フォスターファミリー体験記 – Ali(3)

フォスターファミリー体験記 – Ali(3)

4時ごろ会社にいる私に娘から電話がありました。興奮した口調で「ママ、こんなにとんでもない犬は見たことないわ!」と言うのです。とっさに何か彼女の大事なものでも噛んでしまったのか!と思いましたが、実はもっと大問題でした。

彼女がアルバイトに出かけようと家の外に出て見ると、裏庭にいるはずのAliがなんと家の前にいるというのです。どうやらうちの6フィートもある塀をよじ登ったらしい。Aliはまだ私にしか心を許していないので、娘が「Ali家に入ろう」と呼んだら、隣の家の前庭に回り、そこからまた6フィートの塀をよじ登ってうちの裏庭に戻ったというのです。そしてこのままではまた道路に出てしまう恐れがあるので娘がどうにかしてAliを家の中に入れようとしたのですがいつもの洗濯室のドアからは入って来ない。それで仕方なくデッキからのガラス戸を開け放し、Aliが入ってから閉めて仕事に出かけたとのことでした。

折角トイレトレーニングもうまく行っており、Petfinderで Aliを見てとても気に入って是非会いたいと言ってくれる人もいるのに、6フィートの塀を越えて逃亡するような犬では安心してアダプションに出すことはできません。また頭痛の種が増えました。「そうか、もしかしたらそのせいで前の飼い主のところで繋がれていたのかもしれないな。」とも考えました。

前述のPatというAliに是非会いたいといっている人にこのことを正直に伝えました。すると彼女も翌朝メールで私にこう書いてきました。「実は私も昨日からAliが塀を越えたことを考えていたの。今うちの塀は4フィートしかなくて近々6フィートにする予定だけれど、今週末には間に合わないと思う。でもそれができるまで屋根付きのケネルをドギードアのすぐ外に作ろうと思っているの。そうすれば他の犬が遊びに来たときでも重宝すると思うし、それに最初の1-2週間は私がお昼休みに会社から帰って外へ出すか、友達が彼女の犬を連れて遊びに来てくれることになっているので、大丈夫だと思うわ。そうすればAliも一人ぼっちで寂しい思いをしなくてすむしね。とにかく(土)に会えるのを楽しみにしています。」と。

Aliを迎えるために、こんなにいろいろ考えて手配してくれるというPatに私は自分と同じ思いを感じました。(土)の朝はOregon Humane Societyの犬を散歩に連れ出すボランティアがあるけれど、誰かほかにAliをアダプトしたい人が現れても12時までにはPetcoに行けるから必ず待っていて欲しいと言われました。

翌日私はお昼休みに急いで帰宅し、Aliだけを裏庭に出しました。そして玄関から出て、庭の外からAliを呼んでみました。私には考えがあったのです。もしかしたらAliは庭の一角にゲートで仕切られている畑の中に入り、そこにあるコンポスト(植物性たい肥箱)の上に上ってから塀を越えたのではないかと思ったので試してみるつもりでした。案の定Aliはそのコンポストの場所から外へ出てきました。どうやって今度はうちの庭にまた戻るのかも試してみたかったのですが、私一人ではAliを外に残して庭から呼ぶわけにはいかず、それは実験できませんでした。でも隣の家の前庭はうちよりも幾分高くなっており塀の外側には二本の横木が渡してあるので、そこに足をかけて上ることは不可能ではないと思いました。

これで少しは気分が楽になりました。つまり庭の中にAliが上れるようなものを塀のすぐ脇に置かなければいいのだという結論に達したのです。これなら新しいうちに行っても大丈夫。前もってその旨警告しておけばいいのですから。Patには早速電話でこの実験のことを伝えました。

さて待ちに待った(土)がやってきました。この日はまた別の意味でも特別な日でした。うちにホームステイの日本人の女性がやってくることになっていたのです。朝10時に彼女は引っ越してきました。犬も猫も大好きという人だったので早速Aliにもトリートをあげてもらおうとしましたが、Aliは唸り声をあげて近づこうともしません。こんなAliは初めて見ました。これまでPetsMartでも散歩の途中で出会う人にも少し怖気づいてはいましたが唸ったりすることはありませんでした。我が家は彼女のテリトリーになってしまっていたことにそのとき気づきました。

「どうしよう。これからPetcoでPatという人に会わせるのにこんな風に唸ってしまったらきっとアダプトしてもらえないかもしれない。」と不安になりました。

ところがどうでしょう。Petcoでは初めて会ったPatとそのルームメートのJoyce、そしてPatの従姉妹の3人に対して、唸るどころかAliは頭や身体を撫でさせてくれたのです!従姉妹が数週間前にアダプトしたというLilyという名の犬を連れてきていました。このLilyともAliは仲良くできました。3人はAliのことをとっても気に入ってくれ、その場でアダプションが成立しました。PatとJoyceは昨年の11月とこの2月に12歳のグレイハウンドと15歳のミックス犬を続けて亡くしてしまったそうで、犬のいない生活の寂しさをつくづく味わっていたので、Aliを大喜びで迎えてくれました。AliとLilyを一緒のトレーニングクラスに入れることまで考えているそうです。そしてドッグパークにも、ハイキングにも連れていくという楽しいプランも立てています。

我が家ではAliは私になついてはいましたが、4匹の犬の世話に忙しく彼女を充分にかまってあげることができませんでした。それにAliはうちの3匹と遊びたくてもなかなか仲間に入っていけませんでした。これからはAli一匹に対してPatとルームメイトが沢山の愛情を注いでくれることでしょう。そしてLilyという遊び仲間にも恵まれて、きっとのびのびと暮していけると信じています。「こんな家庭がAliにはぴったりよ。Patのうちで自信をつけて素晴らしい家庭犬に成長するのよ。」

この二週間の苦労も、こんな日が迎えられたおかげで本当にやりがいがあったと思えるようになりました。

後記:Patから翌日の朝早速メールが入り、Aliはオシッコの粗相もなくいい仔でいること、PatもルームメートもAliが大好きで家族に迎えられて嬉しいこと、ここまでAliを大切に面倒みてくれて感謝していると言ってくれました。それに続いて何枚ものAliとLilyの写真も送られてきました。こんなにハッピーなAliの顔はうちでは見られませんでした。そうそう、名前はオクラホマのフットボールチームのSoonersにちなんでSoonerに変えたそうです。

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