ちょっと良い話「全盲のトイプー・ボス君」
ちょっと良い話「全盲のトイプー・ボス君」
問題犬だった犬が心を開き、全盲になった今、幸せに暮らしているという素敵な話が読売新聞にありました。
犬は飼い主の育て方と愛情で良い子になりますが、ちょっと間違った育て方をしても、時間をかけて愛情を注げば必ず良い子になるという実話です。(2008/12/10)(LIVING WITH DOGS)
全盲犬街の人気者 城東のトイプードル「ボス」
大阪市城東区の事務員、Tさん(28)の愛犬・トイプードルの「ボス」(11歳、オス)。全盲だが、ハンデをよそに弾むように歩く姿が、見る人を元気づけている。最初に飼われた先では愛情を十分に注いでもらえず、5年前に病気で失明。人を怖がり、ほえてかみ付く“迷惑犬”だったが、新たな飼い主のもとで心を開き、人懐っこくなり、周囲から〈幸せを運ぶ犬〉と人気者だ。
純白で綿のような毛並みが特徴。散歩の時はリードで一定の距離を保って歩き、走り、角を曲がる。田中さん方に来る前は、1人暮らしの女性が飼い主。かみ癖が直らぬまま成犬になり、6歳ごろから視力が弱っていった。言うことを聞かず、飼い主がたたくと余計に歯向かった。無駄ぼえするボスは、近所でも有名だった。
2005年秋、その女性が病に倒れて入院。引き取り手がなく、Tさんが知って連れ帰った。警戒心が強く手を焼いたが、「これまでは鎖でつながれ、留守番ばかりだった。さみしさを埋めるぐらい愛情を注げば、心を開いてくれる」と粘り強く接し、「いい子やね」と言葉をかけ続けると、1年後には、誰にでも懐くようになったという。
近所の人気者になったのは昨年12月。散歩中、急に走り出すボスについて行くと、道端で高齢女性が転倒して頭にけがをしていた。ボスは女性が起き上がるまで、顔や手をなめ続けた。「ボスは幸せな気持ちにさせてくれる」。見ていた人たちは、そう口をそろえた。
散歩をさせていると、あちこちから「ボス!」と声がかかる。人だかりや祭りばやしなど、にぎやかな場所が好きで、子どもたちに囲まれてもうれしそう。近所のUさん(57)は「目が見えなくても元気なボスに会うと、心が弾む」と喜び、家業手伝いのFさん(44)は「警戒心が解けて『人好き』になったボスは、以前とは大違い」と話す。
ほかにも処分寸前の動物を引き取り、看取(みと)ってきたTさんは「ボスは家族同然。失明という不運や、不遇な時期を忘れさせるぐらい幸せにしてあげたい」と思っている。(2008/12/8日)(読売新聞記事より)