動物孤児院 (22)わんわん夢物語

(22) わんわん夢物語

孤児院出身の犬を散歩させながら、私はいつも、どうしたら日本からかわいそうな犬たちを救うことができるのだろう? と考えています。
ここドイツで成功しているやりかたは日本では通じるのだろうか?
どこから始めたらいいのだろう?
去勢避妊の重要性をどういうふうに人を説得したらいいのか?
どうしたら人が犬を捨てなくなるか?
捨てられた犬をどこで保護したらいいか?
流行している犬種の子犬をどんどん増やしてお金儲けする人をなくすにはどうしたらいいか?
殺処分を日本からなくすにはどうしたら?

夢物語ですか?…。しかし、ここドイツでも犬を捨てる馬鹿はいますが殺される犬はいません。
ドイツの実情を知って下さい。

犬の(猫もうさぎもフェレットも)去勢避妊は常識。
仮に捨てられても何日も放浪することはありえない。だれかが通報したり保護して、動物孤児院に収容される。
殺処分は、ない。(日本では殺すのよ、とドイツ人に言うと、みんな仰天する。)
ある犬種がほしいときは、ブリーダーから直接買う。したがって、待ち時間は長いし、衝動買いがない。じっくり検討する時間があるってことは大切と思いますよ。
動物孤児院から引き取る人が多い。ちなみに私の周囲を見渡すと、動物孤児院から引き取ったという人がゴロゴロいます!
動物を残酷に飼うことは、モラルに反する。モラルに反すると、ドイツでは針のむしろに座っているのと同じですからね。どういうことかというと、鎖でつないで飼ったり、狭い檻に入れて飼ったりすると、周囲が黙ってないってことです。通報されて行政関係の人がチェックに来ます。

以下は私の夢物語…です。

西暦20XX年 日本はこうなりました。

「増やすな」

避妊手術を常識。費用は無料!
犬は全部登録制で毎月5000円の犬税を払わなければならない。1頭では5000円、2頭では13000円。そうです。毎月です。ただし、去勢避妊した犬は犬税免除。(2004年のドイツでは犬税が毎月2000円かかります。多頭飼いほど割高になっていきます。2頭目が安くなるのではなく高くなるわけです。ただし、動物孤児院から犬を引き取った場合は1年間免税です。)

「捨てるな」

ブリーダーは、生まれた子犬をどこに売ったか、把握しておかねばならないというルールがあります。増やして売ってイージーなお金を儲けることができる、というシステムは崩壊しました。ブリーダーは許可制です。厳しい検査と資格試験があります。行政の動物保護係りが抜き打ち検査をして、管理します。犬を飼った人がその犬を飼えなくなった時に、ブリーダーはその犬を責任持って引き取らなければならないのです。

捨てる=犯罪です。どうしても飼えない事情が出現したら、動物孤児院に相談するシステムです。いずれにせよ、動物孤児院で、最終的にノーということはないわけで、たまたま最寄のところが一杯の場合は、臨時の里親システムも存在します。山に捨てたり、高速道路に捨てるのは明らかに犯罪として扱われます。

「殺すな」

あまりにも基本の基本で、ここでわざわざ書くのもあほらしいくらいです。常識以前のコトですから。「もう要らない」=「殺処分」…恐ろしいかぎりです。動物管理センターは、今では、動物孤児院になりました。ガス室は当然撤去され、ドッグランになっています。新しいファミリーが見つかるまで、犬たちはそこで走りまわることができます。時にはフリマも開催されるのでした… ウン十年前まで、そこで犬たちが恐怖に慄いて、死んでいったことを知る人はもうあまりいません。殺処分という言葉は、もう死語になりました。

END

PS
これを読んでくださっているかたは、心から犬を愛していらっしゃるかただと思います。本当は、何も考えていない人たちに知ってほしいことなんですよね、こういうことって。
それと、政治家のオジサンたちに知ってほしい! 彼らの飲み食いの1%を、全国の犬の去勢避妊手術にまわしてくれたら! 日本の政治家のオジサンたちって、忙しすぎて、犬とぶらぶら外を歩く時間なんかないのではないでしょうか? 一人ウン十万円の超高級料亭に行くお金と時間はあるようだけど。

私たちができること? はい。今できることがあります。
このことを話題にするのです!

私たちのささやかな力を信じましょうよ。みんなで、葦がザワザワと水辺でささやき合うように、私たちも、ささやきましょうよ! 「犬の去勢避妊は常識よ。増やさないことが一番よ。そうしたら、いつか日本にも動物孤児院がたくさんできて、運営することが可能になるから。殺処分なんて遠い、恐ろしい過去の話よ」ってことになる日がいつか来るでしょうから。

(2004/05/07)
 

(小野千穂)

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