ある動物管理センター職員の新たな一歩
ある動物管理センター職員の新たな一歩
収監された犬や猫を殺処分することを仕事にしていたある獣医師。殺したくて殺していたんじゃない、どうにか殺さなくても良い方法はないかとずーっと悩み続けていたことでしょう。
日本もどうにか動物愛護運動が広まりつつあり、少しづつだけど殺処分の数が減ってきています。
獣医として犬達の命を守りたいという本来の夢を再び実行しようと、55歳で心機一転立ち上がった人がいました。
これまでつらいお仕事大変でしたね、ご苦労様でした。これからは殺処分された動物達の分までたくさんの小さな命を助けて下さいね。応援しています。(2008/3/6)(LIVING WITH DOGS)
55歳の挑戦「あきらめた夢再び」
冬ごもりの虫がはい出る啓蟄(けいちつ)の5日、雪が解けてむき出しになった地面の上で、3羽のスズメがさかんに何かをついばんでいた。3月に入り時折、青空から柔らかな日の光が差し込むようになり、春の足音を感じる。
「動物が本当に好きなんだと、ここに来て分かった。動物たちと離れたくなくなっちゃったんだな」
県動物管理センター(秋田市浜田)の所長になってからSさん(55)は自分の「原点」に気づかされた。この春、定年まで5年を残して県庁を早期退職する決断をした。秋田市内の自宅を離れ、徳島県上板町に居を移す。動物病院で仕事を手伝いながら「獣医師になる」という夢を果たすため、新たな一歩を踏み出す。
十文字町(現横手市)の農家に生まれた。身近にいた豚や牛などの動物たちの面倒を見ていた獣医師にあこがれ、神奈川県の大学の獣医学部に進学した。
だが、バイクで新聞配達のアルバイト中に車にはねられ、右足のひざから下を切断した。獣医師資格を取り、研修を受けたが、義足で仕事するのは思った以上に大変だった。北海道の牧場で獣医師として働く夢はあきらめざるを得なかった。
大学卒業後は県庁に就職。2006年に県内で唯一、捨てられた犬や猫を預かる動物管理センターに配属された。犬の致死処分を行う毎週金曜日は気分が重かった。でも、40年間その現場に立ち合い続けてきた職員は最期の時まで一匹一匹の命から目をそらさなかった。その職員は犬をしつけ直して希望者に譲渡する事業を始め、少しでも命を救おうとしていた。
そんな姿を伝えようと、「命の教室」を提案した。職員らが小中高校を訪れ、センターの取り組みを紹介し、日々どんな気持ちで仕事をしているかを話す。
Sさんは、子供たちの前で、夢に破れた学生時代、「自分なんかいらない」と何度も自殺を図ろうとしたことを打ち明け、「踏みとどまったから、今の自分がいる。あの時の自分にありがとうと言いたい」と命の大切さを訴えてきた。
4月には妻Rさん(58)と、愛犬「詩音(シフォン)」を連れて徳島に行く。1年間獣医師の勉強をした後、秋田に戻り、動物病院を開くつもりだ。「命の大切さも伝え続けていきたい」。そう熱く夢を語る坂本さんの姿がまぶしく映った。(2008/3/6)(読売新聞記事より)