Barry Eatonの「聴覚障害犬のトレーニング」part1

Barry Eatonの「聴覚障害犬のトレーニング」part1

かつて聴覚障害を持ちながらもディスクを楽しくやっている犬がいました。わが家のトレーシーは片方の目が見えていませんでした。
障害を持つ犬の出生の原因は様々ですが、遺伝的なものもあります。安易な交配で生まれた障害を持つ犬も、別に繁殖を行わなければ生きていくのに何も不自由はないのです。犬は少しぐらいの障害はいとも簡単にクリアして、しっかり社会性を持って人と暮らせます。
「パックルールは違うのでは」と問題提起下さったトレーナーのBarry Eatonさんは、聴覚障害の犬の訓練を実施しました。
なんと、その訓練の方法をLIVING WITH DOGSに開示して下さいました。
LIVING WITH DOGSは障害犬と暮らす飼い主さんが良く訪れて下さいます。聴覚障害の犬のトレーニングに少しでもお役に立てばと思います。Barry Eatonさん、感謝いたします。(2008/1/12)(LIVING WITH DOGS)


はじめに

これから述べることは、性別年齢を問わずすべての聴覚障害犬にあてはまります。

私と家内はLadyを1988年に購入し、2002年にLadyはついに癌の病に屈服しました。その14年の生涯の間、Ladyは極めて陽気でフレンドリーで、子供を愛し、私達が飼っていたほかの2匹の犬達とも大の仲良しでした。私達はいつもゆっくり時間をかけた散歩をし、その間Ladyは走ったり遊んだりし、また私が“呼ぶ”と戻ってきて、リードをつけておとなしく歩くのでした。彼女が2歳ぐらいのとき、10匹ものアイリッシュセッターがLadyの周りにやってきて、セッターがよくやるようにLadyに飛びかかったり跳ねたりしました。彼らはただ遊びたかっただけだったのですが、Ladyは明らかに怖がってしまい、この経験はその後の彼女に少なからず影響を与えました。結果として、Ladyは知らない犬が近づいてくるのが苦手になりました。それは以外は、フレンドリーで、活発で、私達が散歩で出会うほかの犬達と同じくらい、いえ、それ以上に従順な犬でした。このようにLadyは家庭のペットとしてごく典型的な、平均的な犬でした。彼女が聴覚障害をもっていたことを除いては。

このような障害をもってはいましたが、ちゃんと耳の聞こえる犬ができることでLadyができなかったことはほとんどありませんでした。確かに訪問客があってもドアのチャイムが聞こえないため、それが分かるのに少し時間がかかりました。また食事のボウルがカチカチなる音や、ドッグフードの袋のガサガサという音が聞こえないために、食事時間に気づくのはいつも一番最後でした。しかしLadyは他の犬と同じように振る舞い、行動しまし、そして他の犬と同じくらいその犬生を楽しんでいました。

聴覚障害をもったパピーたちを当然のように安楽死させるべきかどうかについての見解は別として、現実には多くのパピーが安楽死の道を辿っているのですが、そのようなパピーが生まれ続ける以上、彼らに普通の生活をさせてあげたいと願う人たちも必ず存在するという事実に変わりはありません。そして助けを必要としているのはそのような人々と犬達なのです。世話と忍耐と適切なトレーニングを与えてあげることで、聴覚障害のあるパピーでもその一生をしっかり楽しむことができるのです。従順で、行儀のよい、そして飼い主が一緒にいることを嬉しく思えるような社会の一員に成長することが可能なのです。結局のところ、犬の耳が聞こえないということは、その犬自身にとってよりむしろ飼い主にとってのハンディキャップのほうが大きいといえましょう。

