動物孤児院 (10)大型犬は日本で流行してほしくない

(10) 大型犬は日本で流行してほしくない

今日では犬種の流行まで国境を越えています。ハスキーに始まり、レトリバーが現れ、ミニダックスやチワワ時代になった日本の犬事情…。ハスキーやレトリバーが殺処分のために動物管理センターへ持ち込まれる話はよく耳にして、そのたびに暗い気持ちになりました。

犬に流行などあってほしくないけれど、それが避けられない風潮であるならば、せめてもの、流行犬種は小型犬であってほしい、というのが私の切なる願いです。小型犬ならば屋内で飼うことになるし、それならば、人間との密接な接触も期待できて、犬と人間の絆も深くなる可能性が高い。ファミリーの一員になりやすく、外でほったらかしにされたり、ファミリーに忘れ去られることも、当然少ないだろう、と思うわけです。

欧米では、大きな犬を好んで飼う人が多く、近所でも、おばあさんが、熊のようなアキタ犬を連れて歩いているし、10代の女の子が子馬サイズのウルフハウンドを散歩させています。グレートデンも、ジャーマンシェパードもいます。むしろ、小型犬より見かける頻度では多いくらいです。「大きな犬でないと、飼っている気がしない」と言うドイツ人もよくいます。

隣町に、6階建ての低所得者用の市営団地があるのですが、夕方の犬散歩時間帯になると、「どこにこんなたくさんの犬が隠れていたの?」と思うくらい、大勢の犬が、ぞろぞろぞろぞろ外に出て来ます。しかも多くが中型以上の犬で、ジャーマンシェパードの雑種をはじめ、ドイツらしく、ドーベルマンや、ロットワイラーもいるのです。ドイツは国全体が緑に包まれていて、街なかであろうと、大きな樹木が茂っているし、公団などがある郊外は目の前に畑や野原、森があり、散歩する場所に困るというところはあまりありません。住宅地と、商業地、工場地帯は、はっきり区別されています。この環境の違いが、大きな犬を飼うことのできる条件に左右するのは当然でしょう。

住宅事情も違います。日本の家は、大きな犬を飼うようにできていない。畳があって、目の位置が低い生活です。やはり、グレートデンや、ウルフハウンドが、座っている人を見下ろすような住の環境では、大型犬を屋内で飼うのに無理が生じることが多いでしょう。

だからこそ、日本で大型犬が流行したりすると、一体どうなるだろうと心配しています。日本でも、大きな犬は頼りになる、護身犬になる、存在感があって楽しい、そして、有名ブランドのバッグを持つような気持ちで大型犬を飼ってみたい、と思う人間が出現するのは明らかです。バッグならば飽きれば捨てられますが、犬もバッグのように捨てる人が出て来ることも、残念ながら、明らかです。

日本で次に流行るのは、何という犬種なんだろう…とっても複雑な思いで、日本のペット雑誌を眺める私です。

(2003/04/18) 

(小野千穂)

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