フォスターファミリー体験記 – Licorice(2)
Licorice(2)
Licoはいい仔で朝まで寝てくれましたが、夜中にまたもどしてしまったようです。うちへ来てからご飯は食べていませんが、昨夜は庭に出すたびに草を食べていたので、もどしたものは草と水分だけでした。まだ外が暗いうちに早速オシッコとウンチをしてきました。朝ごはんも食欲ゼロ。いままでうちで飼った犬達はどんなときでも食欲だけは人一倍あり、ガツガツと息つく暇もなく飲み込むような食べかたなので、匂いを嗅いだだけでそっぽを向いてしまうLicoは私にとってはまるで宇宙人のように見えます。
今日は会社へは遅れて行くといってあったので朝はゆっくりして、明るくなってから庭に出てみるとさっきのLicoのウンチはなんと下痢ピーでした。そしてまたもどしました。食欲がなく、何度ももどして、下痢とくるとやっぱり心配で7時半ごろCathyのうちに電話を入れました。できたらこれから連れて来てというので、早速昨夜Licoを引き取ってきたばかりのOFOSAの会長宅へ逆戻り。
例のガレージを改造したシェルター兼倉庫兼処置室にLicoを連れて行くと、「このまままっすぐに奥の隔離室に入れて」と言われました。ガラス戸のついた隔離室の中のケージに入れて、持ってきた便のパルボウィルスの検査をしました。血便でもないし、Licoちゃんの月齢がかなりいっているので心配はないと思うけど念のためとのことでした。案の定パルボではありませんでした。パルボウィルスはドッグパークの土などにもあり、予防接種のしてある犬は免疫があるのでHollyもNoahも大丈夫だそうです。おそらく昨日の午後4時からの大きな変化 (シェルターからCathyの家に、そしてまたうちへと移動し、ケージの中の生活から2匹の犬が吠えたり唸ったりしながらレスリングしている見知らぬ家の中に連れて来られたのです)からくるストレスではないかということになりました。吐き止めの注射をしてもらい、今日は一日Cathyのうちで様子をみるから、会社からの帰りにまた引き取りにくるように言われました。
実は今日(木)は、OFOSAでは毎週、去勢・避妊の手術の日となっているのです。この家の庭には12フィートのトレーラーが止めてあり、その中でボランティアの獣医さんにより猫や犬の手術が行われます。二人の獣医さんが隔週ごとに受け持ってくれるそうです。このトレーラーのおかげで都心から離れた予算の少ないシェルターへも出かけていくことができ、増え続ける犬猫の数に歯止めをかけるのに多少なりとも役立っているそうです。田舎では不妊手術の費用を出せない飼い主やシェルターも多く、OFOSAの出張手術では一匹あたり20ドルぐらいでまかなうことができるそうです。確かにOregon Humane Societyのような立派なシェルターは特別で、シェルターの実態はまだまだ劣悪な環境にあるようです。誰かがこう言っているのを聞いたことがあります。「もし里親になるつもりがあるなら、某シェルターに行ってみるといいわよ。悲惨な状況で全部連れ帰りたくなってしまうから」と。
今日Licoを診てくれたのは、女性の獣医さんでした。看護婦のCathyのほかに獣医さんのアシスタントの男性一人とボランティアの人たちが5人ほどいました。みなランチ持参で一日がかりでやってきています。手術前後の世話のほかケージの掃除やブランケットの洗濯などをするようです。今日はRubyも避妊手術を受けることになっていたので、私が着いたときにはすでに新しい里親さんのところから連れてこられていました。Rubyの他には大きなブラックラブ、5-6ヶ月ぐらいのシェパードの仔犬、そしてRubyのパピーが7匹、猫が5匹合計15匹が今日は手術を受けることになっていました。ひさびさ(といってもたったの4日ぶり)にみたRubyはこの部屋の雰囲気に少しオドオドしていました。でも私を見て尻尾を振りながら、私のしゃがんだ膝の間に顔を埋めて甘えてくれました。幸せに暮らしているのは分かっているけれど、やっぱり涙が出て困りました。
会社が終わってからCathyに電話を入れるとLicoは今日は一回ももどしておらず、Cathyの3時のスナックのマフィンを欲しがる様子だったから、迎えに来てあげてとのことです。Rubyの飼い主さんももうすぐRubyを迎えにくるからというので急いで車を飛ばしましたが夕方のラッシュアワーで思ったより時間がかかり、とうとうRubyもパピーたちも引き取られた後でした。でもCathyの話ではRubyの新しい家族はRubyをとてもかわいがってくれていて、あの息子二人を毎朝起こすのがRubyの仕事になったそうです。本当にいい家族にめぐりあえてよかったね、Ruby。
Licoも私が迎えに行くと飛び跳ねてでてきてくれました。本当に昨日からいろんなことがあったね、でももうこれでお終い。しばらくはうちで暮らそうね。
帰宅してからHollyと一緒にお散歩に行くと、LicoもRuby同様リードを引っ張らずにいい仔で歩きます。でも食欲はまだいまいち。ご飯とチキンスープだけしか食べてくれません。これからずっと手づくりご飯になっちゃうのかな。(笑)
さてRubyといい、Licoといい、他のたくさんの里子候補たちといい、みんなこんなにいい仔たちなのに、シェルターという特殊な環境の中では怯えてしまって本来の人懐っこい性格を出せない仔達がたくさんいます。OFOSAはシェルターを訪ねたり、シェルターからの連絡により、このような里子有力候補を引き取ってはフォスターファミリーに託し、安心して里子に出せるようにリトレーニングし、週末のPetco里親募集会を催すことをその活動のメインとしているようです。
シェルターにいる仔達は、問題犬だという誤解が蔓延していると思います。問題犬で持ち込まれるケースよりも、人間側の家庭の事情で持ち込まれるケースのほうが実際はずっと多いのです。Rubyの場合は相手のオス犬ともに去勢・避妊が施されていれば7匹の予期せぬパピー達は生まれてくることはなかったでしょうし、Licoの場合は間違った家族のところで飼われなければシェルターに持ち込まれることもなかったでしょう。日本でも同様だと思いますが、保健所などで殺処分される犬猫を減らすためには、このOFOSAのように、去勢・避妊の普及とフォスターファミリーを通しての里親探しを充実させていくという対策がもっとも効果的なのではないでしょうか。
そのうちこのような非営利団体がどのようにして運営資金を調達するのかについても少し触れてみたいと思います。(2008/2/24)(Holly&Noahのママ)