動物孤児院 (60)「虐待は許さない!」行動に出るドイツ人
「虐待は許さない!」行動に出るドイツ人
もう何年も前の話だが、友人(ドイツ人)は「貸し庭」地区を愛犬と散歩していて、見るからに世話をされてなさそうな毛玉だらけの小型犬と塀越しに目が合ってしまった。真相を見極めないと気がすまない性格の彼女は、友人を連れて何度も横を通り、その犬が日中、庭にほったらかしにされているようだと判断し、治安維持組織Ordnungsamtに連絡した。数日して、動物ホームのほうから「犬を保護した」と連絡があり、彼女の友人はその犬を引き取った。
ドイツでは各都市に、警察の仕事と似た任務を行う治安維持組織Ordnungsamtがある。そこの職員は制服を着ているが警官と異なり、拳銃は持っていない。彼らの仕事は、市民の苦情を聞いて、秩序を脅かす不安要素や問題を解決することである。
日本にはこのような組織がないので、近所の犬がベランダでほったらかしにされていても、飼い主が散歩に連れ出しているところを見たことがないとわかっていても、犬を救助することが難しい。飼い主から「余計なお世話だ」と一括されたらそれまでなのだ。
☆ ☆ ☆
隣町には犬を救う弁護士がいる。普通の弁護士なのだけれども、「かわいそうな犬がいる」という通報を受けると黙っていられない。犬が幸せになるために戦います、お金なんか要りません、犬を虐待から救うのは私の使命です!と言う人である。
この弁護士はこれまで「誤った飼い方」を何件も解決してきた。ドイツでは、「誤った飼い方」イコール「虐待」である。
小さな檻に閉じ込める、短い鎖で犬小屋につなぐ、散歩に連れ出さない、ベランダに何時間も出しておく…。そんなことをすれば、「虐待ではないか?」と近所の人たちの目が光り出す。
最近、この弁護士は治安維持組織と協力し合って、一頭のロットワイラーを無責任な飼い主から取り上げることに成功した。「飼い主は昼間ずっと家にいず、夜も散歩に連れてもらっていない」と、近所の人たちからの通報があったので、彼自身何度も確認に出向いた。
犬は動物ホームに収容された。外とのコンタクトを絶たれた状態で飼われていたため、すっかり獰猛になっているから、新しい飼い主を探す段階に至るまでかなりの時間をかけなければならない。人や他の犬に危険でなくなるまで訓練をするのだ。
「動物保護に関して、スイスを見習うべきだ」という声をドイツでよく聞く。(ドイツの動物保護は今のままでも十分すごいと感心する私なのに、スイスはもっとすごいらしい!)。スイスの動物弁護士は、「虐待かどうか」の調査を警察の援助のもとで実行する権限があるそうだ。