リタイヤ盲導犬デキスター
リタイヤ盲導犬デキスター
盲導犬をリタイヤした犬を我が家で預かってそろそろ2年になります。
デキスターは、日本盲導犬協会からお預かりしている盲導犬であり、ユーザーさんから託された、大切な盲導犬&最高のパートナーそして愛おしい息子です。
ウチの子でありますが、うちだけの子ではありません。オーストラリアのパピーウォーカーさんやオーストラリアの盲導犬協会のみなさん、日盲の訓練士さん、たくさんのボランティアさん達、そして、8年間を共にしてきたユーザーさんの子です。
最後のバトンを受け継いだのが私だというだけで、本当にみなさんの愛でつながれた尊い犬デキスターなのです。
1年に1回は、ユーザーさんがデキスターに会いにいらっしゃいます。私はこのときをとても楽しみにしています。
ご夫婦でユーザーさんなので、ご主人の盲導犬と奥様の盲導犬と我が家のワンズが揃います。
にぎやかにおしゃべりの花が咲き、とても素晴らしい時間が流れます。
「もうデキスターは、Hさんの子になったのね」とユーザーさんがおっしゃいました。
そう、デキスターは、ユーザーさんのところに座らず、私の側にくっついていました。
でも、ユーザーさんが最初に会いに来てくださったときの別れ際、デキスターは戸惑っていました。そして、いつまでもユーザーさんを乗せた車を道路の真ん中に立って見つめていました。ユーザーさんとの一線を引く、「別れ」のシーンでした。
ユーザーさんは、我が家は協会で一番の家庭だとおっしゃってくださいます。我が家の環境は、夫が医師であること、近所にはよい獣医さんが多く、医療の点でも安心できるからですが。デキスターの食餌もお散歩で行く海辺も、すべての環境が一番とお褒めをいただきました。
デキスターが我が家に来て、お散歩は近所の海辺の公園です。
この公園でたくさんの犬達と会うようになってから、とにかくお友達と会わないと寂しいようです。
そして、飼い主さんから、おやつを頂いたり、いい子してもらうのが楽しみになったようです。
今まで、デキスターは、ユーザーさんのところで、ご主人の盲導犬と共に暮らしてきました。おそらく犬同士で遊ぶということは、ほとんどなかったのでしょう。
鵠沼の海でたくさんの犬と会うのは、デキスターにとって、とても新鮮で、新しい発見であったことでしょう。
8年間、人と共にずっと密着して暮らしてきて、今、やっと犬らしい喜びを感じているのかもしれません。犬達と会ったところで遊ぶわけでもないのですが、「やぁ、元気かい?」なんて挨拶をするのが、とにかく楽しいのだと思います。
私はデキスターの愛のバトンリレーのアンカーとしての責任があります。だから精一杯のことをしてあげたいと思っています。でも、ふと思うのは、どんなにお気楽極楽生活でも、輝いて歩いたユーザーさんとの8年を越える幸せはないのかもしれません。
幼い弟バディ(GR)を我が家に迎え、バディが甘える様子を見て、デキスターも甘えることを知ったようです。
「やっぱりバディが来て、デキさんが変わったように思えるなぁ〜〜〜。」
「最初の頃は盲導犬としての緊張感があり。今は呼んでもこないとか・・・!!」
笑顔が増えて、「まっ、いいか!」が出てきて、「どうにかなる」みたいになってきました。
「デキさん!そうよ!甘えて良いのよ。」「デキさん!、ユーザーさんを守ってくれてありがとう。」
「今度は、私がデキさんを守る番だからね。だから、安心して暮らしてね」
盲導犬として頑張ってきてくれたお礼に、人間を代表して、デキスターに素敵な日々をプレゼントしたいと思います。(2009/9/12)(神奈川県 H.Mさん)