フォスターファミリー体験記 – Daphne(3)

Daphne(3)

Daphneの食欲は手術後24時間経ってもどってきました。でもまだほとんど寝て過ごしています。犬用のソファでNoahによりかかって寝るようになりました。(金)夜遅くになってシアトルに住む妹が彼女の犬Kiyoを連れてやってきました。

うちのNoahはKiyoが苦手です。78ポンドと体が大きいうえに、落ち着かずにいつもうろうろしているのでNoahは気が休まりません。何度か2匹が顔を合わせてしまい、NoahがKiyoに噛み付かんばかりにかかっていきましたが、幸いKiyoがやさしい性格なので喧嘩にはなりませんでした。でもそれを傍で見ていたDaphneは以来Kiyoを避けるようになってしまいました。Daphneはうちに来てからわずか5日の間にうちの3匹のほかに、近所に住む黒柴のりんごちゃん、そしてこのKiyoとも出会うことになりました。どの犬にもまだ遊びを誘うようなことはなく、ただ問題なくかわしているというところですが。少しずつですがおもちゃや骨などに興味を示すようになってきたのは大きな進歩です。

私にはますますべったりになり、料理をしていても片付け物をしていても、視線を感じて振り返るとDaphneが必ず私を見つめています。最近では娘や主人から逃げることもなくなりました。もうちょっとの辛抱です。よくここまで来たとDaphneがいとおしくてなりません。

さて(土)の朝Pascoのことでまた一件、メールが入ってきました。Pascoに会ってみたいので家族全員で今日Petcoの里親募集会に行ってみる予定なのだが、そのときにPascoに会えるだろうかという内容でした。電話番号も書いてあったのでこのJeffという人に早速電話をしてみたところ、すでにPetcoに向かっているとのこと。私はPascoは先週の(土)にすでに新しい家族に引き取られて幸せに暮していること、今私の手元にはDaphneという8ヶ月くらいのメスのボーダーコリーMixがいるけれど非常に臆病なのでアダプションに出すにはもう少し時間がかかること、そしてもう一匹Mandyという名のフレンドリーなメスの中型犬がいることを伝え、もしPetcoで気に入った犬が見つからずにこの2匹に会ってみたい場合には再度電話をしてもらうように頼みました。Jeffは自分の家族構成と昨年14歳で虹の橋を渡った愛犬のことを話してくれました。電話での感じではとても信頼のおける人のような印象を受け、この人ならDaphneに会わせてみてもいいかなと思いました。
さて30分ほどしてJeffから再度電話があり、やはりDaphneとMandyに会ってみたいというので、たまたま来ていた妹と一緒にMandyのフォスターファミリーをたずねMandyを借り出し、2匹を連れてPetcoへと急ぎました。

Jeffと奥さんのEden、そして12歳の娘Noraと10歳の息子Wyattが私たちを出迎えてくれました。彼らにはもう一人18歳の娘さんがいて彼女はBostonの大学にいっているそうです。Daphneを見るなりNoraは大ファンになり、Wyattはどうやら活発なMandyが気に入った様子です。店内の少し人通りの少ない場所に移動して、私は怖気づいて私の膝の上にぴったりくっついているDaphneについてJeffとEdenにこれまでのいきさつを話しました。そうしている間にもJeffはDaphneの身体をやさしく撫で続けてくれています。そして「この仔には時間をかけて自信をつけさせてあげる必要があるね。でもとってもいい仔だね」と言ってくれました。子供たちは人懐っこいMandyを連れて店内を散歩して回っています。NoraがDaphneも散歩に連れ出したいというので私が少し一緒に歩き、途中からNoraにリードを預けてJeffとEdenと妹のところに戻って話を続けていました。するとドーンと大きな音がしてびっくりして振り返るとなんとDaphneが全速力で私のところに逃げ込んでくるではありませんか。私は背を向けていて見えなかったのですが、妹とJeffの話では大きな男性がDaphneを撫でようと身体をかがめたところ、Daphneはパニックに陥り、まるで飛ぶように逃げ去った途中で陳列棚のドッグフードの袋にぶつかって落としてしまったとのこと。とにかくDaphneを落ち着かせようと私は彼女を抱きしめていました。恐怖から私のジーンズに少し放尿してしまったようです。Jeffは「きっとこの仔も以前男性から暴力を振るわれたことがあるんだろう」と言いました。本当のところは誰にもわからないけれど、こんな場面をJeffとEdenが見てくれてよかったと思いました。Daphneのすべてを受け入れてくれる人にしか彼女を託すつもりはありませんから。

