動物孤児院 (46)公営団地も犬OK
公営団地も犬OK
ドイツでは大型犬をたくさん見かけます。ドイチェ・ドッゲ(グレートデンのドイツ版)は、「犬ですか、子牛ですか」と聞きたくなるくらい大きく、トルコ原産の牧羊犬ときたら、まるで熊です。
そのような大きな犬たちも、もちろん家族と一緒に屋内で暮らしています。家族のたいせつな一員なのですから。
公営団地だって例外でありません。「広い庭がないから大きな犬は飼えない」と信じている人にとっては、「2部屋か3部屋のアパートで、しかも公営アパートで大きな犬を飼えるなんて、ありなの?」と思うかもしれません。しかし、犬は広くて立派な庭よりも、人間と一緒にいるほうがいい、そして、人間からの愛を絶えず求めている生き物だと思いませんか。
ドイツの公営団地といえば、低所得の人たちと生活保護を受けている人たちが住む四階、五階建てのアパートです。小さな犬はもちろん、ロットワイラーや、ドーベルマン・ピンシャーといった中・大型犬を飼っている人も少なくありません。一昔前までは闘犬種のピットブルや、スタフォードシャーテリアを団地で飼っている人もいましたが、繁殖が規制された上、闘犬種の犬税が大幅に増えたせいで、飼う人はめっきり減りました。(そのために、一時期、ドイツ中の動物ホームが闘犬種で満杯状態になったことがあります)。
散歩で出会って挨拶を交わすようになった女性はシングルマザーで公営団地に住んでいます。先日会ったとき、いつも連れていた老ジャーマン・シェパードの姿が見えず、真っ白の大きな犬を連れているので、聞くと老衰で亡くなったとのこと。白い犬はカナディアン・シェパードという犬種で、「動物ホーム」で見つけたのだそうです。
日本の実家の周辺にも市営や県営の集合住宅がありますが、犬を飼ってはいけないだけでなく、「犬の散歩を禁じます」という立て札が立っています。犬が歩いてもいけない空間があるということは悲しいです。
去年でしたか、日本のある公営住宅で犬を飼っていた人たちが「犬を処分すること」という通告を受けたニュースをインターネットで読みました。その公営住宅では長いこと犬を飼うことが黙認されていたらしいのですが、「息子(娘)を処分しなさい」と言われたも同然の飼い主の人たちが本当に気の毒でなりません。ドイツで「飼い犬を処分してください」という通告を出す自治体など考えられないことです。ドイツの公営団地には一人暮らしのお年寄りも多くいて、ソーシャルワーカーが定期的にその人たちを訪問しますが、お年寄りに犬を飼うことを勧めることもあるそうです。