動物孤児院 (48)実験用ビーグルに愛を その2
実験用ビーグルに愛を その2
ギゼラ・ヴェルティヒさん(65)が実験用ビーグルの引き取りを始めたのは2年前のことです。製薬会社や化学会社の実験室から解放されたビーグルをこれまでに450頭引き取り、飼い主を見つけてあげたのです。この度、ドイツのヘッセン州から動物愛護の功労者として表彰を受けました。
ギゼラさんにとって、それは決して容易な仕事ではありませんでした。引き取るにあたって、まず実験室の人たちの信用を勝ち得ることが必要でした。会社の名前を決して公表しないという約束を守ることを会社側に信用してもらわないとならないのです。彼女は約束をしっかり守り、今年だけで300頭ものビーグルを引き取ることができたのです。
それにしてもなぜビーグルなのでしょうか?
ビーグルは性格が温和で、同性で飼っても互いに争うことがない犬種です。そして、痛みに関して他の犬種に比べて敏感でないということで、実験用に使われる9割がビーグルなのだそうです。
コンクリートの飼育場で育つビーグルたちは当然、外の世界を知ることがありません。また、トイレのしつけも当然ながらなされていません。実験室から譲り受けた後のケアと、人間へのアドヴァイスは必須です。一日中、犬につきっきりということもあるそうです。
ギゼラさんは引き取った人たちの相談相手となります。新しく実験用ビーグルの飼い主になる人は、犬に愛を注ぐだけでなく、忍耐も学ばねばなりません。そのビーグルたちが知っている世界とは、コンクリートの部屋と、薬の匂いと注射…。野原も、青空も、仲間たちとのかけっこもありませんでした。人間の愛も知らなかったのですから。
それでも実験室を出ることのできるビーグルは比較的影響の少ない薬を投与された犬たちです。エイズや癌の薬を使われた犬たちは実験室を出るチャンスもなく、安楽死させられるからです。新薬は動物実験がつきものなのです。しかし、動物愛護法のおかげで90年代からは状況が改善されてきたそうです。
ギゼラさんの愛犬イーダ(メス 今年13歳)も実験室出身です。メスのビーグルは子を産ませるために飼育されるので、お役目ごめんになるのは7、8歳です。つまり、解放されても、ほんの数年で天国に召される場合が多いのです。どんなに短い間であろうと、人間の愛を受けて天国に行けるビーグルたちは幸運なのです。
参考サイト http/www.laborbeaglehilfe.de