エキノコックスについて

犬の放し飼いとエキノコックス

2002年12月末に、主に室内で飼われていた犬がエキノコックス成虫に感染し、飼い主や家族への感染の可能性があった、というニュースがありました。幸い飼い主さん達は検査陰性でしたが、この病気は進行が遅いので、追跡調査が必要になると思います。

Ext_link 読売新聞の記事
Ext_link 日本獣医師会の記事

エキノコックスの生態や病原性などについては、当記事末尾のホームページを見ていただくこととして、肝心なのは、エキノコックス幼虫が寄生した野ネズミを食べたキタキツネに感染するだけではなく、同じように野ネズミを捕食した犬にも感染するという事です。(念のため補足しますと、野ネズミとはヤチネズミ、ハタネズミなど森林や野原に棲むネズミのことで、ドブネズミ・クマネズミ・ハツカネズミなどの家ネズミとは別です。家ネズミ類にはエキノコックスはほとんど寄生していません。)

普通の飼い犬が野ネズミなんか捕まえて食べるはずがないと思われるかも知れません。しかし、北海道の田舎では多くの犬が夜間、ときには日中も放し飼いになっています。そういった犬の糞を調べると、たまに野ネズミの骨・歯・毛が出て来ます。また、札幌などの都市でも郊外には緑が多く、キツネや野ネズミが多数生息しています。したがって、都市周辺でもエキノコックス寄生野ネズミを犬が食べれば、犬の体内で成虫となり虫卵をばらまいて、今度は人間が危険に曝される可能性があります。

昨年12月末の感染犬の飼い主さんは、ときどき郊外の広場や河川敷で散歩させていた(おそらく放していた?)そうで、いつどこで野ネズミを捕食したかは特定できませんが、キツネや犬にはそれ以外の経路でのエキノコックス感染はありえませんから、食べたのは確実です。

こういった危険のある地域では、ノーリードでは管理が不十分で犬が感染してしまい、さらに飼い主さんへも知らないうちに感染するという事態が起こるのでは? というのが私の懸念です。

「うちの子は呼べば戻るし、変な物拾って食べないから絶対大丈夫」という方もいらっしゃるでしょう。しかし、調査では犬の約1%が感染陽性またはその疑いがありました。愛犬の行動に少しでも不安があるなら、しっかり管理しないと、飼い主さん自身や家族、周囲の人の健康にも影響しかねないことを考えていただきたいと思います。また、エキノコックスに限らず、自然の中から色々な病気(例えばダニ媒介性の病気)を拾って来ないためにも管理は必要と思います。

エキノコックスが関東地方に上陸」のニュースはこちらのサイトでも取り上げられていますが、野生動物の調査によれば、まだ本州に定着したという証拠はありません。しかし、エキノコックス症について知識の少ない本州の方が犬と一緒に北海道へ来て、自然の中で楽しく遊ばせ、エキノコックスを一緒に連れて帰り、さらにその犬を本州の地元でも遊ばせて、エキノコックス虫卵がばら撒かれる、という事が何度もあれば、その土地への定着が起こらないとも限りません。

なお、あるサイトでは「感染犬は安楽死しかない」と書かれていましたが誤解です。
エキノコックス成虫は条虫駆除薬で確実に駆虫できますので、排便された糞の殺卵処理をちゃんと行なえば大丈夫です。また、虫卵検査よりも高感度・高精度のELISA検査法も行なわれています。

これらの事を含め、エキノコックス症については以下のWebサイトを参考にしてください。

Ext_link 北海道大学 獣医学研究科 寄生虫学教室
Ext_link エキノコックス・リンク集
Ext_link 北海道庁「エキノコックス症の知識と予防」
Ext_link 厚生労働省検疫所「動物由来感染症を知っていますか?」

(2003/08/13)(北海道、T.Iさん) (LIVING WITH DOGS コミュニティー投稿から)

サブコンテンツ

カテゴリー

このページの先頭へ