フォスターファミリー体験記 – Ruby(4)

フォスターファミリー体験記 – Ruby(4)

OFOSA(Oregon Friends of Shelter Animals)はすべてボランティアからなる非営利団体で、シェルターに保護されている動物達の生活状況の向上とアダプションの可能性を高めることを目標にしています。私がなぜこの団体を選んだかというと、たまたま私の働く会社の社員がOFOSAの会長を勤めるBill Nechakという人だったからです。奥さんのCathyが副会長でOFOSA は2002年に設立されました。

私の住むポートランド周辺には大きなペットショップのチェーン店が2つあります。PetcoとPetsMartです。HollyやNoahのトレーニングはPetsMartに通っていますが、OFOSAのメインのスポンサーはPetcoで、毎月トレーラーいっぱいの犬や猫のフード、その他の必需品を寄付してくれるほか、毎週(土)(日)正午から午後4時までビーバートンのストア内でAdoption Outreach(里親募集活動)をさせてくれているのです。そしてShirleyとの先日の電話でこの週末にRubyをPetcoに連れていくことになっていました。

ところが昨日(土)は所用のため、RubyをこのAdoption Outreachに出すことはできませんでしたが、用事が早めに終わったのでどんな状況なのか、Rubyを連れてちょっと顔を出しました。ShirleyもCathyもいて一週間ぶりのRubyとの再会を喜んでくれました。

Shirleyから聞いた話によると、Rubyはほぼ一ヶ月前に、クラカマス郡の農家の鶏小屋の下にパピーを生んで育てているところを見つけられたそうです。アニマルコントロールが呼ばれ、パピー達を守ろうとするRubyを捕獲用の棒を使って捕まえたそうです。生後2週間ぐらいのパピー達と共にOFOSAの会長宅に一旦預けられ、健康状態などをチェックされてから10日後に約30マイルほど離れたフォスターファミリーに移されました。ところがそこには2人の子供がおり、パピー達を抱えたRubyは神経質そうに子供からパピーを守ろうとして落ち着けなかったそうです。その家で10日間ほど過ごし、パピーが生後6週間ほどになって授乳を止めたので、再びOFOSAの会長宅に今度はRubyだけ戻りました。そして更に10日後の先週の(土)に私達の家にやってきたのです。

「まだ保護されてひと月ほどの間にこんなにあっちこっちに移されてRubyはかわいそうだったね」という私のコメントにShirleyはこう言いました。「そうとも限らないわよ。犬が好きでその扱いを慣れている人達にたくさん出会うことはこの仔のためになることなのよ」と。私は目からうろこが落ちた思いでした。そのとおり、Rubyにとっては今まで欠けていたかもしれない社会化のよい機会とポジティブに考えることにしました。

「明日の日曜日にはRubyのウェブサイトを見た人がRubyを見に来るから12時ごろ連れてきてね」とShirleyに頼まれました。どんな人だろう、この仔のことをしっかり分かってくれる人でなかったら断ってもらおう。それにしても来週は(木)に避妊手術があるし、引き渡すとしたら来週末ごろだろう。と私は勝手に思い込んでいました。

さて、今日はその日曜日。12時にRubyをPetco に連れていくと、すでにその家族がRubyと私を待っていました。小学校高学年と中学生ぐらいの二人の男の子とそのお母さん、そしてそのまたお母さん(つまりグランマ)です。この一月に長年飼っていたAustralian Shepherdを癌のために安楽死させ、寂しい思いをしていたそうです。子供達は犬と一緒に育ったので、犬の扱いかたをとてもよく理解しており、店内で私とRubyとその家族が一緒に車座になっていろいろ話をしました。グランマはいまもAustralian Shepherdを飼っており、お父さん(おそらく離婚しているが、アメリカでは子供達はごく一般的に行ったり来たりしている)はBlue Heelerを飼っているそうです。家族全員がHerding Dogs(家畜犬や牧羊犬)に慣れ親しんでおり、私はこの家族なら安心してRubyを任せられるし、Rubyはきっと幸せになれると思いました。とくに子供達がRubyに決めたいと言ってくれたのです。他にたくさんいたパピーやチワワやコッカースパニエルに見向きもせずに、Rubyのしぐさや表情に一月に亡くした愛犬と共通するところを見つけたようでした。そして偶然にもこの家族はうちのMaxを16年前に引き取ってきた15マイルほど離れたForest Groveという田舎町から来ていました。

