動物孤児院 (62)飼い主を緊急募集!
飼い主を緊急募集!
土曜日の朝、分厚い新聞が届くとまず第2面を開いて、「動物ホーム」の情報を見る。新しく飼い主を募集中の犬か猫(小鳥やウサギの場合もある)の顔拡大カラー写真付きである。新聞社が広いスペースを「動物ホーム」のために提供してくれるのだ。時には紙面一面に何匹も、ということもある。
先週の土曜日は、BENという名前のスタフォードシャー・テリアの顔写真がデーンと載った。ちょっと見たら相当恐い顔だ。私がカメラマンだったら、もう少し別の角度から撮るところだ。9歳だから、この犬種にしては高齢の部類で、巨大な顔には白いものも混じっているが、「ガハッ」と笑って開いた顎は……、いかにも頑丈そうである。「小さなお子さんのいる家庭でも安全。他に小動物がいても大丈夫」と書いてあっても、私に2歳の子供がいて、ウサギも同居していたら絶対びびるだろうなあ(ゴメンネBEN)。
「動物ホーム」の世話人が語る。「BENはいつも外をじっと見ていて、人が近寄ってくるたびに期待に目を輝かせて頭を上げるけれど、その人が通り過ぎると、悲しみ一杯の表情でまたうなだれるんです。動物ホームに全くなじめなくて、本当にかわいそうです。一日も早く新しいファミリーを探してあげたいのです」。と書いてあるのを読むと、胸が一杯になる。
BENの飼い主候補者は誰でもいいというわけではない。なにしろ闘犬種だから、条件付きである。「犬に関する知識テスト」の合格者でなければならないのだ。決して簡単ではなく、それなりに勉強しなければ合格できない。
たとえば、
「仔犬と呼ぶ際の定義は?」
「(尾を立て、背中の毛を逆立てた犬の絵があって)この犬はどんな心理状態にあるのか?」
「なぜ毎年の狂犬病予防接種が必要なのか?」
「犬を連れて散歩していたら馬(馬に乗った人)に出会った。あなたはそのとき犬をどうするべきか?」……
こういった問題が110あって、それぞれ答えは4つの中から選ぶのだが、落とし穴があって、正解は1つとは限らない。
「動物ホーム」にBENを連れてきた元の飼い主は、経済的に飼い続けることができなくなったのだそうだ。犬税も払っていなかった。
来週の土曜日、私はハラハラして新聞を開けるだろう。普通、新しい飼い主が見つかると、そのことが書いてある。まだ見つかっていない場合も書いてある。
冬が来る前に、BENにやさしいご主人様が見つかって、暖かい居間のソファーの上でその人の膝にあの大きな頭をのせて寝そべることができますように。そう祈らずにはいられない。