愛のしっぽ(vol19) 捨て場は動物病院

捨て場は動物病院  
 
「命の尊さ」良く聞く言葉。でもそれは社会上のきれい事にすぎない。現実は恐ろしく違う。残念ながら、日本には命を粗末にする人が大勢いる。保健所に持ち込まれてくるペットの対応に追われている職員の話を聞いて見ると、開いた口がふさがらないようなエピソードが山ほどある。
子ども連れのお父さんが、処分してもらうために飼い犬を持ち込んできた。理由を尋ねてみると、「流行ではなくなったので、子どもが飽きてしまった」と淡々と説明する親。考え直すように説得しようと思った職員も、呆れて返す言葉を失っていた。
しかし保健所で殺処分される犬猫の数倍の数が町の公園、河川敷、浜辺、別荘地、高速道路のサービスエリアなどで放置される日本。驚くことに、動物病院も捨て場の人気スポットのひとつ! 当然のこと、病院にとっては大変な迷惑だ。
命を救うため、一生懸命に勉強した人間が、マサカ、この哀れな命を殺したり、保健所に突き出したりできるはずがない。
ほとんどの獣医は、やむを得ず、病院に捨てられた動物たちの健康診断をしてから里親募集を行っている。日本の動物病院にとって、捨て犬や捨て猫の現実が大きな悩みの種。
獣医になったオーストリアの同級生にこの話をしたとき、疑わしそうな目つきで「俺をからかってんの?」と笑われた。何らかの理由で飼えなくなったペットの相談はたまにはあるが、病院の玄関先に犬や猫が置き去りにされたことは一度もないそうだ。
 しかし日本の獣医の多くは、今日も捨て猫や捨て犬がいないようにと祈りながら、診療所に向かうそうだ。病院の前に設置されているゴミ箱に生きている子猫2匹が投げ込まれたという話もあるし、写真のシェルテイーが動物病院の駐車場に置き去りにされた、などなど。ある病院の入り口に、こんな張り紙があった。
「猫を捨てると、あなたの来世まで祟るぞう! 地獄に落ちろッ!」。これを書いた院長先生の気持ちは良くわかる。たまらないよね、玄関の前に子猫いっぱいの段ボール箱があったら。それも一度や二度のことではない。
 
◎シェルテイーのジョンは、動物病院で働いていた看護婦の家族に、温かく迎えられた。


動物病院駐車場に
捨てられたジョン

Ext_link動物愛護支援の会

(2007/07/20)(足立朝日 連載記事より)

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