小林信美の英国情報 (11)愛犬と行くヨークシャーの旅(2)

小林信美の英国情報 – 愛犬と行くヨークシャーの旅(2)

愛犬家にとって住みにくくなっているロンドンから飛び出そうということで、前回から筆者の休暇を利用した英国北部ヨークシャーへの旅について報告している。第一話は出発前夜に自宅からヨーク行きの列車の始発駅 King’s Cross までタクシーを予約しようとしたのだが、愛犬同伴という理由で予約を受けつけるタクシー会社が見つからないというところで終わった。

さて出発当日の朝が来た。言われた通り昨晩連絡しておいたタクシー会社に電話すると、今度は、予約はもう少しに後になってからでないと入れられないという返答。しかも時間ぎりぎりにならないとどの運転手が犬同伴オーケーを出すかわからないからと言い訳にもならないことを言い出す始末だ。後で電話して運転手がいなかったらどうするつもりなのだろうと思ったが、もう別のタクシー会社を探している暇はなかった。出発前にマチルダの散歩に連れて行かなければならないからだ。
散歩から戻り8時過ぎに再び電話し予約万事完了とほっと一息ついたのもつかの間。予定の時間になっても肝心のタクシーの姿は見えない。タクシー会社に確認の電話を何度入れても、とうの昔に出ているからもう到着していても良さそうだということをオウムのように繰り返すのみ。結局タクシーが我が家に到着した時はすでに9時15分を過ぎていた。前夜からあれほど苦労して予約を入れようとしていたのにと腹立ちまぎれに運転手に文句を言うと、実は営業所から電話を受けたのは9時数分前だったということがわかった。残念ながらお客様は神様だという考えが浸透していないこの国である。しかも相手は未公認のタクシー会社。文句を言おうにも未公認のタクシー会社を選んだ私が馬鹿だということになるだけであろう。それはそうと運転手は意外に気さくな男性で、ロンドンの未公認のタクシー会社で勤務する運転手は犬を不浄と考えるイスラム教徒が多いので、犬同伴だと乗車拒否をされることが多いのだと教えてくれた。ちなみに彼はナイジェリア人なのだが「キリスト教信者」だから犬はオーケーなのだという。確かにここ10年ほどの間にロンドンの人口は爆発的に増えて来ているということだが、それがこんなことにまで影響を及ぼしているとは全く知らなかった。

ラッシュアワーの交通渋滞はいつものごとくはげしいものがあったが列車出発の5分ほど前にKing’s Cross駅に着き、インディアナ・ジョーンズもどきの「間一髪」のタイミングで列車に乗り込んだ。車内はほぼ満席に近い状態だったが座席指定だったので、旅慣れた愛犬マチルダを座席の下に寝かせるとヨークまでの2時間の旅もそれほど長く感じられなかった。

ヨーク駅に着いたのは正午前。しかしレンタカーのピックアップは12時半だったので駅構内の喫茶店で一休みすることにした。喫茶店とはいえ、売店で飲み物を買い、外の座席でいただくというシステムなので愛犬同伴でもよいのである。

前述の通り、レンタカーは駅構内に事務所のあるHertz(*1)という会社から借りる段取りになっていた。予約時に愛犬同伴の件について確認していなかったので、マチルダを連れていくべきか、父と別の場所で待っていてもらうかやや戸惑った。しかし、以前この欄でも紹介した通り、スタッフォードシャー・ブルテリアは盗難に遭う危険性が高いので、老齢の父にマチルダをまかせて別行動をとるのには気が引けた。ということで思い切って父とマチルダを連れて事務所に入ってみると何の事はない,人あたりのよさそうな事務所の女性は、マチルダにはおかまいなしに予約の手続きを始めたのである。どうやらレンタカーを借りる際には犬同伴は問題にならないようである。ちなみに車は事務所から徒歩2分ほどの駅に隣接した駐車場でピックアップでき非常に便利。レンタル料はどこも似たり寄ったりなので、ヨークでレンタカーを借りるのであればHertzはオススメである。

