動物孤児院 (16)犬を愛するって、どういうこと?

(16) 犬を愛するって、どういうこと?

犬は家につないで飼いましょう

日本でわりと親しくなった人たちと犬の話題になったとき、私が興ざめする瞬間というのは、犬大好き人間のはずの彼女(彼)が愛犬を外でつないだり、外で飼っていると知ったときです。「えっ?」と、私の笑顔が一瞬止まり、顔の筋肉がひきつることにお気づきでしょうか? 
郷里の知人の中には、ご丁寧にも、家の中でつないでいるという人や、犬を愛している、でもつないで飼っているという人が何人もいます。「どういうふうに説明したら、わかってくれるのだろうか」と、私はくよくよ悩むのです。
先日、ドイツで、動物孤児院からアンダーショットの灰色チワワを引き取った友人が交わした契約の中に、「家の中でつながない」というのがありました。つまり、家の中でつないで飼っていたら(外なら、警察が来ますぜ)、取り上げられる、「お前さんには犬飼う資格ないんだよ」と宣告されるわけですぜ)
ドイツ人のやりかたが正しくて、日本人のやりかたが間違っているというような偏見は私にはないのですが、動物愛護に関しては、私は日本のやりかたは変と思う。「愛するからこそ、つなぐのだよ」みたいな。

犬はつなぐと、どうなるか?
神経質になって、無駄吠えする。つないでいたのを放した途端、暴走する、かみつく、狂ったようになる。落ち着きがなくなる。これは私の体験です。子供やほかの犬を襲う犬は、例外なく、狭い檻に閉じ込められていたり、つながれていたりして、人間との接触があまりないか、自由を束縛されて、「ノイローゼ」になっていた犬なんですから、ほんとに。犬のせいではない。飼い方が悪くてそうなったわけです。だれだって、人間だって、犬だって、もしも一日の大部分の行動範囲が半径1〜2メートルだったら、狂いますよ! 私だって、もしそんなことされたら、他人にかみついたり、鎖が切れると同時に私自身切れると思う!
昔、日本ではつないで、玄関先のドアベルの代用にするのが普通でした。ヨーロッパでも、スペインやポルトガルやギリシャの田舎ではそうやって飼っているから、ドイツ人の顰蹙買います。お金出して、譲ってもらって、ドイツに連れて帰る人もいます。それくらい、「するべきことではないこと」になっているということです。
私の家には小さい犬しかいなかったし、部屋は全部、板の間の西洋館っぽい家だったため、犬が家の中で走り回っていたのです。これが、日本間だったら、私の両親の判断も違っていたかもしれません。犬にはラッキーな環境でした、今思うと。家の中で犬と暮らしている人はそうたくさん周囲にいませんでしたから。
しかし、それは、まだ日本が「後進国」(使用禁止語?)だったころ…のお話ですよね。今では、多くの人が、犬は最高のパートナーと認識して、家の中で、家族と共に暮らすことに違和感を感じなくなっています。日本も犬にとって居心地いい国になりつつわけです・・・よね?少なくとも、日本のきれいな犬専門の月刊誌を見ていると、日本ではみんな犬を愛して、家の中でファミリーの一員として暮らしているんだっていう印象を持ちます。
だから、私は威張って、ドイツ人の友人に日本の雑誌を見せたりするんですけどね。毎年100万頭近くの犬を殺処分にしている人たちばかりではない、ということをドイツ人にもわかってもらいたいという気持ちがありますからね…。そう。これを読んでいるあなたは、愛する犬をそんな目にあわせないこと、十分わかっています。だから、日本にも、捨てる人もいれば、飼い犬を一生面倒看るという人もいることを知らせておかないと、と思っています。

  犬をステータスシンボルにしましょう

  大型犬を連れて、お金持ちのふりしましょう

以前も話題にしましたが、私は「流行犬」とかが流行って日本中がある犬種に浮かれ始めると、はらはらします。避けて通れない風潮であるのなら、せめてもの、チワワや、ダックスフントのように、とにかく小型であってほしいと願います。小型なら、何とかなるじゃないですか? 飼い主が、「やっぱりニューヨークに留学することにしたの♪」「ボルゾイ飼ってみたあい、すてきぃ」と、現在飼っている犬を捨てるときも、小型犬ならば、ゴールデン・レトリーバーや、アフガンハウンドよりも、新しい飼い主を探しやすいでしょう。だから、日本で大型犬が流行る傾向が見えると、ゾッとするのです。「ああ、お願いですから、日本中の、犬で一儲けしようと企んでいる方々よ、大きな犬を流行らせないでください」と祈る気持ちです。
熊本の山奥に、アフガンハウンドが捨てられて、犬を愛する友人が何度も助け出そうとしましたが、人間を完全に見限ったその犬は逃げ続けました。友人は食べ物を毎週運びました。その犬は、冬が来る前に山で死んでいるのが見つかりました。私は、「死んでよかった」と思いました。それ以上、寒い辛い思いをしてほしくなかったし、今は天国を走り回っていると信じます。
動物管理センターに多数持ち込まれるゴールデン・レトリーバーの話も以前、ここでしました。お経を唱えに行った郷里のお坊さんが嘆いていました。「ショックでした。人間とは勝手なものです…」と、お坊さんはしんみり話していました。


(2003/08/30)
 

(小野千穂)

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