ある地方都市の風景

ある地方都市の風景

病院の5階の窓から広がる景色を毎日見るのが日課である。

秋も深まったある晴れた朝、隣の家の庭に子猫が10匹以上、じゃれ合って遊んでいた。
真っ白な子猫、キジトラ風の子猫、親猫らしき白猫、キジトラ猫、と楽しそうに遊んでいる姿を見て微笑ましく思ったのである。その家は、一部2階建て、猫達は一階の東南に窓のある部屋にいるらしい。小さな出入り口があり、出たり入ったりとしている。窓の奥にはまだ猫がいるようだ。みんなひなたぼっこをしている。
どう見ても1頭の雌猫からの生まれた子猫達とは思えず、きっと同時期に2腹生まれたのだろう。この家には、猫の他に犬もいるらしく、1頭は足に怪我があるらしいのだが、まだ見たことはない。
植木屋を生業としているらしく、広い庭には色々な植物が植えられている。その合間を猫達は縦横無尽に遊んでいるのである。こんなにたくさんの猫達をこの家は飼っているのか。

それから数日後のある日、また朝の風景をと見てみると、子猫の姿はまったく見えない。一体、あの子達はどこにいってしまったのだろうか。

私の担当のリハビリ療法士さんに何げなく、隣の子猫の話をしてみた。
「数年前、犬の散歩で、夜、あの家の前の道を歩いていたら、何頭もの子猫が車にひかれているので、愛犬がそばに寄らないように避けて歩いたんですよ」
この道路は結構交通量があり、夜間はかなりなスピードを出している。

庭にはフェンスがあるが、猫達はこのフェンスをよじ登って遊んでいる。表はフェンスはなく、車を横に置いて、道路との境にしている。猫ならば簡単に外に出れる状況だ。

毎年のように子猫が産まれているようだ。せめても親猫の避妊手術を施してもらいたい。生まれるだけ生まれて、外に簡単に出られるような環境で交通事故に合うのをそのままにしていることを、この飼い主はなんとも思わないのだろうか。

猫を可愛がることは、生まれた子猫もすべて生かしてこそであるし、生まれないようにすることも猫の飼い主の責任である。

近所の人達は、気がついても何も言えないのだろう。誰かが言わなければ、またこの家に生まれる子猫たちは交通事故に合うかも知れない。

あの朝のたくさんの子猫たちはいったい、今どこにいるのだろうか?今年見たあの子猫たちが無事に生きていることを願う。
この地域は、あるスーパーマーケットで日曜日、子犬、子猫の里親募集が行われいる。その中にこの子猫達もいることを祈ろう。(2007/11/18)(LIVING WITH DOGS)

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