犬と暮らし (3)愛犬の為のフィラリア予防

愛犬の為のフィラリア予防

4月5月は、最も動物病院が混んでいる時期です。
通常、犬は寒い時期に調子よく、暑さは苦手な動物です。春から初夏に向かい気温は上昇し、湿度も高くなり体調を崩す犬が多くなります。下痢をしたり、皮膚疾患になったり、外耳炎になったり、とその犬にとってちょっと弱いところにトラブルが出たりします。さらに、狂犬病のワクチンやフィラリアの検査などで、この時期の動物病院は混んでいるのです。

★予防することで、フィラリアから愛犬を守れます!!

さて、今回はフィラリア症(糸状虫症)について少しお話をしましょう。みなさん、フィラリアと聞けば、心臓や肺にいるそうめん状(20センチ弱から30センチくらい)の寄生虫ということはご存知だと思います。昔は予防法がなく、多くの犬がこの疾患で亡くなりました。犬の寿命が延びた一つの要因はフィラリアで亡くなる犬が減ったこともあります。今ではきちんと予防すれば100%防げる疾患です。つまり、フィラリア予防は飼い主の義務なのです。
現在の予防薬の主流は、月に1回飲ませるタイプです。各メーカーから成分の違う様々な薬が販売されています。その他6ヶ月に1度注射するタイプもあります。注射のメリットは飼い主の飲ませ忘れがないことですが、副作用の報告例などもありますので、かかりつけの獣医師と良く相談してからにするべきでしょう。

(豆知識)東京農工大の2004年9月の全国調査によると、この10年間で犬は3.3歳、猫は4.8歳平均寿命が伸びた報告されている。(注、フィラリアの予防成果だけで寿命が延びたわけではない)

★フィラリアに感染すると

心臓や肺、肝臓、腎臓などに多大な悪影響を及ぼします。
多くの場合、フィラリア症は慢性的に進行しますので、初期の段階では飼い主が気づかない事も多いのです。
飼い主が気づくのは、なぜか咳き込む様になる、散歩をやけに嫌がる、毛艶が悪くなる、食べているのに痩せて来るなどの症状が出てからです。そして、それらをそのまま放置しているとやがては腹水がたまります。腹水がたまるまで放置していると死に直結する可能性が高くなります。また、このように慢性症ではなく、急性症を起こす事もあります。急性症の場合は、いきなり血尿が出たり呼吸困難に陥ったりします。このような場合は直ちに処置をしないと危険な状態です。

★ フィラリアの感染ルート

実際どうすると感染してしまうのでしょうか?
フィラリアの成虫が産んだ子虫をミクロフィラリアと言います。ミクロフィラリアは犬の体の至る所に存在します。
蚊がミクロフィラリアの居るA犬を刺すとその蚊の体内にミクロフィラリアが入り、蚊の体で幼虫(感染幼虫)になります。そしてその蚊が再びB犬を刺しますと、蚊の中にいた幼虫はB犬の体に入り、B犬の体の筋肉の下である程度成長してから心臓や肺に移行し成虫になります。そして、成虫はまた、ミクロフィラリアを産むというサイクルです。
ちなみに予防していない犬で外飼いの場合、夏を3回超すと90%以上感染するとの報告もあります。

★フィラリア感染症の二つの検査法

フィラリアの検査には大きく分けて二つあります、一つはミクロフィラリアのいるか否かを調べる子虫検査(直接法やヘマトクリット法、その他何種類かの方法がある)です。
採血した血液の中にミクロフィラリアがいるか調べる方法ですが、この方法には盲点もあります。例えば成虫がメスあるいはオスのみだった場合、ミクロフィラリアは産まれません、つまり採血した血液の中にミクロフィラリアはいないと言う事になります。ミクロフィラリアを検出すればフィラリアに感染していることは確かですが、いない、あるいは見つからない場合、必ずしも感染していないとは言い切れないのです。
(注)検査法によって検出率の差もありコストも異なります

もう一つの方法は、検査キッドを用いて成虫が心臓などに寄生していないか調べる親虫検査(抗原検査)です。採血した血液を数滴キッドに入れ、数分後の色の違いで親虫(成虫)がいるか否かを検査します。親虫がいるという結果だった場合は、上記方法を用いてミクロフィラリアが存在していないかも続いて調べます。以前はミクロフィラリアを調べる直接検査法が主流でしたが、最近は親虫を調べる抗原検査が主流になって来ました。
余談ですが、フィラリアは猫にも感染します。東京などでは猫も予防している飼い主が増えて来ました。また、まれですが人もフィラリアに感染します。よって、治療薬として田辺三菱製薬よりスパトニン錠という人用の治療薬も販売されています。ちなみにスパトニン錠は以前毎日犬に投与していたフィラリビッツという予防薬と同じ主成分(クエ
ン酸ジエチルカルバマジン)です。

★検査の重要性

飼い主の中には「前年にきちんと薬を飲ませていたので、シーズンはじめ(投与開始時期)に検査をする必要はない」と考えている飼い主もいますが、飼い主の飲ませ忘れや飼い主が知らないところで吐き出していた、あるいは餌入れに残していたということもあります。さらに近年暖冬傾向で遅い時期でも地域によっては蚊が生息しています。 (※1)
つまり最後の予防薬の投与後に感染幼虫のいる蚊に刺されば、いとも簡単に感染してしまいます。よって、フィラリアの予防を開始する前には必ず検査する事をオススメします。
(※1)感染予想期間は、一例ですが北海道と九州では異なります。当然九州の方が遅くまで蚊が生息しています。一年中投与する場合を除き、地域の獣医師と投与期間ついては良く相談してください。

きちんと検査し、フィラリアに感染していない場合、しっかり予防さえ行えばフィラリアから愛犬を守れます。この簡単なことを怠ると、愛犬を失う事になりかねません。
検査・予防はある程度の費用が嵩むことは確かですが、フィラリアに感染して治療することになれば、その何倍もの費用が掛かります。予防は転ばぬ先の杖なのです。
飼い主として後悔しないためにも、愛犬を苦しませないためにも、必ず検査・予防はして欲しいものです。(2008/5/4(犬専門学校講師・ライター・NPO法人JAHDスタッフ 友納由美)

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