私はRubyをとても気に入ってくれたこの家族にRubyに関して知っていることすべてを伝えました。スケートボードが怖いこと、見知らぬ人には警戒心が強いこと、うちの犬達の足やわたしのパジャマのズボンの裾を噛むこと、下の歯が一本ないこと、散歩のときリードをちっとも引っ張らずに2-3歩ごとに私の顔を見上げること、うちの二階を外と勘違いして粗相をしてしまったこと、ドッグフードはNutroのMaxというブランドをあげていること、“お座り”をおぼえたこと、トリートよりもボールとおもちゃのほうが好きなこと。ここで少年の顔がいっそう輝きました! “えっ、ボールが好きなの?だったら僕が毎日遊んであげるんだ!”

細かい打ち合わせをする間、私は男の子達にリードを預け、店内を散歩してくれば?といいました。二人は喜んでRubyを連れていき、おもちゃを2つ持ってきました。“ねえ、見て。Rubyはキュッキュってなるおもちゃが好きなんだよ。”って。私は少し自慢気に、ちょっと見ててと言って、おもちゃを借りてRubyに“Sit”のコマンドをしました。Rubyはちゃんと座ったので、子供達は嬉しそう。それから私はおもちゃをRubyの前に置き、“Leave it”でRubyを待たせてからOKを出しました。Rubyはこの数日のトレーニングでほかにも、投げたおもちゃを取ってきて私が“Drop it”(放せ)と言えば取らせてくれるようになっていたので、子供達は感心して見ていました。こうやってRubyがいろいろできることを見せてあげたので、あとは子供達がもっともっとトレーニングを続けて言ってくれると期待しています。二人ともとてもやさしいかわいい少年達でした。そして何よりもRubyをこんなに好きになってくれたのです。グランマはいつRubyを引き取るかをみんなで相談したいと言いました。「ほらね、うちではすべてデモクラシーで決めるのよ」と。

今度の(木)に避妊手術だからそれまでうちが預かって、その晩に引き取りに来るということに決まりそうだったのですが、下の男の子がお母さんに「ママ、その日はちょっと学校を遅れていけば、朝手術の場所に連れていけるでしょ。だったら今日からうちに連れて帰ろうよ」というので、それなら明日は祝日で学校も休みだからRubyと一緒にいられる時間が多いほど早く慣れてくれるだろうということになり、一同一致でRubyをこのまま連れて帰ることになりました。確かにグランマの言うとおり、この子達はだだをこねたりするわけでなく、理路整然と自分の思うことをしっかり言えること、そして親もその意見を尊重することに私はとても好感をもちました。この家族なら大丈夫、そんな気がしました。

でもあまりにも早いアダプションの成立に私はRubyと別れる心の準備ができておらず、不覚にも(というか恐れていたとおり)涙を隠すことができませんでした。そんなつもりで今日連れてきたのではないのに、あと一週間はRubyはうちにいるはずだったのに、せっかくこんなにうちに慣れてHollyやNoahとあんなに夢中になって遊んでいたのに、今夜もソファーで甘えさせてあげるはずだったのに。。。そんな私をみてグランマはこう言ってくれました。「ありがとう、こんなにRubyを愛してくれて。心配しないで。Rubyの近況はきっと報告するから。本当にRubyにいろいよくしてくれてありがとうね。」と。私はメールアドレスを彼女に渡しました。

家に帰ってからも、寂しくて、Rubyに会いたくて、あのお転婆娘が急にいなくなった我が家はがらんとしています。今これを書きながらもRubyのことを思うと涙が止まりません。たったの一週間しかいなかったのに、あの子の存在は私にとっては大きなものでした。

主人がそんなに寂しがっている私を見て「またフォスターファミリーになってもいいよ。君がRubyのいいところを引き出して、すっごくかわいがって躾けもよくできることが証明されたからね」と言ってくれましたが、まずは私が一時預かりの仔との別れを覚悟できるようにならなければフォスターファミリーは失格ですね。

それにしてもRubyは今頃どうしているのでしょうか。あのお転婆娘は。。。I miss you, Ruby.(2008/2/18)(Holly&Noahのママ)


 

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