愛のしっぽ(vol.14) シンジラレナイ!

シンジラレナイ! 
 
場所は足立区関原。道脇のマンホールの中で猫が声を枯らしながら「助けてッ! 助けてッ!」と叫んでいた。偶然マンホールのそばで立ち話をしていたおばさんたちが猫の必死な叫びに気付いて、消防に通報した。連絡を受けた近くの消防署からレスキュー隊が出動し、たくさんの見物人が見守りながら、深いマンホールから1匹の可愛い茶トラの子猫が救い出された。

なに!? どこでもありそうな話だから、記事にするほどの価値がない?慌てるなよ、問題のオチはこれからだ。
レスキュー隊員がヘドロだらけの子猫を大切に抱き上げ、通報した人に「怪我はなさそうだし、下水に流されなくてよかったですね!」と言いながら子猫を渡そうとしたとき、「私に? 違いますわ、この子はうちの猫ではありません。」と断られた。
レスキュー作業を見守っていた人たちの中にも猫の飼い主はいなかった。まさかこのままで道路に置き去りにはできないから、子猫をとりあえず署に連れて帰ることになった。

さあ、困った。猫を助けたけれど、飼い主はいない。ずっと署においてあげることは無理だということで、子猫を保護してもらうために、署長が自ら東京の動物愛護相談センターに電話を入れた。しかしその返事を聞いた瞬間、署長は自分の耳を疑っていた。

「はい、はい、わかりました。今日の午後にでも誰かを迎えに行かせますので、明日中に殺処分します。」
殺すッ?! 何のためにレスキューしたのか? そんなバカな!日本ハムのヒルマン監督の言葉を借りて「シンジラレナイ!」と叫びたくなる。 片方は必死に命を助ける、片方はその助かった命を容赦なく殺す。そして両方が行政の一部だ。日本には不思議な現象がたくさんあるが、命の尊厳をこれほど無視した矛盾は前代未聞。

昨年、話題になった四国の崖っぷち犬もそうだ。偶然、全国のテレビで取り上げられたから助かったものの、本来は現地で処分されている野良犬と同様に殺される運命だった。
非人道的な行政指導によって、日本の動物たちの生存権は常に脅かされている。背筋が寒くなるような日本行政の考え方、シンジラレナイ!

◎子猫は優しい家族にもらわれ、今は立派な茶トラ猫に成長した。名前は森田マメ。
 
 (2007/02/20)(足立朝日連載記事より)

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