Barry Eatonの「聴覚障害犬のトレーニング」part3

Barry Eatonの「聴覚障害犬のトレーニング」part3
 
コミュニケーション

コンパニオンとしての犬のトレーニングは、犬と言葉でコミュニケーションがとれるということに全面的に頼っています。それでは耳の聞こえない犬とはどのようにしてコミュニケートするのでしょうか。ここで思い出していただきたいのは、犬同士のコミュニケーションはボディーランゲージや顔の表情を使って行われるということです。犬達は他の犬や飼い主のボディーランゲージや表情を読み取ることにかけては達人です。聴覚障害犬とのコミュニケーションにはこの二つのコミュニケーションの形の他に、たぶんもっと重要と思われるハンドシグナルを加えた3種類の方法があるということになります。


ハンドシグナル

コミュニケーションの基本形はハンドシグナルです。ハンドシグナルの鉄則は次のとおりです。
Ø Consistent(一貫性があること)家族全員が同じコマンドには同じハンドシグナルを使うこと。
Ø Simple(シンプルであること)犬が理解しなければならないことは他にもいろいろあるので、複雑のハンドシグナルで犬を混乱させないこと。
Ø Clear(明確であること)犬がしっかり見えるようにハンドシグナルを使うこと。飼い主は身体からなるべく離した位置でハンドシグナルを見せることで、ハンドシグナルが飼い主の身体と見分けづらくなるのを防ぐこと。
Ø Exaggerated(身振りは大げさに)ゆくゆくは犬のリードを放して、数メートル離れた場所からでもハンドシグナルが見えるようでなければならないので、大げさで大きなシグナルを使うこと。
Ø Structured (組織化されていること)耳の聞こえる犬の場合、飼い主が例えば犬に“座れ”を“して欲しい”ときには、普通のやさしい話し方をする。その犬が“座れ”の言葉のコマンドを理解しているにもかかわらずそれに従わない場合には、飼い主は犬に座ることを“命令”するためのより強い口調を用いることができる。しかし耳の聞こえない犬にとってこのオプションはない。従ってハンドシグナルの場合は、何かを“して欲しい”時に用いる普通のシグナルと“命令する”時に用いるより強いシグナルと使い分けられるようしっかりと組織化されている必要がある。

Ø Commands(コマンド)犬に服従させたい数々のコマンドと同様、“いい仔だね”と“悪い仔だ”のハンドシグナルも用意すること。

姿勢

Ø Relax (リラックス)トレーニングを行う時には、リラックスした姿勢が大事である。犬は飼い主の緊張や心配などのちょっとした表れを読み取ってしまいがちで、その結果よい反応が期待できなくなってしまうことがある。
Ø Bending Over(前かがみ)犬によっては飼い主が犬の頭上に前かがみになると怖がるケースもあり、特に飼い主が“呼び戻す”時にそうなる可能性が高い。飼い主が前かがみになると犬は飼い主の身体の下に入りたくないために、あと数メートルというところで止まってしまうことがある。あるいは、前かがみを遊んでくれるサインと受け取ってしまい、飼い主の顔をめがけて飛びついてくることもある。犬と同じ高さになる必要がある場合には、飼い主は前かがみになるより、膝を折ってしゃがむほうが好ましい。
Ø Leaning Forward (身を乗り出す)少し前方に身を乗り出すのは、前述の何かを“して欲しい”時と“命令する”ときの2段階構成の使い分けのときに用いる方法である。犬に何かを“して欲しい”場合には、飼い主はまっすぐ立っていなければならない。犬がそのハンドシグナルの意味が分かっていながらも、故意にそのサインに従わない場合、飼い主は今度は犬に“命令”することになる。それには、前方に少し身を乗り出しながら犬の方向に一歩前に踏み出し、ハンドシグナルもいつもよりきっぱりとしたやりかたにする。

顔の表情

Ø Happy Face(嬉しい顔)ある行動をトレーニングする際に、犬がうまくできた場合は、にっこり笑って“いい仔だね”と言う。こうすると飼い主の顔が自然と明るくなり、次第に犬は嬉しげな笑った顔とうまくできたこととを関連付けることになる。
Ø Blank Expression(無表情)飼い主が犬にどのような行動を期待しているのか犬がよく分かっていない場合には、飼い主はいかなる感情も伝わらないよう無表情でいなければならない。犬にして欲しい行動を犬がまだとっていないので、飼い主は満足してはおらず、従って嬉しい微笑みは見られない。逆に犬はまだ習得の途中であり、コマンドを無視しているわけでもない。つまり飼い主は不満であるわけでもなく、従って厳しい怒ったような表情であってもならない。
Ø Scowl (怒った顔)犬がコマンドを理解していながらも故意にそれに従わないと飼い主が確信できるときのみ厳しい表情を用いる。怒った顔で、前方に少し身を出し、いつもよりきっちりとしたハンドシグナルを使うのは、犬に何かを“して欲しい”ときではなく“命令”するときである。この厳しい表情はまた、犬が何かのいたずらをしようとしている時に、それは好ましい行動でないことを飼い主が犬に知らせるときにも用いられる。

用具

私は、皮製または布製の首輪とリード、収縮可能のリード、長めのロープ、おもちゃと食べ物を用いる。成犬できちんとした躾けがなされていないため、普通の首輪やリードでは引っ張ってしまう犬の場合には、ハーネスを用いることもある。

やる気を起こさせるもの

耳の聞こえる犬の場合、犬は自分の取っている行動とそのときに飼い主が使っている音声のコマンドを関連付けて習得する。つまり犬が座るという行動をとろうとしているときに飼い主が“座れ”と言うと、犬は座る動作と、“座れ”という言葉を結びつけるわけである。しかも座ったことでトリートをご褒美としてもらえるため、犬はその行動に報いがあることを理解し、その行動を繰り返す可能性が高くなる。聴覚障害のある犬にとっても、これは同じプロセスである。ただし行動はハンドシグナルと結びつけるられる。いずれにしても犬の望ましい行動を得るためには、やる気を起こさせるもの必要がある。そしてそのために使われるものは何であれ、犬が正しい行動ができたときにはそれが褒美として与えられる。

ほとんどの犬にとって食べ物は動機付けになる。おもちゃでやる気が起きる犬もいれば、ただ撫でられるだけで意欲が起きる犬もいる。飼い主にとってまずはじめにすべきことは、何が自分の犬にとって一番の動機付けになるかを見つけることである。食べ物の場合は、普通のドッグフードは毎回食事として出されているので、それよりもグレードの高い(犬にとって)チーズやソーセージなどのようなものでなければならない。おもちゃの場合は、その犬のお気に入りのものがよいだろう。

このように犬にやる気を起こさせるものを見つけたら、飼い主は犬の注意や関心を引いたり、持続させるためにそれを利用する。これはトレーニングの本質である。飼い主が犬の注意を自分に向けることができなければ、犬のトレーニングは不可能である。(2008/1/26)(Barry Eaton)

Barry Eaton’s WEB  

翻訳:MaxHolly&Noahのママ

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