迷子ドーベルマンの保護
迷子ドーベルマンの保護
うんうんWALKの帰り道、坂道の向こうに何か黒い大きな犬。わたしの見間違えでなければドーベルマンだ。
シーズーを連れている女の人にしばらくまとわりついていて、一度去ったがまたもどってついて歩き始めたので、「この人が飼い主か」と安心したのもつかの間、なんとノーリードでこちらに向かってきた。
「落ち着いて」と自分に言い聞かせ「良い子ね。大丈夫よ」とルーシーにもドーベルマンにも話しかける。
ルーシーは自分より大きな黒っぽい犬が怖いのでわたしのほうを向いてじっとしている。
ドーベルマンは一応挨拶すると「おれ今忙しいから」とでもいうようにさっさとまた歩き始めた。
しかしどこに向かって行ったらいいのかわからずおどおどうろうろしている。車も次々に通る。
わたしの頭の中に1丁目でドーベルマンを飼っている人が浮かんだ。
大急ぎでそのお家まで向かったが、そこにはちゃんとドーベルマンがいた。
またもどりながら息子に電話してリードを持ってきてもらう。
ほどなく来た息子にルーシーとうんうんWALKのゴミを渡し、チョークリードを持ってまたドーベルマンのいたほうへ引き返した。
中年の女性がほっとしたように「あなた飼い主さん?」と聞いてくる。
「違います。でも保護しようと思って」と走る。
するとお巡りさんとさきほどのシーズーを連れた女の人がドーベルマンを捕まえようと追いかけていた。
自転車で追いかけたら逃げるにきまってる。道の角でドーベルマンが急にとまりお巡りさんを見ている。
お巡りさんはびびりきっているのが一目でわかる。片手に警防を握り、しかもリードもなにもなく素手でどうするつもりなのか。お互いにけがをして不幸な結果を招くだけだ。
「凶暴なドーベルマン」というイメージがお巡りさんの頭の中で旋回しているに違いない。
ゆっくり話しかけながら、わたしがもってきたリードでそっとつないで頭をなでるとお巡りさんはすかさず無線で「拾得物のドーベルマン、今公園サポーターとともに確保しました」と報告。ふと見たら公園で清掃していたときにつけていた公園サポーターの腕章を外すのを忘れていた。
お巡りさん、力が強そうだ、とかいうことを聞くかな、などと言いながらまだびびっている。
わたしは「交番までわたしが引いていくわ。リードもなにもないんでしょ?」というと「助かった」と本気で答えている。
お巡りさんを呼んだシーズー飼いの人は外国の人だった。彼女は朝からドーベルマンを探している人が大久保通りのほうにいた、という情報を持っていた。
交番に向かって歩きながらドーベルマンを見ていると、しっかり訓練が入った子だとわかる。
お巡りさんが「首輪がないっていうのが心配だ。」というので「わたしもそれは心配だと思う。」といった。小さいわんこが好きな様子なのでもしかしたら小型犬と飼われていたのかも。
そうだとするとよくある話なのだが小さい子を室内で飼って大きな子はじゃまになるパターン?と悪いイメージが広がる。
しかしさらに観察すると足のつめがとても短い。
かなり運動は足りていると思われる。よく擦り減っているし、筋肉もしまっており体重もちょうど良い。
お巡りさんは「なんか傷がある」というが「これは寝ダコですよ」と答えた。
交番について「すぐに水をあげて」というと留守番をしていた若いお巡りさんが良く食堂においてあるような手のひらより小さなアルミの灰皿に水を入れてきたので「洗面器で持ってこんかい」と思わず命令口調になってしまった。一緒に来た年配のお巡りさんも「どんぶりでもなんでも大きいのに水いれて」と指示。
このお巡りさんが警察に届けがでていないか、電話をあちらこちらにかけまくり始めた。まだ届はでていない、とどこも答えが返ってきた。
ドーベルマンは洗面器から思いっきり水を飲むとやっとほっとしたらしい。
お巡りさんの「お座り」の声にきちんと座ったかと思うと、二人のお巡りさんの顔をべろべろなめ始めた。次にわたしの手と顔もべろべろ。
「お前、顔きれいになったぞ」と冗談をいう余裕がお巡りさんにもでてきた。人懐っこいので安心したのだろう。
わたしはとにかく「この子は大事にされていた子で訓練も入っている。運動も足りているし人間が大好き。飼い主さんが探していたという情報があるから絶対に動管にやらないでください。処分は絶対にだめです。必ず連絡してください。わたしもお友達や獣医さんに聞きますから写真を撮ります。」といってこの子の写真をとった。
「いや奥さんよく平気だったね」というので「顔をみればわかる。この子はやさしい良い子です」と答えた。
「必ずお迎えに来るから待っててね。大丈夫よ」とわんこに告げて家に帰るみちすがらAちゃんやCちゃんのママなど友達に電話しまくる。特に訓練士をしているIママ。ドーベルマンにはしつけが入っているからだ。
E先生にも電話。これがやっぱり良かった。
E先生の患畜さんであった。
それから警察、新宿警察、E動物病院、待望の飼い主さんからわたしの携帯に次々何度も電話が入り、最終的には無事に飼い主さんのもとに戻った。
朝の7時から探していたのだそうだ。
わたしが発見したのは8時過ぎ。交番に届けて家に戻ったのは9時過ぎになっていた。
この方は室内でジャーマンシェパード、小型犬2匹、このドーベルマンの4頭を飼っており、大型犬2頭は警察犬の訓練を受けているそうだ。
