オレゴン・ヒューメイン・ソサエティ訪問記

オレゴン・ヒューメイン・ソサエティ訪問記

アメリカ西海岸にあるオレゴン州、ポートランドに所用があり、この夏行ってみました。ポートランドは小さな町ですが、緑が美しく、小さな富士山のようなマウントフッドのあるとってもきれいな町です。

市内観光はほんの少ししか出来ませんでしたが、当然のようにあちこちで犬と散歩をしている人達に出会いました。郊外の滝の名所には、ラブラドールの3ヶ月のパピーがジェントルリーダーを付けてお散歩をしていました。
ダウンタウンの広場では、盲導犬がのんびりとユーザーの側でくつろいでいました。

せっかくオレゴンに来ましたので、MaxHolyNoahのママにお願いしてオレゴン・ヒューメイン・ソサエティ(OHS)にアポをお願いし訪問してみました。

日曜日の朝のオープンと同時に行ってみました。ダウンタウンからちょっと離れた郊外にオレゴン・ヒューメイン・ソサエティはあります。

案内をして下さったのは、スタッフのキャットさん(女性)です。
最初に施設の全体を見ながら説明を聞きます。

犬は現在140頭ほど収容されていますが、収容ゾーンは、4つのカラーで分けられています。


その分け方は、おおざっぱで、犬の大きさによって収容しているわけではなく大型犬もいれば小型犬も同じ部屋の各個室に収容されています。

最初の部屋にいたのは、大型犬が目立ちました。みんな一斉に自分を見てとばかりに自己主張しています。
1頭毎に犬舎がありますが、一つの犬舎毎に中央に壁があり小さなドアがあります、散歩が終わったら、手前のスペースに移動させるそうです。1頭の犬舎のスペースは縦長ですが、およそ2畳くらいのスペースでしょうか。床は掃除のしやすいプラタイルのような乾きやすい素材です。排水溝付き、犬達のマットや寝床も用意されています。そしておのおのの部屋に犬用のおもちゃも置かれていました。

大きく4つの部屋に収容されている犬達の他に、収容されたばかりの犬達のブース、病気の犬達のブースがありました。ここに持ち込まれてから仲良しになった2頭がちょっと大きめな犬舎に一緒に入っていることもあります。またすぐアドプト出来ないリトレーニングが必要と思われる犬達のブースもあります。ちょっと危険と言われるピットブルやロトッワイラーなどの犬達です。
その施設を繋ぐ屋内の広場は、アドプト希望の人達と待ちの犬が面会できる場所になっています。
この場所で、犬と人の適性を見たり、里親候補のアンケートに記入します。

犬の性格をはかる部屋。常駐獣医のいる部屋。洗濯室には犬達の毛布やマット類、おもちゃが毎日たくさん洗濯されています。犬達はいつも清潔な毛布で寝ています。
フード貯蔵庫。クレート保存庫。最後の部屋と言われる安楽死の為の部屋。
屋内にはおおよそですが、このような部屋がありました。



外には、フェンスに囲まれた小さな屋根付きの遊び場がいくつかあります。1頭ないし数頭の犬が一緒に遊びます。
この小さなドッグランだけではなく、お散歩ボランティアと一緒にリード付きでお散歩する坂道の林間コースがあります。
このコースは一方通行で犬達がすれ違うようなことがないように設計されています。1周ゆっくりお散歩して20分くらいでしょうか。


その他、ボランティアさんが協会の外に連れ出して町中をお散歩もします。各犬が朝晩のトイレ時間の他に、一日に2回の散歩と遊び時間があり、4つのカラーの部屋ごとにそれぞれの犬スケジュールが前もって決められていて、どのボランティアさんが見ても誰の散歩がまだなのか分かりやすくなっています。



OHSは、すべて個人および地元の企業からの寄付でまかなわれています。

その他に、犬の持ち込みについてはあくまでも寄付として一頭に付き45ドルから100ドルぐらい、また里親になるにはそれぞれの犬に付けられた価格(通常55ドルから300ドル)を払うことになっています。人気の高い小型犬やパピーの値段は高く、12歳以下の子供のいる家には許可できない犬種などは低い価格になっています。



常駐のスタッフはおよそ40名から50名ほど、獣医師は1名。また1000人以上のボランティアの登録があり、常に20名ほどのお散歩ボランティアが毎日携わっています。

今のところ夜間はスタッフが全員帰宅してしまうので、動物だけになってしまいますが、全室に消火用スプリンクラーが自動作動できるように付いており、地元の消防署に探知機から直接自動通報されるようになっています。
開館時間中に火災があった場合は、人間の避難のほうが先決、動物は濡れても、命は助かるでしょうと話していました。

現在隣に動物メディカル施設の建物を寄付により建設中で、これが完成すると地元の獣医学の大学生がインターンとして勉強しながら昼夜常勤するので更に安全に便利になります。