だからと言って、私は聴覚障害を持つパピーや犬のトレーニングが、耳の聞こえるパピーのトレーニングと同じくらい単純明快である(もし犬のトレーニングを単純明快と言えたらの話ですが)という印象を与えるつもりはありません。確かにそんなわけはないですね。聴覚障害の犬の飼い主には健常犬の場合よりはるかに多くの忍耐と根気が必要とされます。もし他にも犬を飼っていて、その犬が耳の聞こえる犬であるなら確かにプラスになります。なぜなら聴覚障害犬がその犬を見て覚えることができるからです(しかしこれは良いことのみに留まらず悪い習慣もまた然り!)。これは健常犬が、あなたの代わりに聴覚障害犬を躾けてくれるという意味ではありません。そうは問屋が卸しません。トレーニングの重要性は聴覚障害犬とその飼い主の間にあり、両者の間に強固な絆が存在しなければなりません。
遺伝性、先天性難聴はその差こそあれ、多くの犬種に見られます。アメリカでは70種以上の犬種にある程度の遺伝性難聴が確認されています。聴覚障害を持つパピーの多くは通常安楽死によって処分されますが、また一方で、できるだけ幸せな生涯を送らせてあげようと望む飼い主により、家庭的な環境のもとで、その命を繋げる犬達もいるのです。

まず最初にすべきこと

ブリーダーへの報告
聴覚障害を持つ可能性ある犬種のブリーダーは、生まれた仔犬達に難聴がないかをチェックすべきです。しかしもしそれと分からずにあなたがパピーを購入してしまった場合には、直ちにブリーダーに報告することにより、その聴覚障害がどこから発生したかを追跡することができます。そのパピーが部分的に難聴であった場合でもブリーダーへの報告は必須です。ブリーダーはその父犬または母犬が二度と繁殖に用いられないよう対策を講じることができるからです。

ブリーダーはそのパピーを返品してよいと言ってくるかもしれませんが、その場合ほとんどと言ってよいほどそのパピーは安楽死されることになるでしょう。そのパピーを手元に置くか、返すかの決断はあなた次第です。もしもそのパピーを手元におくと決めた場合、その購入価格の一部を返金してもらうことは不当な要求ではありません。

獣医師訪問
次にすべきことは、獣医師を訪問し診察を受け、一連の予防接種を始めてください。獣医師によっては、この聴覚障害が遺伝によるものか、あるいは耳の変形や疾患によるものかを調べるためのテストを勧めることがあるかもしれません。変形や疾患は治療が可能で回復が見込めることもあるかもしれませんが、遺伝性、先天性の聴覚障害の場合は回復はありません。

またパピーの避妊・去勢手術をなるべく早い時期に行うために、それがいつから可能なのかを獣医師と相談しなければなりません。不妊手術はこの場合不可欠です。犬に不妊手術を施すことをいまだに“残酷”だと考える人、あるいは去勢した犬を飼っていることを“男らしくない”と考える人がいるのを承知してはいますが、難聴の遺伝子を次のパピーたちに繋げてしまうリスク負うことは無謀なことなのです。

難聴のテスト
難聴のテストは獣医師が犬の背後で手を叩き、犬がそれに反応するか、あるいは反応不足かにより聴覚障害かどうかを決めていた時代から進歩してきました。今日では最新式のコンピューター技術を駆使し科学的にパピーたちをテストすることができるようになりました。Brainstem Auditory Evoked Reaction (BAER)(脳幹聴覚誘発反応)というテストはパピーが完全に聞こえないのか、あるいはある程度聞こえないのか、片方の耳だけか、あるいは両方に障害があるのかを測定することができます。このテストではパピーにヘッドホーンや小さな耳栓を取り付けて、様々な大きさの音を聞かせます。これによって電気信号が発生し、コンピューターに記録、表示されます。このテストにより、聴覚に問題があるか否か、問題のある部位、推定される原因、更に治療の可能性を特定することができます。パピーは生後5週間からテストが可能ですが、聴覚障害になりやすい犬種の犬は交配以前にテストすることが賢明であり、義務でもあります。このようなテストができる装置を備えた施設は数少ないので、最寄の施設を獣医師に紹介してもらうとよいでしょう。(2008/1/12)(Barry Eaton)

Barry Eaton’s WEB  

翻訳:MaxHolly&Noahのママ

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