愛のしっぽ(vol.13) 大晦日の生ゴミ
大晦日の生ゴミ
年末はゴミの量がギュッと増える季節であると知っていたが、捨て犬の数も多くなるということは驚きだ。と言っても、命をゴミ扱いしている日本では珍しくない話だ。
ペットの捨て場として悪名高い荒川河川敷では、こうした命の生ゴミがごろごろしている。
河川敷に捨てられ、足立区梅田の商店街で目撃された柴犬の雑種、のちヒデキ、もこうした大晦日の生ゴミのひとりだった。
12月31日、保健所は休み。1月6日まで連絡がつかないから、ウロウロしている犬を捕まえてほしいという通報が梅田の交番に入った。お巡りは犬を捕獲し、自転車で西新井警察まで連行した。捕まった犬は骨と皮に痩せ細った老犬で、歩くことでさえ辛そうだった。なのに、お巡りはパトカーを手配せずに、この老犬を無理やりに自転車で引っ張っていた。誰が見ても心の痛む光景だった。しかし気になって振り向く人もいなければ、この連行の仕方がかわいそうだから注意をする人もいなかった。
さすが情もナサケもない日本現代社会だ。
この老犬を寒さの中で捨てた人はもちろん悪いが、邪魔だという理由で警察に通報した人もナサケナイ! 両方の人たちには、きっと、子どもがいる。命を大切にしましょうと子どもに教えながら、大人たちの行動は実に粗末なものだ。犬が邪魔になったから捨ててしまう飼い主、子どもが邪魔になったから、虐待したり殺したりする親。日本では、命の 大切さが本当に理解されているのだろうか? 疑問だね……。
捨てられ、不安に脅える一頭の哀れな犬を助けようという気持ちにならない人間が、いじめられ悩み苦しんでいる子どもを理解し、あたたかく見守れるはずがない。これじゃ日本の子どもたちが自殺に追い込まれていくことが分かるような気がする。
安倍総理よ、この芯まで冷え切った無関心な社会があなたの「美しい国」ですか?
◎ちなみに、大晦日に連行された柴犬のことを心配している読者の皆さん、ご安心ください。大晦日の夜、私は彼を西新井警察から助けだし、ヒデキという名前で我が家の一員になった。
動物愛護支援の会
(2007/01/20)(足立朝日連載記事より)