動物孤児院 (59)18歳以下はお断り!
18歳以下はお断り!
ピットブルは持ち込み禁止
数年前、帰国しているときに、知り合いの保護活動家から「ピットブルの子犬を保護したけれど、日本ではなかなか飼い主が見つからない。ドイツに連れて行ってもらえないだろうか? ドイツならば新しい飼い主が見つかる確立が高いのでは?」という電話をもらった。(う〜ん、困ったことになった…)。しかし、数日後、ほしいという人が現れ、千キロ近くも離れた遠い県から車で受け取りに来てくれたので、ホッとした。
実は、ピットブルはドイツのほとんどの州で危険犬種と見なされていて、ドイツへの持ち込みはできないのだ。
日本では、「どんな種類を飼おうと、それは人の自由じゃないの?」という声が聞こえてきそうだが、ヨーロッパでは日本のように「自由」ではない。(自由の意義が違うのだ。)国によって、また、国の州によって、規則が異なり、私の住む州で普通に見かけるドーベルマンを危険犬種とみなしている地方も、飼えない地方もある。
危険犬種からはずされたマスティフ種
フランクフルト市があるヘッセン州ではロットワイラーも危険犬種に指定されたので、飼い主は今年1月から6月30日まで登録をしなければならなかった。
フランクフルト市から近い、私が住む市(人口35万人)の統計では、昨年末に241頭の危険犬種が登録されていたそうだ。それが2月末には270頭になった。(7月現在では300頭以上になっているはずだ。)
マスティーノとマスティフ・ナポリターノは危険犬種からはずされた。この2種のマスティフ種は2004年から3年間にわたり、人や動物がこの犬種から噛まれたという報告がなかったからである。そもそも、その強い攻撃性のために飼育が極端に困難と見なされているマスティフ種を飼っている人はゼロに近いのだから、事件が起きるはずもない。
なお、同期間、199件の犬による噛み付き事件中、88件がロットワイラーによるものだったので、ついに危険犬種に指定されたのである。これでロットワイラーは今後1年おきに性格テストを受けさせなければならなくなった。
散歩させる人は18歳以上であること
危険犬種を飼うには、それなりの覚悟がいる。
まず、犬税が極端に割高だ。危険犬種の犬税は通常の10倍という都市が多い。しかし、私が住む市では犬種を問わず、犬税は年間、一律75ユーロ60セント(邦貨にして約9000円)である。これは、危険犬種の飼い主が犬税をごまかそうと犬種をごまかして報告しないようにする対策らしい。
また、危険犬種は避妊去勢をしなければならない。
1頭ずつしか散歩に連れ出すことができない。
前科のある人は飼うことができない。
犬を自宅の外に連れ出す人は18歳以上でなければならないし、その際、口輪をはめさせなければならない。
ドイツの動物孤児院では、危険犬種だと新しい飼い主を見つけることが難しく、何年も孤児院で過ごしたあげく、そのまま一生を終えるケースが多かった。私が住む村にも数頭いたがもう出会うことはない。制限されるようになってからすでに何年もたつので、彼らは子孫を残すことなく、天国に行ってしまったのだろう。
(写真) ドイツを代表する犬種ジャーマン・シェパードも飼育が簡単ではなく、噛み付き事件が少なくない。