動物孤児院 (19)「井の中の蛙」的犬の飼い方
(19) 「井の中の蛙」的犬の飼い方
私の実家(九州)から最寄のスーパーマーケットに行く途中、いろんな犬を目にします…いや、私が言いたいのは、種類ではなくて、いろんな飼い方をされている犬という意味です。
まず、白い日本犬とパグがいる。事務所のような部屋の床下が彼らの住まいです。床下ですから天井は低く、出られないように鉄柵がしてあり、奥は当然真っ暗で、じめじめしています。いつも道路側を見ている2頭と目が合います。時々道路側の柵につながれていて、一度など朝11時ごろから夕方5時ごろまで、ほとんど身動きできないくらい短い鎖でそこにつなぎっぱなしでした。私は、飼い主が保健所に差し出すつもりなのかもしれないと思って、どきどきしていました。水もやってなかった。
その向かい側の家にも犬がいますが、姿を見たことはありません。道路から観察するかぎりでは、北側の日の当たらない狭い空間に、檻の一部が見えるので、そこに幽閉されているようです。(罪状は何でしょうか)
私が朝目覚まし時計がいらないのはこの犬の存在によります。なにしろ早朝まだ暗いうちから哀れな声が風に乗って聞こえてくるのです。300メートルも離れている実家まではっきり聞こえてくるのですから、さらに近くに住んでいる人たちはどうしているのでしょう。誰も文句を言わないのでしょうか。それとも、目覚まし時計が必要なくて助かると犬の飼い主に感謝しているのでしょうか。(スーパーマーケットが外に向けて放つ12時間に渡る、けたたましい宣伝と歌謡曲にも誰も文句を言わないところを見ると、周辺の人たちはどうやら全員耳が遠いか、耳栓をして過ごしているか、と思われます。)
マンションのベランダで寒さに震えているシーズー子犬もいます。このままでいけば、初めての夏、熱射病で天国に行っても不思議ではありません。夜は電気がつくこともあって、そういうときは犬も中に入れてもらっていますが、日中は人影がなく、犬はベランダの毛布の上でひたすら寝ています。外の世界を知らない彼(彼女?)は、空想上の散歩をするしか方法がありません。
ほんの数百メートル歩いただけで、私は落ち込む寸前です。「どうすれば、飼い主の意識を変えられるか」「飼い主の意識は何らかの方法で変えられるのか」を考えると、気が遠くなります。
散歩させてください。
水を与えてください。
暗い犬小屋に閉じ込めないでください。
犬の気持ちになってください。
こういうことを言って、果たして飼い主たちは、理解するのでしょうか。
もしこれらの飼い主たちが、犬の立場になったら…。
外に連れて行ってくれない。
喉がかわいても水がない。
暗くてじめじめしたところに閉じ込められる。
鎖につながれたまま。
これって、拷問ですよね。犬は拷問にあっていても、訴える術がないから、我々人間が理解してあげないとならない。そのことを飼い主たちに気づいてほしい。
私たちに必要なものは、勇気です。
私はドイツに住んでいて、ドイツ人の犬の飼い方をいつも目の当たりにしています。ドイツでは、日本のこのような飼い方は、ほとんど犯罪に近く、実際、このような飼い方をする人間は、飼う資格なしと判断されて、犬が保護されることもあります。なぜか?なぜ、日本では当然なことでも、ドイツでは罪悪なのか? 私は日本でたいそう悩みます。
つなぎっぱなしにしているお隣りさん、ベランダに出しっぱなしのAさん、散歩に行かないBさん、貰い手がないから保健所に連れて行こうと思っているCさん。いえいえ、私にはわかっています。これを読んでいるあなたはそんな人ではないことが。(そのような人はこのHPを読みませんもの!) でも、私たちは周囲の罪悪を見て見ぬふりをしています。
今日、勇気を持って、彼らと話すしかない。
あなたの飼い方は間違っています…、と。
(2004/02/17)
(小野千穂)