動物孤児院 (49)レストランのテーブルの上に犬! (in台北)

動物孤児院 (49)レストランのテーブルの上に犬! (in台北)

日本とドイツを往復する際、年に6回は立ち寄る台北。十代の頃から中国語に夢中だった私は学校の休暇ごとに台北に飛んで、ホームステイした。犬好きの私にまわりの人たちがおもしろがって教えた言葉は「香肉」!ホームステイしていた台湾人の家で飼われた犬が脱走して何日か帰ってこないと、家の人たちは「いまごろは香肉になったに違いない」と言っていた。四十年も前のことだ。
 台湾にもペットブームがやってきて、今では「夜市」と呼ばれて日本人観光客にもすっかりおなじみになったナイトマーケットで売り物の子犬を見かける。色とりどりの洋服を着せられたミニチュアシュナウザーやチワワやダックスフントたちは、親からまだ乳離れをしていないような、本当に小さな子犬たちである。犬が何よりも好きな私に台湾人の友人たちは、「犬がいるよ」と教えてくれるのだが、「見たくない!見ると買いたくなるから」と言って、反対の方向を見て歩く。3ヶ月以内の子犬を親犬から離してはならず、また、犬にストレスがかかるという理由からペットショップで犬を売ることさえ止めてしまったドイツの動物愛護家がこんな光景を見たら度肝を抜かれるだろう。
 
 実は、台湾は本当に不思議なところなのである。犬に対する許容度が、もしかしたらフランス以上に高いのでは、と思える光景に出くわすことがよくあるのだ。フランスのニースでは、スーパーで犬をショッピングカートに入れて平然と買い物する客を見たが(店の人は見ていないふりをしていた!)、台北のレストランではテーブルの上に犬を置いて食事をするファミリーを見た。みんなごく自然に食事をしていたから、それが彼らの日常だったのだろう。テーブルで、お皿をじっと見下ろす犬の表情がかわいかった。他の客も、レストランの人も何も言わないところが「すごい」と思った。それも、たまたま一度だけ見たというわけでもない。何度も見たのだ。台北のカフェで。海産物専門の、海辺のレストランで。広東料理を出すレストランで。台湾人の友人たちに、「あの犬、見て!」と言っても、彼女たちは、「ふうん。それで?」といった表情で気にも留めない様子だ。私は台湾と台湾人が大好きである。

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