この日は北海に面したWhitbyという町で一泊することになっていたので、途中Maltonという村の近くにあり犬同伴可の Castle Howard (*2)という18世紀に建てられた元貴族の大邸宅を訪れることにした。以下の地図を参照していただくとわかりやすいのだが、ここはヨーク市街からA64という幹線道路を使い簡単に行ける距離にある(*3)

Castle Howardはこちらの人気連ドラの撮影にも使われたことがあり、ヨーク市街からも近いということから観光客に人気の高い観光名所である。ここではバラ庭園の中を含む敷地内はリードをつけていれば犬可である。邸宅内で絵画の展覧会なども行っているのだが、残念ながら犬連れで入ることはできない。それよりも問題だったのは、敷地内を自由に歩き回っているクジャク。サイズがかなり大きいうえに縄張り意識が強いせいか、犬がいてもこちらによって来ようとしたりするので非常に厄介だ。マチルダは典型的なテリアなので人間と犬以外の生き物は大の苦手。敷地内にはカフェが2カ所あるのだがその周辺は観光客が地面に落とした食べ物を狙うクジャクがたむろしていたため,そこでお昼をいただく計画は残念ながらおじゃんになってしまった。

写真左 Castle Howard (マチルダと父)
写真右 ローズガーデン

Castle Howardは以前から父に見せたいとは思っていた所だが、ここを訪れたのは別に訳があった。実は、この夜Whitbyで宿泊する予定になっていた宿 Arches Guesthouse(*4)のオーナー夫婦が当日旅行先から戻って来る予定だが午後遅くになるかもしれないと警告されていたからだ。のんきな田舎の人たちらしく「午後には戻る予定ではおりますが、万が一留守の場合は心配しないで町の喫茶店でコーヒーでも飲んでいてください!」とあまりにもリラックスした態度。丁重なサービスに慣れている日本人にとってはサービス精神がなっていないということになるかもしれない。

それはともかく、そういうわけでWhitbyに到着した時はすでに午後6時近くになっていた。自分たちが遅くなるからと言っていた癖に私たちの到着が遅いのでオーナー夫人はややいらいらしているように感じられた。それもそのはず、我々に鍵を渡すと「これから出かけるから」とそそくさといなくなってしまったのだ。ゲストにうるさくつきまとわないといういかにも英国人らしい「もてなし」の仕方である。

さて、この Arches Guesthouse「犬とお行儀のよいオーナーのための」といううたい文句に惹かれて予約を入れたのだが「犬を部屋に置き去りにして外出しないでください」などと犬連れ客にとって予想外に厳しい注文が宿の規定の台帳に書かれているのにはいささか驚かされた。せっかく北海岸沿いに来たのだから名物のフィッシュアンドチップス(白身の魚のフライと太めのフレンチフライとでも言おうか)のレストランにでも行こうと思っていたのにがっかりである。仕方がないのでこの晩は近所の中華料理の総菜屋から夕食を買いもとめ、狭い室内での味気ない晩餐となったのだった。

写真左 Arches Guesthouse の前で。
写真右 室内(犬は専用のベッドに寝かせることとあったが、これは英国式規則の破り方の典型的な例)。

*次回、愛犬と行くヨークシャーの旅は犬の散歩禁止の Whitby の砂浜と馬力のないレンタカーで行くノースヨークシャームーア。そして今回の旅行のハイライトとも言えるHelmsleyの元貴族の大邸宅
Appleton-le-Moorsという小さな村にある犬連れ観光客にオススメの宿 the Moors Inn の話題。

参考資料:

(*1) Hertz: (http://www.hertz.co.uk)

(*2) Castle Howard: (http://www.castlehoward.co.uk/metadot/index.pl)

(*3)北ヨークシャーの地図:(http://maps.google.co.uk/maps?hl=en&q=York&um=1&ie=UTF-8&sa=X&oi=geocode_result&resnum=1&ct=image

(*4) the Arches Guesthouse: (http://www.whitbyguesthouses.co.uk/)

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