた方以外にも車で前を通りかかった方、犬のお散歩中だった方など何名かの方がいらっしゃいました。
まず私たちは、その犬達が首輪も何もつけていなかったので、首輪とリードをつけました。
犬達は初めて見る私たちに少し警戒をするものの、首輪の中に手を通して「おやつ」で誘導してあげると簡単にできました。
次に怪我や体の異常、個体の特徴などをチェックしました。その中で気になったことがありました。
この犬達の毛は伸び放題の毛玉だらけ、歯は歯石だらけ、爪は伸び放題、そしてものすごい悪臭、全く手入れをされていないのにもかかわらず、すごく人になれているということです。
その証拠に、はじめて会った私に全身をくまなくチェックさせてくれ 比較的嫌がることが多いとされる 足の裏や口の中も簡単に触らせてくれたことです。
その中で私がすごく気になったのが「悪臭と毛玉」でした。
臭いが「外の生活が長かった犬」というよりも「狭い(サークルや犬舎など)ところで長い間生活していた犬」のものでした。
わかりやすく言えば、犬特有の臭いに排泄物の臭いが混ざった臭いでした。(この臭いを嗅いで思い出したのは以前に「崩壊したドッグ・パーク」の犬達と同じ臭いでした。)
そして毛玉のでき方、この犬達は口の周り(特に唾液腺の周辺)足、おなかの下、おしりの辺りが特にひどい毛玉で、その質もただ単に毛が絡まったものではなく「固まった」という表現がピッタリとくる毛玉でした。
このような毛玉は、毛が湿った状態でなりやすいです。足先の毛はおしっこ焼け?でしょうか変色していました。
爪の伸び方からして長い間彷徨っていた可能性はないでしょうから、以上のことも踏まえて「この犬達は捨て犬だ」という判断を私はしました。
同じ犬種がオス・メスで捨てられていたことで この時点で私は「俄かブリーダー(シリアス・ブリーダーではない)が遺棄したのだ」と思いました。
と言うのも2月の中旬にも隣の区で、シーズーのオス・メスがマンションのゴミ捨て場に捨てられていたことを知っていたからです。しかしながら、この件との因果関係は今でも解らずじまいです。
2.一時預かり保護機関について
さて、私達はこの場で「この子達をどうするか?」判断をしなければなりません。
まずは 考えられるだけの「シュナウザーの飼い主さん」と「ご近所で犬を飼っている人たち」に電話連絡をしました。ですが「有力な情報」は得られませんでした。
次に、今ここにいる人たちに一時的にでも保護できないか?確認しました。
その時点では「一頭なら飼えるかも」と申し出てくれた人がいましたが「いますぐ家に連れて帰ることは無理」ということでした。
私はこの子達を何とかしたかったのですが、我が家もこれ以上犬を増やすわけにもいかず。私が下した判断は、地元の警察に連絡することでした。
「もしかしたら飼い主さんが探しているかも?」と言う期待もありましたが、この子達の状態から推測するとこの子達の飼い主が「犬の適正飼育」をしているとは考えられず「このような飼い方をするのなら、いっそのこともう二度と犬を飼わないで!」とも思いました。
犬を保護した場合に2つの選択肢があります。それは「個人や民間の動物保護団体で保護する」か、今回私が選択した「(警察に連絡後)地域の動物愛護センターで飼い主が現れるのを待つ」つまり「民間」か「行政」ということですが、「行政」を選択した場合、公示期間に飼い主が現れなかった場合、多くは「殺処分」されます。
動物愛護センターでの公示期間は、通常「狂犬病予防法」に基づき2日間です。その間に飼い主が現れなかった場合「殺処分」されるわけなのですが、今回の場合、保護したのが水曜日の夜だったので 警察から愛護センターに移送されたのが木曜日、私の住む地域の愛護センターでの公示期間は、実質4日間ですが、今回の場合は公示が始まったのが金曜日でしたので、愛護センターがお休みの土・日・祭日はその日数に含まれないため4月4日まで公示が行われました。が、やはり飼い主は現れませんでした。
