動物孤児院 (21)犬を買おうと思っているあなたに

(21) 犬を買おうと思っているあなたに

ペット雑誌を開くと、抱きしめたくなるようなワンコが勢ぞろい。ああ、こんな瞳で見つめられたらどうしよう?
子犬の温もり、あの感触、すべすべのおなかをなでなでしたい。
大きい犬もいいなあ。ボルゾイの優雅さ。人が振り返るだろうなあ。ロットワイラー連れて歩いたら、みんな道をあけてくれるだろうな。私の犬より強い犬はこの地上に存在しないんだもの。

私も昔、ペットショップのショーウインドーで、クークー言って動き回る子犬なら何時間でも見ていることができました。ほしい、買いたい、抱っこしたい、と思いながら。
犬猫の生体販売は、犬猫にストレスがかかるという理由で、止めてしまったドイツではショーウインドーで見ることができるのはネズミ、ウサギ、小鳥の類だけ。それで、私はペットショップに行くと、ひたすらネズミを観察しています! (ほしい、買いたい、と思いながら)

ここに単純な疑問があります。 
人はなぜ、お金を出して血統書付きの犬を買うのでしょう?
「その犬種が好きだから」なんでしょうね。でも…どの程度好きなんでしょうか?
買った犬を一生面倒見る覚悟があるくらい好きなのでしょうか?それならいいんだけど!

ある犬種が気に入ってお金を出して買う、ということが悪いと思うのではありません。それは個人の自由です。ただ、そうする前にじっくり考えてほしい。

本当に血統書付きでないとだめ?

3日後に殺される運命の犬ではだめ?

里親の出現を、冷たいコンクリートの中で、ときには水も餌ももらえずに、死の恐怖に迫られつつ、待っているかもしれない犬ではだめ?

そう…それでもあなたは血統書付きの犬が買いたい。お金もそのために貯めたことだし。名前も考えてある。わかりました。それではどうぞ。

でも。
これだけは忘れないで。

その犬を一生飼ってほしい。エルメスのバッグならば、みんなにショーオフしたあと、「もういらないわ」ということになっても、譲ってほしい人を探すのには困りませんね。しかし。
あなたがいらなくなったゴールデンレトリバーを「お願い、譲って」と頼む人はいないことを忘れないで。捨てられたゴールデンレトリバーを救って、(仕方なく)飼っている人を数人知っています。その人たちのところには、ほかにも捨てられた、高齢のハスキーや、レトリバーがいて、自分たちが見放したら殺処分ということを知っているので、少ない収入から餌代をやりくりして、疲れた体に鞭打って、何頭もの犬を散歩させるわけ。
「処分お願いします」と言って、ゴールデンレトレバーを動物管理センターという処刑場に連れてくる人が後を立たないことご存知かな? (実家に来るお坊さんが証言者です。動物管理センターにお経を唱えに行って、ショックを受けていました! 飼い主に連れて来られたゴールデンレトリバーが何頭も、殺処分のためにおりに入れられていたのです。このことは前に書きましたが)

自分自身に聞いてください。
本当に、神様に誓って、これから買う犬の一生を責任もって飼う?
死があなたと犬を離れ離れにするまで、あなたがたは一緒にいる? (実際は、愛は死を超越するので、肉体は滅びても犬の魂は天国であなたと再会するのですけど)

本当に犬がほしいのか、ステータスがほしいのか、考えることはたいせつと思います。
もし、何が何でもステータスのために血統書付きの犬がほしいのであれば、その犬に飽きた後、新しいのファミリーを探す努力をすると神様に約束してください。
犬を飼うことは…、その犬が天に召される日まで、命を預かるということなのです。

(2004/03/26)
 

(小野千穂)

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