子供たちは相変わらすMandyと遊んでおり、大人たちはDaphneを囲んで話し込んでいます。そしてJeffはこんなに臆病で内気なDaphneをとっても気に入ってしまいました。自分ならきっとこの仔が安心して暮せる場所を提供してあげられると思ったのでしょう。彼は自宅で仕事をしているから、Daphneをほとんど一人ぼっちにすることはないそうです。JeffとEdenは、2匹ともアダプトすることも考えていると言ってくれました。私は彼らに「一晩ゆっくり考えて明日電話をしてください。どちらを選ぶか、または両方ともアダプトするかはあなた達次第ですから。」と言って、とりあえずその日は2匹を連れて帰りました。この一家がバレンタインデーに、新しい家族を探しにやってきたこと、そしてもしかしたらそれがDaphneになるかもしれないことで、心の中がほんわりと暖かくなりました。

翌(日)の朝、Edenから電話で彼らの決断が伝えられました。それはDaphneをアダプトしたいという、私にとっては本当に嬉しい知らせでした。この家族に対し私はもちろん、同行した私の妹もすっかり信頼を寄せていました。この人達になら難しいDaphneも任せられると思ったのです。2匹一緒ではなく、Daphneだけにしてくれたこともありがたいと思いました。Edenは電話でこう言いました。「DaphneにはTLC(Tender Loving Careやさしく愛情たっぷりに世話してあげること)が他の犬より少し沢山必要で、私達家族は彼女にそれをあげられると思うのでそう決めました。」と。

その日の午後2時にPetcoで再び待ち合わせ、Daphneは晴れてこの一家の家族として迎えられました。うちに来てからたったの一週間、しかもDaphneにとってはさぞかしめまぐるしい一週間でした。初めての家で、知らない家族が入れ替わりたちかわり、そして賑やかな沢山の犬達や猫に四六時中囲まれ、しかも避妊手術までされてしまったのですから。「でもねDaphne、これからはJeffとEdenのうちでゆっくり暮せるのよ。ママはあなたのためにこれ以上いいファミリーはいないと思う。本当におめでとう。いつまでも忘れないよ、Daphne。」

JeffもEdenも私に「Daphneをここまで人に慣れさせてくれて本当にありがとう。」と言ってくれました。昨日今日とDaphneが私にべったりなのを見ているので「Daphneがあなたにとってどんなにかわいい存在であるか分かっているから、いつでも顔を見に来てくださいね。だってあなたはDaphneのママだもの。」とも。私のほうこそDaphneのありのままを受け入れてくれたこの夫婦に心から感謝しています。本当はもう少しうちにいて欲しかったけれど、長くなればなるほど別れが辛くなるし、Daphneは一日でも早く彼女の本当に家族と過ごすべきだと自分に言い聞かせました。私はどうがんばってみても、一時だけのママにしかなれないのだから。。。

たまたま(月)は祝日で子供たちは学校がお休みです。今日と明日、DaphneはWyattやNoraときっと楽しく過ごして、うちを思い出して寂しがる暇もないことでしょう。さあ、これからがあなたの本当の犬生よ、よかったね、Daphne!

後記:DaphneはSophieという新しい名前をもらいJeffとEdenの家で2匹の猫と一緒に幸せに暮しています。NoraとWyattの二人の子供たちもSophieをとってもかわいがっており、散歩はもとよりドッグパークに行ったり、その帰りにはスターバックスでコーヒーを飲む間は足元で座らせて道行く人達に撫でてもらっているそうです。最近ではSophieは散歩も怖がらずに楽しんでいる様子で、彼女の顔が微笑んで見えるとJeffは言っています。あと数週間してSophieがすっかりJeff家の仔になったら、会いに行くつもりです。その時までママのこと覚えていてくれるかな?

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