「行政」といっても保健所や愛護センターの運営は国ではなく、地方自治ですので、それぞれのセンターによって対応や運営に差があります。
幸い、今回この犬たちが移送された「川崎市動物愛護センター」で保護された犬の帰還率(飼い主の元に戻る、里親に譲渡される)は、全国的に見ても高いレベルにありますが、今回のような「成犬の譲渡」は基本的に行っていません。
ですから、原則でいえばこの子達も「殺処分」の対象となりますが、事前に警察署及び愛護センターに連絡をして「殺処分」になるのなら「私が、この子達の里親になるか、責任をもって生涯飼育してくれる里親を見つけますので、殺処分をしないでください」とお願いをしました。幸いな事に、この子達には公示期間中にある愛護団体のボランティアの方から保護していただけるとのご連絡をいただけました。現在そちらの愛護団体の方が里親探しをしてくださっています。本当に感謝の気持ちでいっぱいです。
トータルでいくと随分と長い時間お話をさせて頂きましたが、愛護センター職員の方も「殺処分」なんか望んでいないのです。
各地域の愛護センター職員の方の多くは私たちと同じように、本音は無責任な飼い方をする飼い主に憤りを感じていたり、多くの子達が無事に飼い主の元に戻れるように努力しているのです。でもすべての犬達を生かせる100%の保護は出来ないところがつらく、これが責務なのです。
つまり、確かに愛護センターは保護していた「犬や猫」を最終的に処分の判断をする施設であったとしても「保健所や愛護センターの職員の方を非難する事」は見当違いですし、批判はやめて頂きたい事です。
「飼い主がわからない迷子犬」や「捨て犬」が多い、「結果的に殺処分数が多い」という事が最大の問題であって、もっと良い方法を取りたくても予算や人員の都合上「できない」愛護センターが大部分なのです。
ですが、その逆に 犬を救いたいと申し出ても「決まりなので譲渡は出来ない」と規則重視の愛護センターが存在していたり、「非人道的な行為を行っている地域」も残念ながら、まだ今の日本には存在しているのも事実です。
ですから 単純に結果(数字)だけの問題ではないのです。
これからは「内容」を充実させていかなくては、この悪循環は延々と続いていくことになるでしょう。
3.「動物愛護管理法」と「狂犬病予防法」
先月「厚生労働省は保健所職員が街頭などで捕まえた野犬や飼い主不明の犬の処分について、できる限り殺さず新たな飼い主を見つけるよう都道府県や政令市など保健所を運営する全国の自治体に文書で指導した。」とLWDの記事でも紹介されましたが 日本では現在「犬の飼育」は環境省の管轄である「動物の愛護及び管理に関する法律(動物愛護管理法)」と厚生労働省の管轄である「狂犬病予防法」によって管理されています。
近年 日本でも動物愛護の意識が高まる中、この2つの法律の解釈が「犬の生命」を考えた場合において矛盾が生じることがあります。
その根底にはこの2つの法律が施行され時代背景が大いに影響しているとも考えられます。
「動物愛護管理法」のもとになる「動物の保護及び管理に関する法律」が制定されたのは昭和48年、「狂犬病予防法」はそのずっと前の昭和25年。
どちらも、施行後に度々、一部改正されてきてはいますが「保護犬の生命」を考えた場合において最も関係してくる「狂犬病予防法 第六条(抑留)」は 「狂犬病のまん延」を主目的としているために「現代における動物愛護の精神」とのギャップを愛犬家の方なら少なからずお感じになることでしょう。
今回 厚生労働省健康局結核感染症課長より「狂犬病予防法に基づく抑留業務等について」という公示の最大の功績は「処分=殺処分ではない」ということを明言した点にあります。
また「狂犬病予防法に基づく抑留業務等について」という公示に至るまでの話し合いの中で重要だったのは 各省庁、横のつながりがあまり無いと言われる中において 環境省、厚生労働省の双方が同じ認識つまり「処分=殺処分ではない」という事を共有した点も大きな進歩であります。(2007/6/6)(神奈川県 Mさん)