動物孤児院 (58)ブリーダーを探して…

動物孤児院 (58)ブリーダーを探して…

「至急、ドイツでブリーダーの取材をしたいので探してくれませんか。犬種は問いません」と、日本のある雑誌記者から頼まれた。
ドイツのペットショップでは犬を売らない。だから、ある犬種がほしいとか、どうしても子犬でなければと思う人は直接ブリーダーとコンタクトをとるしかない。動物孤児院で新しい飼い主を待っているのは大部分が成犬で、それも中型か、大型か、超大型だ。可愛いさかりの子犬がいることはまず、ない。

それにしても、ドイツでブリーダーを探すなんて初めてだ。困ったなぁ…。
「ブリーダー知ってたら紹介して」と友人たちに言うと、
「ええーっ? なんで??」と驚かれた。私のまわりは、動物孤児院から引き取るのが当然だと思っている人たちばかりなので無理ない。現に彼らは、スペインやギリシャからドイツの斡旋グループに送られてきた犬や、地元の動物孤児院で引き取った犬を飼っている。
 知り合いのトレーナーにもメールを出した。しつけ教室を開いている女性で、犬世界に毎日どっぷり浸かっている人だから、ひとりぐらいはブリーダーの友人がいるだろうと期待したのだが、
「私は飼い主を失った犬しか引き取らないんです。知り合いにブリーダーはひとりもいません」と言われてしまった。

 そうだ、友人の友人で、娘さんが介助犬訓練士という人がいたっけ! 彼女の家には訓練中の若いゴールデン・レトリバーとラブラドル・レトリバーが常に5、6頭はいる。(犬たちはもちろん家の中で人間と一緒に暮らしている。)彼女は「ある特定のブリーダーからしか子犬を買わない」と言っていた。
だが、そのブリーダーがいるのは遠く離れたオーストリアのチロル、しかも山奥とわかって、がっかり。取材に来る記者は時間があまり取れないので、私が住んでいる地域内で見つけないとならないのだ。「中・大型犬のブリーダーって、土地が広い田舎に住んでいる人が多いのよ」と友人が言っていたが、本当みたいだ。

☆          ☆          ☆
インターネットで探したブリーダーのホームページを見て、数ヶ所に電話をしてみた。しかし、何と言って切り出そうか。いきなり「取材させてください」とは言いにくい。私たちは、知り合いからの紹介もなく、子犬を買うつもりもない人間である。それに、ブリーダーの中には「あら探しをされるのでは」、「悪徳繁殖屋と書かれるのではないか」と警戒する人もいるらしく、私たちはそうではなく、話を聞きたいだけなのだということを証明しなければならない。
 
「ロシアン・ブラック・テリアが大好きなんです。犬を見せていただけますか。あ、それから(と、さりげなく)、話を聞かせてほしいという日本人ジャーナリストが同行するのですが」
 電話の後、「ところでロシアン・ブラック・テリアってどんな犬なのかしら?」
「さあ…?」と、再びコンピュータでチェックという有様だ。
何ヶ所か電話をしたが、子犬が生まれていないか、(本当かどうかはわからないのだが)訪問したい日がブリーダーの都合の悪い日と重なって、なかなかアポイントメントがとれない。
☆          ☆          ☆
結局のところ、近所でダルメシアンを散歩させていた人が近所にダルメシアンのブリーダーがいることを教えてくれた。夫に電話をしてもらったら、そのブリーダーのおじさんは私のことを知っていると言う。私はそのおじさんを知らないのだが、私はこの村唯一の犬連れ日本人。村セレブなんだ、私は!
「ああ、あの足の短い犬を連れて歩いている、帽子をかぶったヤパーナリン(日本人女性)だね! いいよ、どうぞ」と言われた。「帽子をかぶった、足の短いヤパーナリン」と言われたような気がして、一瞬「えっ?」と思ったが、とにかく見つかって安心した。

(写真) ドイツでは雑種もお金を出して買う。この犬たちの飼い主は北ドイツまで行って買った。

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