動物孤児院 (1)ドイツの犬はラッキー

(1) ドイツの犬はラッキー

ドイツの犬はラッキーです。大都会でも緑の散歩道がどこにでもあるから?
広々とした野原で思いっきり駆けられるから? 森の散歩が楽しいから?

いえいえ、そんなことではない。それも確かに、ラッキーだと主張する理由ではありますが、もっと基本の基本のこと・・・。生命に関すること・・・。
ドイツでは「殺処分がない」のです。

つまり、運悪く、無責任な人間に飼われ、「大きくなったから世話できない」、「時間がない」、「飽きた」などの理由で見捨てられた犬たちが行く安全な場所がある、ということです。
ドイツ語で、「ティア・ハイム」。ティアとは動物、ハイムはホームのことです。動物であれば何でもOK。ドイツに野良猫がいないのは、孤児院があるからです。もちろん、野良犬も皆無です。うろついている犬がいたら、警察官か、だれかが動物孤児院に連れて行きます。ホームレス志向ワンコ族にとっては迷惑な話かもしれませんが。
「動物孤児院」というくらいですから、犬猫のほかに、鳥、愛玩用の豚、馬、ヤギ、うさぎ、モルモット、ネズミ…と、まるで動物園です。こういう動物を食べる国の人が見たら、「???」でしょう。
ドイツ中に「動物孤児院」は散らばっていますが、市の経営する施設には常勤の獣医もいます。個人経営の施設は小規模で、維持費は寄付金が頼りですが、何とかやっていくようです。動物保護という福祉であるわけですから、税金もかかりませんし。

里親が見つかるまでの期間、動物たちを安全に保護しておくのが「動物孤児院」の役割です。1、2頭ずつオリに入れられてはいますが、広さという点では十分です。個人の施設では、庭や家の中で「みんな一緒」のケースが多いようです。
散歩は施設の世話係か、ボランティアの人たちがします。事故の責任問題を恐れて、ボランティアの人にはタッチさせないところもあります。老若男女の散歩志願者たちが毎日決まった時間に集まり、みんなで散歩に繰り出すというシステムをとっているオープンなところもあって、犬も人間も楽しそうです。
かみつく犬はそこで教育のやり直し。人間への信頼を失った犬も、すぐには世間に出せません。矯正困難の「問題児」の場合は、「問題児だけど、忍耐と愛で受け入れてくれるファミリー募集」ということになります。ドイツ人のすごさはそのへんかもしれません。「困難であるから、引き受けよう」精神があるのです!

病気の犬はまず治療です。糖尿病や、心臓病で、以後お金がかかることがわかっている場合は、「経済的に余裕がある里親」を探さないとなりません。ガンで、余命一年というロットワイラーもいましたが、すばらしいファミリーに引き取られたとのことです。
ためいきが・・・出ませんか?
ドイツに生まれた犬はゼッタイ、ラッキーです。

「ドイツ人は人間よりも犬のほうをだいじにするんじゃないか」と言う人さえいるくらいです。ドイツ人は、人間も犬もだいじにする、ということだと思いますけど。

ドイツに暮らすと、「ドイツなんか大嫌い!」と憤慨する瞬間も時々あります。サービス精神はゼロに近いし、人間対人間は日本と違って、よそよそしく、決してフレンドリーとは言えません。しかし、あらゆる動物の生命を尊重する態度には敬服させられます。
動物保護先進国、ドイツ。これから少しずつ、ドイツの動物保護のもようをご紹介したいと思います。どうぞ、よろしく。アオフ・ヴィーダーゼーン!
マロニエの大木が金色に輝くドイツから。 

(2002/10/04) 

(小野千穂)

サブコンテンツ

カテゴリー

このページの先頭へ