また朝散歩のおりに首輪をつけようとしたらジャーマンシェパードと共にすり抜けて逃走。シェパードは呼び戻しですぐに戻ったがドーベルマンは大久保通りを渡ってしまい迷子になったという。
良く大久保通りで車に轢かれなかったものだ。
いつも息子さんがドッグランまで連れて行き、十分に走らせているそうだ。
朝すぐに新宿警察に電話をしたときは「管轄が違う」と言われたという。
そう言われた飼い主さんが次にしたのは消防署に電話をすることだった。
消防署に電話をし、ドーベルマンに追いかけられて転んだ、とか噛みつかれた(噛まない子ですが、と飼い主さん)という救急の要請は無かったか、尋ねたそうだ。そして答はない、とのことだったという。
それでもどこからも届けがでていない、という問い合わせ先からのお返事だったことを思うと、縦横の連携を取り合うこともなかなか難しいのだろう。また交番でマイクロチップの話をするとマイクロチップのことはもちろんリーダーがあることも御存知ない。
そもそも素手でドーベルマンをどう捕獲し、どのように交番まで連れて行くつもりだったのか謎である。
交番にもいざというときのためにチョークリードの1本や2本、置いてほしい。
マイクロチップのリーダーは新宿区内の獣医師ならほとんどのところが持っていると思われる。
犬の迷子に関しては警察ももっと獣医師などと連携してほしい。
リーダーで読みさえすれば簡単に飼い主がわかるのだ。
今回のように首輪をする前にすり抜けられてしまったら、迷子札も鑑札も役に立たない。
マイクロチップの普及と獣医師と交番の連携を強く思った。
今回気になったことは行政にも相談して警察にお伝えし、改善をお願いしたいと考えている。(2008/5/20)(東京都 Sindyまま)
無事に飼い主さんの元に戻ったドーベルマン、良かったですね。
黒い犬、特に大型のドーベルマンは犬を知っている人でも一見しただけで、まずは怖いと思うのが当然です。今回は、Sindyままの冷静な観察眼で、この犬の訓練性や人馴れしている性格を見抜けたので、無事に保護することが出来ましたが、一般的には、なかなか初めてのそれも闘犬種の犬には近寄れません。
さて、遺失物法の改正で、犬や猫は交番で保護預かりが出来なくなりました。しかし、新宿区の本庁では、ケージがあるそうですから一時的に保護は出来るようです。
迷子犬に出会った人は、当然のことながら、警察に通報します。出来れば発見者がその場で保護したいところですが、余分にリードを持っていることは稀です。
今回のお巡りさんは、リードも持たず、片手に警棒を持ち、素手でこのドーベルマンを捕まえようとしましたが、残念ながら、この状態では、犬は棍棒でたたかれるのでは?という恐怖感におそわれ、防衛本能でこのお巡りさんを咬むようなことになりかねません。そのようなことにならずに良かったと胸をなで下ろしたのはもちろんその場にいたSindyままでしょう。
若いお巡りさんに犬について知って欲しいと言うこともありますが、これからもあるであろう迷子犬の保護にちょっとだけ準備をしていただきたいと思います。
地域の交番に望むこと
1.迷子犬用の捕獲用リード
地域の交番に出来れば、首輪をしていない犬が迷子になっていることを想定して、チョーク式のリードの大、中、小を準備していただければと思います。
2.おやつ
迷子犬をおやつで安心させて捕獲することも必用ですから、迷子犬の捕獲の要請があったら瞬時におやつも用意できると良いですね。おやつと言っても少しのパンで良いのです。
3.近隣の動物病院との連携
また、マイクロチップを装着している家庭犬も少しづつですが増えてきました。交番にリーダーが装備されていたらもちろん良いのですが、動物病院には必ずリーダーがありますので、保護したらまずは動物病院に連絡をすること。
3.迷子犬や猫に地域のボランティアの助けを借りる
迷子犬を保護して、即日、動物管理事務所に収監することは、迷子犬に恐怖心を植え付けてしまいます。出来れば、地域で保護犬を数日間預かってくれるボランティアを数カ所用意しておくことで、保護犬の衛生状態、飼い主さんが見つかるまでの間だ安心して過ごせます。
もしも愛犬が迷子になってしまったら
愛犬に準備しておくと良いこと
1.首輪に鑑札や連絡先を書いたペンダントを装着しておく
2.首輪がすり抜けてしまうことがあるのでマイクロチップを装着しておく
迷子になってしまったら
1.動物病院に愛犬が迷子になったことを電話で知らせる
2.動物管理事務所に迷子犬になってしまったことを知らせる。区や県をまたいで広範囲の管理事務所に問い合わせる。(居住区の動管だけは横の連携がないので他県、他区にも確認をすること)
3.ご近所の犬友達に迷子になったことを知らせ、見かけたら連絡をもらえるよう手配する。
4.犬の写真、名前、性格、特徴、装着していた首輪の色、等を書いて、連絡先を書いたポスターを作成し、協力者に配る。
5.良く犬連れが散歩する町のオープン型店舗の店先にポスターを貼らせてもらう。
近ごろは、迷子犬情報をインターネットで公開している行政も出てきています。しかし万全な連絡網とはまだ言い切れませんので、念には念を入れて、地域を拡げて確認をしましょう。
(2008/5/20)(LIVING WITH DOGS)