またOHSでは犬のトレーニングや、子供達に夏休みの間に犬や猫の飼いかたについて教えるサマーキャンプも提供しています。

二人のボランティアが、よく似た2頭の犬達とお散歩からちょうど帰ってきたので写真を撮らせていただきました。
この犬達は兄弟で仲良しです、一方の犬が兄弟を庇っているので、2頭一緒に飼ってくれる人を探しているそうです。

ここの犬達は、飼い主が飼育を続けられなくて持ち込んだ犬や猫その他の小動物だけです。ボーダーコリーMIX、ロットワイラーMIXやピットブルMIXが多いのには驚きました。
当日もバッグに子猫が入っている?と思われる人がオープン前から入り口にいました。

キャットさんに色々と質問してみました。

1.このシェルターでなかなかアドプトできない犬はどうするんですか?
6ヶ月間このシェルターにいた犬がいましたが、アドプトされない犬は一時預かりのボランティアの元で社会化を学びながらチャンスを待つようにします。
… そう言えば、HollyとNoahもこのケースでした。

2.他のレスキュー団体との関係は?
OHSは持ち込みが主体ですが、他のシェルターはレスキューの犬もいます。相互アどダプトが出来なかった犬を受け入れることもしています。その間では金銭のやりとりはありません。
… シェルター同士が連携して、犬のためになることを行っているんですね。

3.安楽死をするケースはどのような状況ですか?
大体は病気の犬や老犬で個人の資金で安楽死させられないので持ち込んで来ます。その頻度はそれほど多くはなく、月にないことも。
… 実際に何頭の犬が安楽死で逝っているかは確認できませんでした。

4.ハリケーン・カトリーナについて
現地に入りレスキューに協力しましたが、OHSは専門チームであることから病気の犬や問題のある犬達を、60頭ほど受け入れました。順次飼い主さんが判明し、全頭飼い主の元に戻れました。

5.どんな理由で持ち込まれるのか?
一番は引っ越し。次にしつけ出来ずに放棄する家庭犬、純血種ロットワイラーは自家繁殖の結果の不要犬、要するにバックヤードブリーダーである。
… アメリカでもバックヤードブリーダーの繁殖で不要犬が持ち込まれるんですね。

6.年間の持ち込みの数とアドプトの数?
ホームページには詳細がありますが、99パーセントの犬がアドプトされています。
殺処分を出来るだけ行わないことを目標に掲げていますので、時間がかかってもどうにか飼い主を探します。
… 日本も徐々にですが、殺処分数は減っています。でもまだまだですね。

7.アドプトの条件?
アドプトする犬達は当然ですが、避妊去勢を済ませてからとなります。また大型犬で、問題を起こしそうな犬や逃亡癖のある犬の場合、候補者の自宅に出向いて生活環境を確認してからアドプトします。

日曜日の朝に訪問にしましたので、里親候補者が家族でたくさん来ていました。犬を求めるにはシェルターから迎えることが当たり前になっているからでしょうね。

市内には、PetsMartやPetcoとありますが、町中にいわゆる生体を扱うペットショップはありませんでした。

アメリカでは闘犬やドッグレースがまだありますが、そのような犬達はOHSでレスキューはしていません。闘犬の話題からキャットさんが興味深い話をして下さいました。
オレゴンには有名なスポーツ用品の会社ナイキの本社があります。もちろんOHSのスポン サーでもあります。

ナイキが契約していたアメリカン・フットボールの選手マイケル・ヴィックが自宅で闘犬を行っていたことが明るみに出、OHSも厳しく追求し、ナイキは契約更改を破棄しました。

アメリカでは、闘犬を行っている州がまだありますが、オレゴンは動物愛護についてはオールアメリカの中でも一番進んでいる州でしょう。キャットさんはニューメキシコ州からオレゴンに来ましたが、オレゴンは動物愛護が進んでいると話していました。

2時間ほどでしたが、あっと言う間に時が過ぎました。
OHSのショップで少しでも寄付をとおもちゃやTシャツを購入しました。

キャットさんありがとうございました。またMaxHollyNoahのママさん、通訳感謝いたします。

オレゴンの動物愛護の体制は素晴らしいのですが、では日本ではどのようにしたらもっと動物愛護運動が進むのでしょうか?

日本がもしもこのような持ち込みをだけを受け入れていたら、あっと言う間にシェルターは一杯になってしまいます。
その前に地盤づくりが必要でしょう。生体を安易に購入できない環境をつくり、避妊去勢をすすめ、不要犬の数を減らさないとOHSのようにはならないでしょう。でも、いつまで地盤づくりをすればよいのか、もう待てないですよね。

地方都市ではまだ野良犬がいますから、放浪犬の捕獲で入所する犬もいますが、東京では、野良犬は減り、持ち込む放棄犬が今や主流になっています。地域別にすすめていく、まずは東京から殺処分0をめざして実行して行くしかないでしょう。
 (2007/8/14)(LIVING WITH DOGS)

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